迎撃戦: 集う冒険者達 裏
遅くなりました。
騎士道とは、守るに死する道。
今、己が生くるも、守られ生かされた証。
守られた命、守るために使うは、騎士の務めと思え。
ーー
「これで56匹目‥‥‥。刀の切れ味も問題なし、捌きもブレはなし、良好だな。しかし、張り合いがない。これでは作業だ。」
刀を振るう少女は今しがた斬り捨てたワームのような魔物の体液が刀に付着したため振るって落とす。
少女ーーエストレアはここまでに魔物をこの刀のウォーミングアップも兼ねて刈り取っていた。
しかし‥‥あまりにも弱い。この愛刀、兼丸夜叉姫櫻を切れ味を試すためにやっていたがなんともつまらない。妖刀に喰まれているわけではない。
一閃ーー
襲いかかろうといた狼のような魔物を斬り落とす。それはバターのように骨など関係なく両断してしまう。
「つまらん、だが‥‥数だけは一丁前ということか‥‥。」
散らすか。
ーー 比翼抜刀 紅剣術
ーー枯葉墜
踏み込み、手前の猪のような魔物に肉薄する。柄に手をかけその過程で顎をカチあげる。
エストレアの吸血鬼としての力でカチ上げられたのでかなり滞空してしまう。それだけではなくその余波で周りにいた魔物も同じようにカチあげられてしまう。
納刀し再び抜刀体勢へ。
再び、一閃
カチあげた魔物は全て細切れとなり鮮血が降り注ぐ。
降り注いだ血は当然エストレアにかかるが気にするふりもしない。
その様はまるで幽鬼であろうか。
「まずい。ろくに処理しない豚の肝みたいだ。」
不足していた血の摂取をしていたからだ。吸血鬼は何もそのシンボルたる牙で摂取する必要はない。その肌に付着するだけでも十分である。何故か口に含んでいないのに味がするという謎があるが。
切る、斬る、斬って捨てる。
彼女が歩けばその度に魔物の鮮血が舞う。鎧袖一触とはよく言ったものだ。
「砦は‥‥‥うむ、視認できたな。あの様子だと門は突破されたな、急ぐか。」
もうもうと立ち上る煙と爆発は普通に視認できる距離まで近づいた。
このペースであれば正午前には砦に着くはずである。
再び、踏み鳴らし音を置き去りにして駆け出していく。
ーー
僕は今何が起きているのか分からず呆然といていた。
だってこのメルキア砦に先日配属されたばかりの新兵で訓練所をビリだったけどなんとか卒業でき、ここに来たのに今は魔物が押し寄せてきているのだから。
厳しかったけど優しい先輩方が担架に運ばれているのをただ見ているだけだ。
訓練所で対処法を習ったはずなのに頭の中に叩き込んだのに僕の足は動かなかった。
けれど僕は何も動けない。人手が足りないからって動こうとしない僕に鎧と剣を投げ渡してくる別の班の騎士がたった今起きた轟音ーー
単眼巨人に門を破壊された際の余波で瓦礫の下敷きになったのが見えたから。
逃げた。
他の人から見れば臆病者だと罵るだろう。
けれど僕はそれしか出来ることがなかった。当然だ。
配属されたばかりの新人が、現地での研修を受けてないのにいざ戦場に立てなんて無理がある。
騎士道もクソもない、生きてこそ意味がある。
走りながら見渡してみれば持ちこたえていたのは突破された正門のみで他は冒険者が駆けつけているけど数で押されている。
単眼巨人
群体鋼毛狼
邪小鬼
邪犬鬼
炎酸蟲
鬼熊蜂
見える範囲でもこれだけの数の魔物がこの砦とその周辺に押し寄せていた。
よく見ればさらにいるかもしれないがとっさに入ってきた情報だとこれが限度だ。
さらにこのメルキア砦の前に壊滅したところの情報だと飛竜も確認されているとか。
もはやこれは大移動ではなく意図的な統率行動ではないのか?
僕は逃げる足を早めようとし、足を止めた。
いや、止めざるをえなかった。
見れば年端のいかぬ少女が瓦礫の側で泣き叫んでいる。瓦礫の下敷きになったのか彼女の親らしき腕を握りしめ泣き叫ぶ。
何もできない幼子の声に僕の胸は締め付けられる。
それは葛藤だろうか。
新人だからと言い訳にし覚悟のない新米の弱さが
弱くとも守るべき民の盾として譽れとあるべきか
そのような迷いは次の光景で消し飛んだ。
黒ずんだ、けれど油性のテカリをもった鱗を持つ蜥蜴のような魔物。
大蜥蜴である。
それも五体。
獲物であろう少女を円で囲むかのように包囲し、ジリジリと詰めていくのが見えたからだ。どこからとは考えない。魔物でも野生の動物となんら変わらない。
人間が野生の動物を知らないからだ。
その大蜥蜴が飛びかからんとするその時に僕は駆け出し少女との間に割り込むことができた。
体勢が悪いこともあるが大蜥蜴の衝撃でたたらを踏んでしまう。
けれど、
ここで踏ん張らないと僕が騎士になった意味がなくなる。
庇う形で大蜥蜴と相対しているうちに疲労が溜まり、出血が増えてくる。
幼い少女は僕の陰になるようにしがみついていた。プルプルと震えて目尻に涙をためている。
血の匂いに惹かれて他の魔物も集まってくる。
出血と疲労、それとなけなしの魔法を使い僕は限界に近づいてくる。
意識は朦朧とし、精神力で戦っている状態だ。
我ながらよく持っているなと思いつつ、自分が動けなくなるその時を魔物達は待っているのだと気づく。
門が突破されたから人員のほとんどは門の方に向かってしまったからここには僕一人だ。
「ちくしょ‥‥う、来いよ!かかってこいよ!!」
挑発し、それに反応した魔物が盾にぶつかりついに膝をついてしまう。
溜まった疲労でもう立てないと意識が飛びかかったその時に‥‥‥
「其方は騎士の鑑だな。後は任せろ。」
薄れゆく意識の中で紅の髪を揺らす、けれどそこから纏う気配は僕のような未熟者でもわかるほどの手練れ。
僕はその時、
女神を見た気がした。
続く。
運転免許の資格取りに行ってたんで書けなかったんです。
イラストはまだです。
気長にお待ちを




