三十話
レストランの一角。
「落ち着いたか?」
ミルクティーと軽食を出してくれた男性が、心配そうに聞く。
「はい。すみません、見苦しいものをお見せして……」
その後真樹は失禁していることに気付いた。結局名も知らぬ男性にショッピングモールへ行かせ、こうして付き添われている。ここまでくれば恐怖は吹き飛んで、申し訳なさで一杯だった。
「普通の反応だよ。でもよかった。少し遅れていたら大変だったからね」
安心感を与えるような、やわらかい笑顔に、真樹もつられて微笑んだ。
「君の制服、ひょっとして赤門――東山高校の生徒さんかい?」
不意に男性が質問した。そういえば、助けてもらったのに名乗ってもいない。
「はい。東山高校に在籍してます、西条真樹です」
名乗った時、ハッと男性の表情がわずかな動揺を浮かべたのを、真樹は見逃さなかった。
「そうか。西条さん、ね」
「あの、何か……?」
「いや、なんでもない」
でもこの反応はいささか普通ではない気がしたのだが。居心地の悪い間が空いた。
「あの、差し出がましいことを質問してよろしいかな、西条さん」
話し手は男性だった。どこか躊躇する物言いに、真樹は少し緊張してしまう。
「質問、ですか。私に答えられる範囲なら」
「ありがとう。じゃあ、単刀直入に聞くけど……君は、一年四組の呪いを知っているかな」




