ピンクブロンド先生の教え
「あたしは、メアリーです。ピンクブロンド先生!あたしを貴方の弟子にして下さい。
私は、人を、陥れたいのです!」
「ちょっと!何を言っているのよ!ふざけないでよ!私はリディアよ!」
心の底から怒りがこみ上げてきた。
私の髪はピンクブロンド、低位貴族、男爵家の庶子出身のシスターよ!
こっちの苦労をしらないで、
私には、
黙っていても男が貢ぎ物を持って寄ってくる。困ったジョブ『破滅系ピンクブロンド』がある。
気を付けて、生活をしていたじゃない。
だけど、
遂に、家の権利書なんか持って来て、
「へへへへへ、リディアちゃん。これで僕の恋人になってよ~」
「ちょっと、あんた誰!知らないんだからね!」
「ウヒョー、ツンデレだ!」
こんな事件があった。
だから、怖くなって、家出し、修道院に入って、孤児の養育係になったじゃない!
でも、この子、まだ、6歳じゃない!
キツいことを言って諦めさせるじゃない!
「じゃあ、そこの階段から飛び降りなさい!ピンクブロンドは階段から落される宿命じゃない!」
私を妬んだ高位貴族の令嬢が、私を押して、階段から落すじゃない。
受け身は自然に覚えたじゃない。
メアリーは、スタスタと階段の前に来た。
やっぱり、怖いみたいじゃない。6歳ぐらいだったら、階段は急勾配に見えるじゃない。
「ほらね。これに、懲りて、人を陥れたいと、邪な心を捨てて、良い子になるじゃない?
特別におやつあげるじゃない!」
ガタン!
ゴロゴロゴロ!
「ちょっと、何、本当に転げ落ちているのよ!」
メアリーは大けがをしたじゃない。
私は聞いたじゃない。
「何故、人を陥れたいの。誰かに復讐したいの?」
「違うのです。私は、他人の吠え面を見たいのです。純粋に、人を陥れたいのです!」
最低だ。こいつの性格の悪さは常軌を逸している。世に放っていいものか。
私は策を講じるじゃない!
「フン!弟子にするじゃない。悪女の道は1日にしてならずじゃない!
まずは、勉強じゃない!お手伝いじゃない!シスターさんのお話を良く聞くじゃない!」
「先生、有難うございます!」
奴は、めげずに、勉強をし、孤児院のお手伝いをした。
数年が経過したじゃない。
メアリーは、頭は良くない。馬鹿だ。
馬鹿王子と、馬鹿公爵の庶子のハイブリット。
しかし、食いついてきた。
勉強も上位!
シスターのお手伝いもよくする。感心じゃない!
数年が経過した。
良い子にしか見えなくなった。
周りの評判も上々じゃない。
年少の子の面倒もよく見るじゃない。
そろそろ、諦めたか。
そうだ。ダークヒロインに憧れる子供特有のあれだったじゃない。
「メアリー、最近、良い子って評判じゃない。ご褒美に、棒付きキャンディーあげるじゃない」
「有難うなの~~」
ペロペロ~
「グヒヒヒヒィ、先生、良い子になると、気持ちが落ち着くの~、これは、まずは、敵の中に侵入する仮の姿を手に入れろですね?」
「ち、違うじゃない!ただの良い子なんだからね。メアリーちゃんは、良い子!良い子なんだからね!」
しまった!
皆にチヤホヤされても、気が変わらないか。
なら、陥れられた令嬢のお話聞く係りにして、
如何に、人を陥れることが、不幸なことか。いけないことか。
教えなければいけないじゃない。
メアリーは、顔だけはいい王子と、可愛いだけの公爵令嬢のハイブレット、
顔だけは良いし、人形みたいに可愛いじゃない。
だから、令嬢は安心して話したじゃない。まるで、人形に悩みを打ち明ける乙女のように、
「そうなの~、大変なの。メアリーが、ヨシヨシしてあげるの~~」
「有難う。メアリーちゃん。グスン、グスン」
うまくやってるじゃない。
ここには、追放されてくる令嬢がいるじゃない。
明らかに冤罪でも、家族の処罰権は、当主が持っているから、裁判でも不利じゃない!
王家でも介入出来ないじゃない。
☆
「メアリー、どうだった。何時間も熱心に聞いてあげて、偉いじゃない」
「ゲラゲラゲラ~、楽しいの。陥れられた令嬢の話は、面白いの~~」
「メアリー!可哀想な令嬢の話を聞いて、人を陥れることの虚しさを学んだんじゃないの???」
「フフフフ、せんせ~い。素に戻っているの~~、せんせ~いは、男を遠ざけるために、突っ放す言動を取っているの~、それが、逆に男を引き寄せるの~
ツンデレって手法なの」
「な、何!?」
そうだ。男が貢ぎ物を持って来るから、怖くなって、「あんたなんか好きじゃないんだからね!」と言っていた。
「せんせいから~多くのことを学ばせてもらったの~~、ドレスに虫入っちゃった!バラの枝に髪が挟まっちゃった。技は豊富なの~~」
そう言えば、男が来ると、ドレスに虫が入ったり。貴公子から、隠れようとすると、髪がバラの枝に挟まるような。
「キャハハハハハハ、しばらく、留守にするの~~」
そうして、奴は、不遇に家を追放された令嬢の家に潜入し、頂き令嬢を、追い出してきた。
頂かれたものは、必ず令嬢に返す。
「あたし~物はどうでもいいの~~」
この頃になると、王家も関心を持つようになってきた。
頻繁に連絡を取るようになったじゃない。
どうやら、王家も上っ面な評判だけを聞いて、養子にしようとしているじゃない!
形だけは令嬢を助けているじゃない!
でも、私は知っているじゃない!
メアリーは、本物の悪ではない!
メアリーは、アリシアの家に潜入したときは、
王家の騎士団を動かして、
スザンナの薬の入手先を摘発させたじゃない。
王家も、善意で無実の罪で陥れられた令嬢の救済に動いているみたいじゃない。
ますます。王家のメアリーに対する評判が良くなっているじゃない。
私は、司教様にお願いして、
メアリーの
スキル鑑定してもらったじゃない!
私のジョブは、破滅系ピンクブロンド
対して、奴のジョブ・スキルは・・・
「無し!」
「え~、ジョブ・スキルないから~工夫が出来て楽しいの~~」
無し!
努力だけで、頂き令嬢を陥れてきたじゃない!
「シスター殿も、スキル鑑定を」
「変わらないじゃない・・・」
水晶に手を当てたら、
ピカッ!
「何よ。破滅が取れているじゃない!」
「・・・男爵令嬢ピンクブロンド、称号、ほしがり妹を弟子に持つ者・・・何ですか?
これ?」
「ちょっと、私も知らないじゃない!」
「先生!」
「メアリー、何よ。改まって」
「私は次の段階に入りたいの~~~」
もう、危ない橋を渡るのはやめるじゃない。
「ツンデレをおしてほしーの」
ピキーッ
「嫌なのだからね!」
「復唱するの。嫌だからなの~~~~」
メアリーは、今日も待っている。
不遇な目にあった令嬢が、修道院に追放されてくるのを、
まだ、メアリーの出番は多いようだ。
最後までお読み頂き有難うございました。