皇帝陛下の恋文、書いているのは全部私です。――ところで、陛下が暗殺されるそうです
約7千5百字。中華後宮ファンタジー×宮廷サスペンス(恋文という題材の割に恋愛要素はないです)
明華は筆を止め、乾きかけた墨を確かめた。
紙の上には、皇帝・景曜の文字が並んでいる。もちろん、書いたのは景曜ではない。
『先日の夜、そなたが話していた故郷の牡丹を思い出した。庭の花も美しいが、あの日のそなたの笑顔には及ばぬようだ』
我ながら悪くない。
明華は一度読み返してから、最後まで景曜の筆跡を崩さず書き切った。
彼女が働いているのは、後宮の文書や記録を扱う尚宮局。その中でも女史と呼ばれる、書状の清書や記録を担当する実務方の女官だった。
本来なら、今書いているような恋文は仕事に含まれない。これは、ごく一部の近侍しか知らない特別な役目だった。
皇帝から妃たちへ送る恋文の代筆である。
明華は昔から、人の字を真似るのが得意だった。何度か手本を見れば、筆の運び方から癖までかなり正確に写せる。文章を考えることも苦にならない。
近侍から渡されるのは、「○○様は牡丹を好まれる」「昨夜は故郷の話をされていた」「別れ際、次に庭を歩く約束をされた」といった、短い情報ばかりだ。
明華はそれらを組み合わせ、相手に合わせて一通の手紙へ仕上げていく。
完成した書状には、皇帝が内廷へ私信を送る際に使う御印を押す。勅令などに使う公的な印とは別物だが、これがあれば、少なくとも後宮では正式な皇帝の私信として扱われる。
御印を使えるのも、代筆を任されているからこその特例だった。あとは決められた文書の経路へ戻せば、書状は妃のもとへ届く。明華が皇帝本人へ会う必要はない。
というより、会ったことがない。
遠くから姿を見たことならある。整った顔立ちの若い皇帝だった。それだけだ。声すら知らない。
そんな相手の恋文を何通も書いているのだから、考えてみれば妙な仕事だった。
明華は仕上げた書状を脇へ置き、今度は妃から届いた返書を手に取った。返事も明華のところへ回ってくる。次の手紙を書く材料になるからだ。
『陛下が私の話を覚えていてくださったこと、とても嬉しく思います』
丁寧な文字が続いている。最後には、次に会える日を楽しみにしていると書かれていた。
しかし、これを皇帝本人が読むことはない。
「……お気の毒に」
明華は小さくつぶやいた。これほど一生懸命書いても、読むのはあくまで自分だけである。もちろん仕事なので、返書に書かれた内容はありがたく次の恋文へ使わせてもらうのだが。
それにしても、皇帝はなぜ恋文くらい自分で書かないのだろう?
政務が忙しすぎて暇がないのか。単純に女性に対する興味が薄いのか。
(それとも……)
古今東西、この世には多くの王が誕生してきた。
中には立派でまさに偉人や賢人と称されるべき人もいるが、一方で愚王と呼ばれる者がいたのも事実。いかに皇帝だからとて、誰もがおしなべて優秀とは限らない。
歴史を学べば、それくらい明華にだって分かる。
(もしかすると今の私たちの皇帝陛下って、案外頭がよろしくないのかも……?)
