最終話
「……知っていたよ」
しかし、王子の答えはアリアの想像とは全然違っていた。それこそ、思わず「え」と声を漏らしてしまったほどだ。
「何となくの直感ではあったけどね。確信したのはこの間の国立魔法図書館……かな。あの本に実は『この本は鑑定の魔法を使える者が近くにいないと読めません』って書いてあってね」
「……」
いつの間に条件が変わったのだろうか……いや、本当は最初からその条件だったのかも知れない。
何せ、この本を読んでいた頃は薄っすらとしか文字が読めなかった。
それに、高い魔力を持つ『先祖返り』が王宮で匿われていた理由もひょっとしたらそこにあったのかも知れない。
もしかしたら、本人が『鑑定』の魔法が使える事に気が付いていない可能性も否定出来なかったからだ。
「そ、そうだったんだ……」
アリアは「じゃあ、今まで私が心配していた事は?」と安堵から、体全身の力が抜ける気がして、ついいつもの口調が出てしまっていた。
「も、申し訳……」
「良いよ」
「え」
「今は口調は気にしないで欲しいと思ってね。もちろん、場を弁えないといけない時はあるだろうけど」
王子はそう言ってニッコリと笑う。
「……」
思えば、王子はいつも笑顔だった。
小さい頃から思い返して見ても、真っ先に思い出すのは笑顔で……アリアはその笑顔が好きだったのだ。
「さてと。じゃあとりあえずアリアの話したい事は……」
「――終わっていませんよ」
「え?」
今度は王子が驚く番だった。
しかし、アリアはまだ言っていない事。本当に言いたい事が残っている。
「殿下。私は――」
この後。アリアとキュリオス王子は、最初に話していて遅れていた分をあっという間に巻き返し、お互い競う様に課題をクリアしていったのだが……正直、ジンクスそっちのけの状態だったらしい。
「あなたたち……何をしていたのよ」
「……え」
「ハハハ」
結局、通常であれば一位と二位独占なんて無理な状況だったにも関わらず、歴代最速記録で一位と二位でゴールをした二人を見たクローズは何となく察しはついていただろう。
しかし、結果的に競い合いをしながらゴールした二人に半ば呆れ顔だったが、どこか楽しそうだった。
「あ」
そして三人で見上げたキレイな星空を見つつ『星空会』は終了した。
その後も毎回学校行事やテストがある度に二人は競い合っていたのだが……結局一度もアリアはキュリオス王子に勝つ事はなかった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「はぁ。結局、最後まで勝てませんでした」
「そりゃあ、好きな人に良いところを見せたいからね」
「それは私も同じなのですが?」
「え」
そうしてあっという間に迎えた卒業パーティーの日。ここで国王陛下から正式にキュリオス王子とアリアの婚約が発表された。
あの『星空会』の日。アリアは王子に自分の気持ちを素直に伝えたのだが……。
「……」
王子はその時、顔を真っ赤にして……ものすごく照れていた。
アリアはそれすらも「かわいい」と思ってしまう程、自分がキュリオス王子を好きだと改めて実感したのだが、王子はそのまま逃げる様に先に行ってしまった。
その結果が『星空会爆速記録』の全容だったのだが、じゃあ「お互い両思いだからすぐに婚約」にはならなかった。
何せ、リチャード王子の例がある。そこで国王陛下が条件として「学校の卒業」を上げた。
要は、最初の……それこそ小さい頃に初めて国王陛下から『先祖返り』の話を聞いた時の言われた話と何も変わらなかったのだが……二人はそのまま学校生活を続け、成績もキープしたままこの日を迎えていた。
「……」
最初は「モブ令嬢の私にそんな『魔力』なんていらない!」と思っていたけれど、この『魔力』がなかったら……きっとこんな楽しい日々は送れなかったはずだ。
「アリア?」
「いいえ。何でもありません」
アリアはこの『魔力』に今はとても感謝していた。
ただまぁ「あの『神』にもう一度会う事があったら物理的に一発殴りたいところではあるなぁ」と思いつつ、アリアは一人。ゲームではないこれからの日々に思いをはせながら穏やかに笑い、キュリオス王子と一緒に笑い合った。
「きれいだね」
「はい。とても」
「――空だけじゃないけどね。上手く伝わらないなぁ」
「え? 殿下?」
苦笑いを見せる王子に対し、アリアはキョトンとした顔だったのが、王子はそれに対して「まぁ、その方がアリアらしいよ」とまた笑ったのだった。
「?」
その卒業パーティーは夜に行われたのだが、その日の空は『星空会』以上にキレイで……まるで星が降っているかの様だった――。




