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第三話


「お嬢様。そろそろ――」

「え、もうこんな時間?」


 チラッと時計を見ると、時刻は既に夕食時を指している。


「はい。ご夕食は既に準備出来ております」


 そう言われて振り返ると、そこにはいつの間に用意したのかテーブルの上に食事が用意されている。


「……相変わらずの手際の良さね」


 思わず感心した様に言うと。


「お褒め頂きありがとうございます。恐縮です」


 リアはそう言って椅子を軽く引いて座る様に促した。


「ええ、ありがとう」


 アリアはリアに促されるがまま机につき、今日の夕食を軽く見る。


「ここの料理はいつも美味しそうね」

「そうですね」


 この学校では朝・夕は学校専属の料理人が調理を担当しており、使用人が時間指定の時間に取りに行く事になっている。


 ちなみに「お昼」に限って言えば学校で昼食を取る事になっており、生徒が自分で食堂に行って何種類かのメニューを選べる様になっているのだが、中には自作でお弁当を作る生徒もいる。


 もちろん、食事代などの費用は全て国が負担してくれているのだが、お弁当を自作する場合はそのお金は自分で出さなくてはならない。


 しかし、実は主人公の様な庶民出身の人たちはそれでもお昼はお弁当を持って来る人が多かった。


「……」

「お嬢様? どうされましたか?」

「いえ、何でもないわ」


 そこまで考えてアリアはふと思い出した。


 ゲームの中で「主人公は庶民と言う事もあり、食事のマナーが分からず嫌味を言っていた令嬢がいた」という事を。


 つまり、庶民の人たちが自腹だと分かっていながらお昼にお弁当を持って来ているのは、そういった貴族たちの嫌がらせを避ける為だったのだ。


 しかし、問題はそこではない。


 実はその発言をした令嬢はなぜか真っ黒のシルエットしか描かれていなかったのだ。


 今更ではあるが、考えてみるとどうにもおかしい。


 なぜなら、その発言をしていたのがクローズならクローズのイラストを出せば良いだけの話だからだ。


「……」


 そして思い返してみると、おかしな点がいくつか浮かび上がってくる。


 それに、クローズは「自分の婚約者や他の婚約者にあまり近づき過ぎない様に」を始めとした様々な小言を言ってきた事はあったものの、貴族となった今となってはそのどれもが的を得ていると分かる。


 他にもいじめや嫌がらせをされる時は大抵クローズのイラストではなく、なぜか黒いシルエットだったという事も引っかかる。


「……まさか」


 そこでアリアは『ある可能性』に辿り着いた。


「お嬢様? 本当に大丈夫ですか? 体調がすぐれないのであれば……」

「え。あ、うん。大丈夫よ」


 心配そうに見つめているリアに対し、アリアは気を取り直しつつゆっくり料理を口へと運んだ――。


「……」


 そして「もし、本当にそうだとしたら……」と思いつつ、不安を感じていた。


 しかし、今のままではただの推測でしかない。


 そこでアリアは「まずは情報を集めるところから……かしらね」と思いつつ、リアの視線を感じながらゆっくりと食事を味わった。

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