迎撃戦 : 駆けつける冒険者達
が、頑張った!普段の倍を書いた!文章力?知らない子ですね。(・・;)
数日前ーー
ここはとある貴族の住まいである館。しかし、離れていてもどんよりとした空気が感じ取れるほどそこは死んでいた。
時節庭を手入れする使用人の顔もまるで土気色に近いくらいに落胆しているのがわかる。
同じくメイドもこの目を赤く腫らしており時々思い出すのかうずくまって泣き出すほどだった。
何があったのかーー
それはこの館の主にしてクワイエット公爵アーノルドが原因だった。
かつてこの国に軍事を貢献した男は見る影もなくやつれ書類など通さず空になった酒瓶が大量に転がっている。
ただたった一人の愛しい義娘を失った。それだけでアーノルドはこの世に絶望し自棄酒にふけっているのである。
愛する妻との間には運悪く子はできず託されたとはいえ家族である義娘を何も出来ず失った。その悲しみは友人のアイアノスや主君であるアウグスト陛下やジェノム殿下も同じだった。
特にジェノム殿下はそれが顕著だった。
あの日の賊の襲撃。
被害を使いから聞いたが少なくない貴族とその子息が亡くなっていたらしい。自分を含めて重臣達は真っ先に避難されたがーー
賊の目的はジェノム殿下だった。迫りくる凶刃それを義娘のエストレアが庇ったとアウグスト陛下がおっしゃっていた。
ーーー自分のせいで
その罪悪感に押し潰れそうだと陛下は落ち込む私に共感するように嘆いていた。
何が悪かったのか。それは誰にもわからない。
ただ分かるのはーー
大切な家族を、失ってもう戻ってこないということだ。
友人のアイアノスはたまに顔を出して励ましてくれる。だが脳裏に義娘の影がちらつくたび絶望と不甲斐なさが押し寄せてきて結局何もする気が起きないのだ。
それは愛する妻であるソフィアも同じようで既に何件かの婦人方のお茶会の参加を断っていた。貴族の数少ない純粋な交流である茶会に絶望しきった顔で出ようものなら品格が問われるというものだろう。
貴族たるもの、優雅たれ。
しかしその影はどこにもない。それはアーノルドだけではなく他の貴族も同じだった。
国の将来を担う子供たち。
その中で跡継ぎを失ったものはあの誕生会の襲撃で全体の三割である。多くはないが無視できるものでもない。ましてやこの、シェートリンド王国の貴族の殆どは政治なんかよりも家族を愛することを尊ぶ。
他の国のように謀略などは好まれない。しかし、それでは外交的に嘗められたり最悪乗っ取られる事もあり得る。
特に隣の帝国とか。
最近常に報告に上がる国だ。国境付近の砦では帝国による挑発行為が多数寄せられている。
しかし、今現在この国はほとんど機能していない。現にこのアーノルドがそれを証明しているからだ。親愛を尊ぶこの国において先の事件は多大な傷を残すのに十分だった。
数年後に この国に帝国が宣戦布告するのはまた別のお話。
ーー
ーーーメルキア砦
現在、ここは戦場だった。
あちこちに火の手が上がり、鎧を着込んだ兵士達が武器を携え戦場と持ち場を行き来している。
「怪我人をテントにつれてけ!グズグズするな、急げ!なに、担架が足りないだと!おい、誰かにおぶってもらえ!」
大群で押し寄せる魔物の群れは今の所抑えるのに全力を注いでいるため怪我人が出てもほとんど動けない。
「くそ、進行する時間が早すぎる!援軍はまだなのか!?」
「医療具が足りない!治癒が使える奴はいないか!?」
何より怪我人が時間が経過するごとに増えてくるのだ。メルキア砦の医療技術は王都の診療所と遜色ないくらいであった。しかし、重軽傷の差はあれど運ばれてくる怪我人のせいでさながらガ島の野戦治療のよう。
「ままぁーーー!ボクかえプギャア!!!「てめぇはそこどいてろ!」??」
そして大して覚悟もなく騎士団に入った貴族の三男などの子息などが軽傷であるにもかかわらず喚いたりするがすぐに叩き出されたりする。
メルキア砦は魔物の襲撃を1日早く受けていた。予想以上の早さで進行してきたことに驚いたがすぐさまメルキア砦に駐屯する騎士団は動き出した。
いずれ進行してくるであろう帝国軍に対抗するため一個大隊が存在する。
しかし、1日早いということもあるが、このメルキア砦を押し通らんと押し寄せる魔物の群れに騎士団の若い騎士たちがおじ気ついてしまい混乱してしまう。この状態ではいくら個人が優れていてもろくな指揮を取ることもできないだろう。現に何人かが重軽傷を負ってしまっている。
要は集の経験が未熟であったということ。最古参の騎士もいるにはいるが年の関係上全盛期の力は発揮できなかった。
「くそ、ギルドの連中は何をやってるんだ!このままじゃ押し破られる!」
「愚痴こぼす暇あるなら、前線出てけ!人足りねぇんだよ!」
「誰か来てくれ!扉が彼奴らの圧力でもう限界だ!」
「俺がいく!なぁに、すぐ持ち場に戻ってくるさ。待ってろよ、アニー。サクッと終わらせてお土産買ってやるからな!」
娘か、彼女か、不明だが一人の若い騎士がかっこいいことを叫びながら扉のある方へと駆け出していく。
覚悟があるというのはいいことであろう‥‥。
ーー
メルキア砦扉前
「くそ‥‥‥、限界だ‥‥。」
ミシ、ミシと扉が軋み既に弧を描くほどに変形している。閂など等に役目を果たしておらず辛うじて支えている状態だった。
だが先ほど誰かが零したように限界を告げる存在が今訪れた。
砦の扉の上、索敵用の通路から一人、いやそこにいた全員がそれを捉えていた。
「おいおい、単眼巨人だと‥‥‥。」
単眼巨人。
文字通り単眼の巨人だ。身長は平均して5メートルを超え、個体にもよるが岩を削り出した棍棒を武器として振るう。そして凄まじい怪力を持つ上に岩のように硬い筋肉の鎧をまとう。当然危険なモンスターであるためランクはA。飛竜と同じランク帯のモンスター。
それが二体。
「「▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️ッッッッッッッ!!!!!」」
雄叫び。竜種などの咆哮と違うベクトルの圧力が扉にいるすべての人間を怖じづけさせてしまう。
そして、
ベキ、ベキ、ドゴオォォォォオン!!!!
