表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/9

庇護欲と独占欲

凛は隣にある兄の部屋の扉をノックした。


3つ年上になる理玖は、最近家にいる時間が減った。

扉はすぐ開いた。


「どしたー?」


眠そうな顔の理玖が、少し扉を開けて顔を覗かせる。


「入っていい?」

「だめ。今友達来てる」


目を擦りながら、理玖が言った。気怠げなその様子も、やたらと格好がつく様相だった。


「だれー?」


中から声が聞こえた。聞き覚えのない女の子の声だ。また違う人かと凛は思った。

理玖は上半身に何も着ていなくて、何をしていたかなんて隠そうともしない。


「ん? 弟。おれの」


振り向いて理玖が言った。中から「えー、絶対可愛い、見たいー」と甲高い声が上がった。理玖は無視して向き直った。


「で、どした、凛」

「りっくん、後でいいからおれの部屋来て」


凛が見上げて、理玖の手を掴む。凛の成長期はまだ訪れておらず、理玖の胸の高さくらいが視界だった。細く薄い、けれどきれいな筋肉のついた胸板を見て、凛はいつかこうなれるのかなと思った。

見上げられた理玖は、少し眉を寄せて凛の頭を撫でてから、少し屈んだ。


「なんで? なんかあった?」


昔から変わらない、甘く優しい声音だった。


「うん、怖い動画見てたら寝れなくなった」

「はは、何やってんの。おまえ怖がりなのに、ひとりでそんなの見たら駄目じゃん」

「ごめん。でも、ホント怖くて一人でいるの無理。一生のお願い」


理玖が溜息を吐いた。


「一生のお願い何度目だよ。ーーちょっと待ってな」


一度扉が閉まり、それから、中で話し声がして、女の声が少し強くなった。5分ほどしてまた扉が開いた。廊下にきんきんとした声が響いた。


「こんな時間に女の子一人で帰らせるなんて、理玖最低ー。来週学校で全部言うよ」

「駅まで送るって言ってんじゃん」

「そーいう問題じゃなくない?」


理玖は返事をせず、廊下を歩く音がした。


「ちょっと、理玖」

「まだ文句言うならもういいわ」


理玖は先に立ったようで、さっさと一人で階段を降りる音がした。


「え、ちょっと、待って。待ってってば、」


慌てた高い声が続いて階段を降りていく。その後玄関の扉の開閉音とともに、家の中は静かになった。


凛はベッドで布団に潜り込み、携帯でくだらない動画を見て時間を潰した。


半時間ほどして、玄関の扉が開いた。一人分の足音が階段を登ってくる。そのまま、凛の部屋の前に立った。


「りんー? 寝たー?」


理玖の声だった。凛はすぐさま起き上がり、「りく、来て」と大きな声を出した。すぐに扉が開いた。


「うあー。外、寒かった」

「入る?」

「入る」


冷たい空気を纏い、理玖は凛のベッドに潜り込んだ。


「おそいー…」

「ごめんて。でも友達来てたんだから仕方ないだろ」

「さっきの人、帰ったの」


知らないふりをして、凛がたずねる。布団の中で、理玖は答えないまま凛を抱き込んだ。冷たい腕は、強く凛を抱く。


「りっくん、ごめんね」


分かっていて、凛は謝罪を口にする。理玖は自分にはすこぶる甘いから、理玖は必ず許してくれる。そしてこうやって抱きしめてくれる。

それを知っていて、凛は理玖の前で可愛い弟の顔を見せる。


「いい。なんかめんどくさかったし、凛大事だし」


理玖はとても容姿が良くて、相手の女の子は引くて数多でキリがない。

凛は腕の中で少しだけ息を止める。誰かの気配がまだ残ってる気がして、服の端を強く握る。


「おれも、理玖が一番大事だよ」


理玖が「そっか」と笑って、凛の頬を撫でる。その手の温度は、まだ冷えたままだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