不敬だと感じつつも、ついついそんな想像が頭を過ぎってしまう。
「まあ、私には関係ないか」
明華は次の紙を広げた。
仕事さえきちんとこなせば、それでいい。
***
そんな日々が続いていた。
だから、その返書を開いたときも、いつもと同じように次の恋文の材料を探すつもりだった。
一行目を見るまでは。
『皇帝陛下の代筆屋さんへ』
明華の手が止まった。
もう一度読む。
変わらない。
『皇帝陛下の代筆屋さんへ』
「……私?」
他に誰がいるのか。
思わず周囲を見回した。尚宮局の一室には他にも女史たちがいるが、皆それぞれの仕事に向かっている。
明華は返書を少しだけ身体の近くへ引き寄せた。
自分が皇帝の恋文を代筆していることを知っているのは、ごく一部の近侍だけのはずだ。妃たちは当然、景曜本人から届いているものだと思っている。無論、筆跡を間違えた覚えもない。
「なぜ……」
続きを読む。
手紙には、「直接話したいことがあるので指定した場所へ来てほしい」とあった。さらに、「このことは誰にも明かさず、必ず内密にしてほしい」旨も書かれていた。
明華はすぐには返事を決められなかった。
秘密の代筆を知っている近侍へ相談することはできる。しかし、手紙には誰にも話さないでほしいとある。そもそも、なぜ妃が自分の存在を知ったのかさえ分からない。代筆の秘密を材料に何かを要求しようとしている可能性もある。
それでも、文章そのものからは脅しめいたものを感じなかった。自分へ会いたいという要求も、脅しではなく切実な頼みに近い。
相手に合わせて手紙を書く仕事を続けていれば、文章から人柄を想像する癖くらいはつく。
それに、最悪の場合でも代筆は皇帝側から命じられた仕事だ。勝手に皇帝を騙っているわけではない。何かあれば、秘密を知る近侍たちが何とかするだろう。
(行ってみるしかない……か)
そこまで考えて、明華は手紙を畳んだ。
***
指定された時刻、明華は一人で待ち合わせの場所へ向かった。そしてそこで待っていた女性を見て、すぐに誰なのか分かった。
静蘭。
後宮でも地位の高い妃の一人であり、朝廷の有力な家の出身でもある。明華のような下級女官なら、普通は遠くから頭を下げるだけの相手だった。
「来てくださったんですね。よかった」
静蘭は明華を見ると、ほっとしたように言った。少なくとも、いきなり秘密を盾に何かを要求してくる様子ではない。
明華は一礼してから、さっそく尋ねた。
「その前に、一つだけ教えていただけますか。どうして私が代筆していると分かったんでしょう」
そこだけはどうしても先に聞いておきたかった。
繰り返しになるが、筆跡のマネには自信を持っている。とすると、秘密の役目がバレた原因は手紙そのものではない可能性がある。もしそうなら、それはそれで大問題だ。
静蘭は少しだけ困ったように笑った。
「文章です」
明華は目を瞬いた。
静蘭は幼いころから景曜を知っているという。有力な家の娘として宮中へ出入りしていたため、今より若いころの景曜とも何度も顔を合わせていたらしい。
「昔からあの方は、花をご覧になっても『咲いたな』で終わるような方でした。それなのに、後宮へ入った途端、花の色を私の衣に重ねたり、月を見て私を思い出したりするようになったんです」
「なるほど」
それは確かに不自然かもしれない。
「私の知る限り、あの方がこんな細やかな気遣いに溢れた文章を書けるはずがありません」
「……そこまでですか?」
「そこまでです」
迷いのない返事だった。
つまり、筆跡以前の問題だったらしい。はじめから手紙の内容が情緒豊かである時点で、こちらは詰んでいたわけだ。
明華は少しだけ安心したが、同時に別の疑念が強まる。
(やっぱり陛下って……)
昔から文章を考えるのが相当苦手な人なのかもしれない。それなら、自分に恋文を任せているのも妙に納得できてしまう。
ともあれ。
「それで……私を今夜呼び出したのは、代筆のことを確かめるためですか?」
「いいえ。それだけなら、わざわざこんな形でお呼び立てしたりしていません」
静蘭の顔から、先ほどまでの柔らかさが消えた。
「あなたに、お願いしたいことがあるんです」
「私に?」
「はい。ほかの誰にも頼めなくて……」
声が自然と小さくなる。
「陛下を”暗殺”しようとしている者がいます」
あまりにも唐突で、明華は聞き返すことすらできなかった。
「…………」
静蘭の表情を見る。しかし冗談を言っている顔ではない。
「今のところ、間もなく行われる大祭で決行するつもりだというところまでは分かっています。ただ、誰が企てたのか、どんな方法なのかは分かっていません」
「……それなら、すぐに陛下の側近へ知らせたほうが」
「それができれば、このような場を設けてはいません」
静蘭はほとんど間を置かずに答えた。
「この宮中で暗殺を企てている者がいるのですよ。誰がどう通じているのかも分からない。知らせた相手が向こう側だったら、私が知っていることまで伝わります」
確かに、その通りだった。
計画の全容が分からない以上、普段から皇帝のそばにいる者だからといって安全とは限らない。
「無論、だったら私が直接陛下へお伝えすればと思うでしょう。でも、それもできません。陛下の予定はすべて管理されており、私が次に陛下へ直接お会いできるのは大祭の後です。だからこそ、あなたであればと考えたのです」
「私なら? なぜです?」
「陛下の手紙を書けるほど近くにいる方なら、ご本人にも会えるのではないかと」
そこで明華はようやく、静蘭がなぜ自分を探したのか理解した。
「それに、手紙を書いているのはおそらく女性だと思っていました。あれだけ一人一人の話を覚えて、相手が喜ぶ言葉を選べる方ですから。きっと悪い方ではないのだろうと」
明華は返事に困った。
褒められるようなことをしているつもりはない。渡された材料をまとめ、それらしく整えているだけだ。
「そんなに立派なものでは……」
「そうでしょうか。少なくとも、私は強くそう感じました」
静蘭は真っ直ぐ明華を見ていた。
だからこそ、言いづらかった。
「……申し訳ありません、静蘭様。ご期待には添えません」
静蘭の瞳が揺れる。
「実は私も、陛下とはお会いしたことがないんです」
「え?」
「必要なことは近侍の方から聞いています。書いたものも決められた経路へ戻すだけで……陛下のお声すら知りません」
静蘭は言葉を失った。まさか頼みの綱だと思っていた代筆係まで、皇帝本人には近づけないとは。
となるともう、やはり陛下の側近へ知らせるしかないのか。
そんな空気が流れる。
(でも、それでは結局同じだ)
代筆の指示を運んでくる近侍なら、皇帝の近くにいる。だが、その中に一人でも内通者がいれば、皇帝へ届く前にすべての情報が敵へ流れる。
静蘭が暗殺計画を知っていることも、明華までそれを聞いたことも。
(でも、陛下に直接会うことが叶わない以上、他に打てる手なんて……)
明華は考えた。
自分にできることは、本当に何もないのか。毎日のようにやっている仕事を一つずつ思い返してみる。
景曜の筆跡を書ける。陛下の私信用の御印を使える。そして、完成した皇帝名義の書状を正規の経路へ乗せることもできる。
だが、それを利用して皇帝名義の書状を皇帝本人へ届けるのは無理がある。自分から自分へ送った手紙など、途中で誰かが不審に思うに決まっている。
(やっぱり、ダメか……)
そこで、明華の思考が「ん?」と止まった。
(……そもそも、暗殺の件を皇帝本人に知らせる必要はないのでは?)
いや、少し違う。
より正確に言うならば――。
明華は顔を上げ、静蘭の目を真っすぐ見た。
「一つ、考えがあります」
***
そして迎えた大祭の日。
暗殺の企ては、”失敗”に終わった。
皇帝・景曜を狙った刺客は、待ち構えていた武官たちに取り押さえられた。
その後の取り調べで、背後には朝廷の重臣がおり、さらに皇帝の近侍の中にも計画へ加担していた者がいたことが明らかになった。
すべてが片付いたあと、明華と静蘭には皇帝への謁見が命じられた。
明華が景曜をこれほど近くで見るのは初めてだった。これまでは遠目に姿を見たことしかない。もちろん、声を聞くのも初めてである。
「二人とも、よくやってくれた。おかげで余は命を拾った」
その声は、明華が想像していたよりもずっと凛として、それでいて穏やかだった。
「それにしても、まさか『余のふりをして”母上に”手紙を送る』とは。よく考えたな」
――そう。
それこそが、あの夜に明華が思いついた策だった。
皇帝本人には会えない。近侍も完全には信用できない。そして、皇帝名義の書状を皇帝本人へ送ることもできない。
ならば、手紙を届ける相手を変えればいい。
皇帝の近侍を介さず、それでも大祭の警護を動かせるだけの権威を持つ者を、景曜自身の名で動かす。
その相手が、皇帝の母――太后だった。
実の母親まで息子の暗殺に加担しているのなら、もはや誰を頼っても同じである。明華はそこに賭けたのだ。
もちろん、静蘭の名で太后へ助けを求めたのでは、途中で誰の目に触れるか分からない。だが、皇帝本人から送られた私信なら話は別だった。御印の押されたそれを第三者が改めることは宮中において大罪である。
それなら、明華にとってはいつもの仕事とほとんど変わらない。
『大祭で自分の命を狙う動きがある。ただ、周囲の誰が敵と通じているか分からないため、自分から不用意に動くことはできない。ゆえに母上の側で信用できる者だけを選び、密かに警護を固めてほしい――』
書き上げた一通は、いつもの恋文と同じように、誰にも怪しまれることなく太后のもとへ届いた。
その書状を読んだ太后は、すぐに事情を察した。
息子がわざわざ私信を使い、しかも自分では動けないと訴えている。ならば、皇帝の周囲にいる者まで安易に信用するべきではない。
太后は書状のことを誰にも漏らさず、自らが信用できる武官だけを密かに動かした。
暗殺の方法までは分からない以上、大祭そのものを取りやめるわけにもいかない。そこで予定は変えず、景曜の周囲だけをいつでも動ける者たちで固めたのだ。
結果、刺客は景曜へ刃を届かせる前に取り押さえられた。
景曜自身が、自分の知らないところで母がなぜそこまで備えていたのかを知ったのは、そのあとである。
「陛下」
静蘭が口を開く。
「その策ですが、考えたのはすべてこちらの明華です。私はなにも」
「ほう、そうなのか。そこまでは聞いていなかった」
景曜の視線が、改めて明華へ向いた。
「そなたが代筆係で助かった。余の筆跡を書けて、御印まで扱える者でなければ、あの手は使えなかっただろう」
「いえ、滅相もございません」
妃たちを喜ばせるために書き続けてきた恋文が、巡り巡って皇帝の命を救った。
なんとも妙な話である。
隣では、静蘭がようやく安堵したように息をついた。景曜は無事で、二人の働きも認められた。張り詰めていた空気が、わずかに緩む。
けれども明華だけは、黙って表情を引き締めたままだった。
そして案の定、景曜の言葉には続きがあった。
「――ただし」
それまでとはわずかに低くなる声。
静蘭としては意外だったのだろう。変化を察してわずかに「え」と息を呑む。
「余の命を救ったことと、命じてもいない書状を余の名で作ったことは別だ。許可なく御印まで使った。それを見過ごすわけにはいかない」
「で、ですが陛下、明華があの手紙を書かなければ――」
「静蘭様」
明華は静かに静蘭を制し、首を横に振った。
「いいんです」
太后宛ての書状に御印を押したときから、こうなる可能性は分かっていた。
景曜の筆跡も御印も、命じられた書状以外には決して使わない。それは代筆を任されたとき、何度も言い渡された決まりだった。
皇帝を救うためだったからといって、破った事実まで消えるわけではない。
それでも、あの夜は迷わなかった。
自分が役目を失うことと、皇帝が命を失うこと。
比べるまでもなかった。
「陛下、処分はいかようにでも」
「そうか。良い覚悟だ」
景曜はしばらく明華を見て、それから告げた。
「では、そなたを余の代筆係から解任する」