そして扉が木っ端微塵に吹き飛び扉を支えていたものはもろとも吹っ飛ばされた。
単眼巨人が体当たりをかましたのだ。その岩のような体をぶつけられたのだから限界に近づいていた扉は耐えられるはずもなかった。無論、扉に群がっていた他の魔物も犠牲になったが。
「ッ、砦が‥‥‥!」
そう、扉が破壊されたということはすなわちメルキア砦が突破されたことを意味する。メルキア砦は防衛力を一点に注いでいる構造なためここを突破されるとこの先から防衛力はゼロになる。
「ハハッ終わったな‥‥「皆さん、伏せてください!」えっ?」
みれば森に溶け込みそうな緑色の外套を着た男が木に自然の意匠を施した弓を持っている。
男は矢筒から矢を取り出すと弓に番えてさらに詠唱を唱え始めた。
「森の精霊よ、我が矢に必中の加護を与え給え。風の力をこの矢に授け給え!
『風よ螺旋となりて穿て(ヴィクラ・ウィンドブラフマー)』!!!」
風を纏った矢は文字通り螺旋を描きゴブリンなどのモンスターを巻き込みながら単眼巨人を吹き飛ばす。
「遅くなりました!冒険者のアルケシュです!」
「アルケシュ?森の狩人アルケシュか!?」
森の狩人アルケシュ。ほとんどソロで活動しているAランク冒険者。森の精霊と契約し風の魔法に長けている。
ここにエストレアがいれば彼女はドルイドを連想したかもしれない。
密集した環境の中で正確に矢を射る技術に必殺の風魔法を合わせることでまさしく必殺の一撃を繰り出す。
「はい、遅くなりました。だけど‥‥とと、やっぱり硬いなぁ、吹っ飛ばしただけかぁ。」
門の向こうをみれば血が流れているものの何事もないように立ち上がった単眼巨人の姿が。
雄叫びをあげながら突っ込んでくる単眼巨人にしかし、アルケシュは余裕の笑みを浮かべ、
「残念、それは悪「オラアァァァァァァ死ねぇ!」手だよ?」
紫色の電撃を帯びた大剣を振り下ろした軽装の女性、いや少女が単眼巨人の腕を斬り飛ばした。
「ふん、他愛ねぇなウゴッ!?」
しかし、決めゼリフを言う前に少女の頭に拳骨が振り下ろされる。
「こら!勝手に飛び出すなって言ってるだろ、このバカフラン!」
「うるせェェェ!指図すんなバカ兄貴!カッコよく決めたかったのに!」
二人は兄妹のようで実に仲がよろしい。
「あー、集中してくれないかな?双戟さん?」
「「悪かったよ、狩人。」」
アルケシュの笑った怒気に引き攣った顔で謝る二人を尻目に周りの騎士達はワッと沸き立った。
「双戟のカウステスに森の狩人だ!」
双戟のカウステス
兄妹で冒険者になり兄テスラ・カウステスは状態異常系の魔法を、男勝りの言葉だが妹のフランメル・カウステスが雷霎の魔剣クレメンスタを振るう。
もちろん、二人の連携による攻撃は群を抜いており、こと連携において右に出るものなしと言われるほど。
当然、Aランクである。しかし、いずれSランクに届くのではとされており国から一目置かれている。
続いて背後から熱を感じ取り三人は反射的に飛び退く。
「二人、退いて。‥‥‥‥ハフゥ‥、焔の魔手、眠い‥‥」
眠け気味な言葉とともに特大な焔の手が彼女の振るう杖より発動し再び押し寄せる魔物達と単眼巨人を焼き払う。
「ちょ、あぶねぇな!気ぃつけろよ!」
フランメルが文句を言うがどこ吹く風で聞こえていない。
「だったら‥‥‥、射線上に立たないで。焼くよ?」
「ち、おい単眼巨人はもう一体いたはずだよな?」
「心配ない。あそこでステーキになって焼け死んでるから‥‥。」
「いつの間に‥‥‥。」
「考えるのは後‥‥‥‥だよ。ギルドからはまだ赤飛竜がいるんでしょ?だったらこいつら雑魚達を早く掃除しないとね。眠いもん。」
「相変わらず、マイペースな奴だなぁ。それで次期宮廷魔術師だもんなぁ。フローレンスさん?」
「さっき言った通り、話は後で聞くよ。さっさと終わらせて帰りたいんだから。」
迎撃戦は始まったばかり。
この話は視点を変えて物語を進めていく。
ちなみにエストレア達一行は馬車が横転していてメルキア砦に到着しておらずジッド達が横転した馬車を立て直そうとしていたがそれを尻目に縮地をもってメルキア砦へと走り出していた。
ーーー続く
今現在、エストレアを含めたキャラクターをイラストしております。いずれ完成次第載せます。
今年は忙しいなー、大丈夫かなー、




