三十九話
帰り道からはずれ、工事現場がある場所とは真反対の一真の家へと赴く。いつもより頭上に注意を払うのは仕方がない。空は快晴で、人通りもかなり多い。通学バックには彼の分のプリントも入っている。
「大丈夫かな」
風邪ならそんな重症化することはないだろうが。
角を曲がった途端、木枯らしが真樹の体を通り過ぎた。遅れてブルリと反射的に震えた。
「もうこんな季節か」
独り言をつぶやきながら、真樹は一真の家へ急いだ。
彼の家は印象に残りにくい一軒家だった。小奇麗な白を主としたデザインの、二階建て。二階の端に位置する一真の部屋の窓には、カーテンで外と仕切られている。寝ているのだろうか。
小さな庭に入り、ポストに貼り付けられたインターホンを鳴らす。ピンポーンとひときわ高い音がした。
数秒ほどして、はい、という女性の声がした。一真の母親だ。
「えっと、こんにちは! 西条真樹です。今日のプリントを届けに来ました!」
「ああ、真樹ちゃん! どうぞ上がって上がって!」
明快な声とともに、玄関の扉が開放された。
家に入ると、ヒノキの匂いがふわりと真樹の鼻孔を刺激した。いい匂いだ。
「一真~! 真樹ちゃんが来てくれたわよ!」
おばさんが声を張り上げると、二階からわかった~と返ってきた。意外と声の芯はしっかりしていた。やっぱり心配するまでじゃなかった。
「ごめんね、うちの一真が」
「いえ。突然おじゃましてすみません」
ぺこりと頭を下げてから、真樹は早速おばさんから一真の自室へと通された。