明華はその言葉を、顔を伏せて瞳を閉じたまま受け取った。
代筆係は、ごく一部の近侍しか知らない秘密の役目だ。皇帝の筆跡を写し、御印まで扱っていた人間が、その役目だけを失って何食わぬ顔で尚宮局に残れるとは思えない。
つまり、宮中を去れということなのだろう。
(……まあ、妥当でしょうね)
役目を失うことに未練がないわけではない。誰にも知られない仕事ではあったが、自分の文章で誰かが喜んでくれることを、明華は内心嫌いではなかった。
それでも、命を奪われるよりは幾分以上にマシである。
ここを出たあとの暮らしについては考えなければならないが、そこはなんとかするしか――。
「そしてその代わりに、本日付けでそなたを新しく“司記”に任ずる」
「……はい?」
思わず顔が上がった。
司記とは、尚宮局で文書の出入りや記録、印を管理する上位女官である。これまで書状の清書や記録を担ってきた明華からすれば、何段も上の役目だった。
要するに――大出世である。
「あ、あの……」
戸惑う明華に、景曜はあっけらかんと言った。
「いやな、代筆係は今回の件がなくても近いうちに終わらせるつもりだったのだ」
どうやら明華の頭の上によほど大きな疑問符が浮かんでいたらしい。景曜はくっくっと愉快そうに笑う。
「つまり、こういうことだ」
景曜が皇帝となったのは、まだ幼いころだった。
この国では、皇帝であっても成人を示す加冠の儀を終えるまでは、先帝の代から仕える重臣たちの補佐を受けて政を行う。
もっとも、補佐というのは名目上の話だ。幼い皇帝に代わって長く政務を動かしていれば、自然と人も権力もその周囲に集まっていく。皇帝が成人するころには、朝廷の中に自分たちの地盤を築いている者も珍しくない。
そんな中で幼い景曜が早くから才覚を見せれば、彼らはどう考えるか。
この皇帝が成人し、自ら政務を執る親政を始めれば、今の権勢を奪われるかもしれない。
――ならば、力を持つ前に消してしまえばいい。
そう考える者が朝廷の内側に現れてもおかしくないし、将来脅威になりそうな皇帝を警戒するのは他国も同じだった。
だから景曜は、幼いころから自分の力量を隠してきた。
できることまで人に任せ、政治にも執着の薄い皇帝を演じる。周囲に「この男なら、成人しても大した脅威にはならない」と思わせるためだった。
だが、その時間も間もなく終わる。
景曜は近く加冠の儀を迎える。儀を終えれば、成人した皇帝として自ら政務を執り、人事にも手を入れ、これまで重臣たちに預けていた権限を取り戻していく。
そして実際、今回の暗殺を企てた重臣も、それを恐れていたらしい。
景曜がどれほど凡庸に見えていようと、加冠を終えて親政が始まれば、幼い皇帝を補佐するという名目で握ってきた権力は失われるかもしれない。だからこそ、その前に景曜を消そうとした。
もう、何もできない皇帝を演じているだけでは切り抜けられないところまで来ていたのだ。
(……ん? ちょっと待って)
そこまで聞いたところで、明華は気づいてしまう。己の中に長らくあった疑問の答えについてだ。
「では、これまで陛下が恋文をご自分で書いてこられなかったのは……」
明華はハッとする。
政務が忙しすぎて書く時間がなかったわけではない。
女性に興味がないから書かなかったわけでもない。
ましてや――。
「やれやれ。その顔から察するにそなた、さては余が恋文の代筆係を立てていた理由を、余が自分で手紙も書けないほどの阿呆だからだとでも思っていたようだな」
明華の肩がぎくりと跳ねた。
「め、滅相もありません!」
慌てて手を振る。が、もう遅い。
「ふっ。この正直者め」
景曜が笑う。
「まあよい。そなたには命を救ってもらったからな。それくらいの不敬は免じるとも。今回の罰は、新しい役目でしっかり働くことだ」
「……承知しました」
翌日から、明華の机に恋文が置かれることはなくなった。
代わりに待っていたのは、新たに得た肩書にまつわる山ほどの文書である。
(……なるほど。確かにこれは罰かもしれない)
そう思いながら、明華は今日も筆を取るのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
もし少しでも皆様の暇つぶしになったようでしたら、
【ぜひ下の☆☆☆☆☆をタップして★★★★★にしていただけると嬉しいです!】
ついでに宣伝。以下、新作短編です。よければこちらも!(画面↓にリンクもあります)
【ハイファンタジー】『悪役令嬢の私だけが、聖女様の「やり直し」を覚えている』




