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魔女と小説家  作者: 彩葉もへじ
二章 炎と氷の森
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20/20

小話2-1

 ...。

 目を覚ました時にはセグレトの森を出てから一日が経過していた。

 もう頭痛は無くなり、万全の状態。

 そしてある程度頭で状況を整理した後に、漸く私は筆を持った。

 振り返ってみれば濃密な一日だった。

 そう。

 あれはたった一日で起きた事だった。

 何度でも言う、あれは一日の出来事だった。

「セグレトの森に着いて、ダンジョン向かって。ダンジョン入って、星の書手に入れて、そしたら彼女らに襲われて....。内容濃すぎませんかね。あの一日だけで波乱万丈な人生だったって振り返れるレベルじゃないですか。」

「随分退屈な人生送って来たんだね~。あんなの日常ぐらいに思ってないと体力もたないよ~。」

 アサはローブを掛け布団の様に扱い、鞄を枕の様にしてだらしなく横になっている。

 一応言っておくと、現在は昼間である。

 この様子はさぞ壮絶な人生送って来たんだろうな~....。

「まだ私目線でしかストーリー綴ってないんですけど、アサ視点の話も聞かせてくださいよ。」

「別にスキップしていいんじゃない?」

「それじゃあ魔女と小説家じゃなくて、小説家の自伝。になっちゃうじゃないですか。魔女視点も必要なんです!!」

 アサの体を揺する。

「わぁわぁわぁわやめてぇ~。話す!話すからぁ!!」

 揺すりが効いたのか、アサは本日漸く起床した。

「まだ寝たかったのに....。でもいいのぉ?」

「いいって...何がですか?」

「私視点ってさ、要はネタバレの宝庫な訳じゃん。サファルちゃんが知らないことも常識みたいに語られるし、設定盛りまくりで説明文だらけな三流小説になっちゃわない?」

 中々痛い所を付いてくる。

 アサの視点での出来事を聞くことは必要だ。

 でもその中で様々なことをほいほいと教えて貰うことで盛り上がりに欠ける可能性があるという意見は正直その通りだと思う。

 かと言って、私が既に知っていることを「まだ知りません。」というスタンスで保ち、それを後々タイミングを見計らって開示。そんな高等技術持ち合わせていない。

 後で矛盾が発生する気しかしない。

「それじゃあ私が疑問に思ったことを聞いて、それに答えてもらうって形式ならいいんじゃないですか?私が今疑問に思ってないことは要は今は必要ない情報って訳ですし。私も深い点は聞かないので。」

「うーん。まぁその形式でやってみよっか。」

 という訳で、今回私が物語を綴るにあたって、未だよく分かっていないことを諸々聞いていくことになった。

 だけど、どれを聞いて、どこを聞かないか....。

「それじゃあ一番気になってたアサとラアナって子との戦闘について教えてください。あそこは私たち別れてて、状況全く知らないので。」

 私とアファが戦闘中、アサは弓使いのラアナを捕えていた。

 一体どんな戦闘をしたのか。

 それについては必ず聞かなければいかないと思っていた。

「何にも楽しいことなんてないと思うけどなぁ....。」


 そうして、アサは自分の視点での出来事を話してくれた。



(なんで分かってくれないかな~~!!!星の書はこう!!手を合わせてこう!!!)

「...?」

 しかしいくらジェスチャーを送っても彼女は分かってはいない様子。

 態々透明化を一部分にだけかけないことで意思疎通を図ろうとしたのに、これではただ片手が見えるだけの奇怪な生き物だ。

(だから、表紙に手を合わせるんだよ~~!!)

「分かりました。」

 どうやら分かってくれたらしい。

 それなら私のやるべきことは決まった。

 彼女には機械(アーティファクト)を以ってしてピンク髪の子に対抗してもらう。

 その時間で私は恐らくいるであろう弓使いの方へ。

 そして人質交換で事を済ませよう。

(それじゃあ行ってくるね。頑張りなよ。)

「すみません。命だけは助けて————」

 どうやら命乞いを始め出している。

 彼女も自分のすべきことが分かっているようだ。

 本当に賢いな彼女。これなら自分も動きやすい。

 そうして、私はピンク髪の子に気付かれないようにその場を去り、そして矢が放たれた方向へ向かった。


 

「あ、一つ聞きたいことがあったんですけど彼女たちってなんて組織に属してるんですか。名称があると助かるんですけど。」

「『アマニ』。機械(アーティファクト)回収と、存在の秘匿を世界規模でやってる馬鹿達だよ。」

 彼女たちはアマニっていう組織の人間なのか。

「あまに...。はいどうぞ、続きを話してください。」

「辞書を引いてるみたいに私を使うね...。」

 そんなドライな人間みたいに思わないで欲しい。

 私はただ、続きが気になったけど...それを知っとかないと後々面倒だと思ったから間を縫って聞いたというだけだ。

 だからさっさと続きを話せ。



 私は走るのは苦手だけど夜目は利く。

 夜の森でも木を避けて進み、相手の元へ向かう最中だった。  

 闇夜の森に駆けていたにも関わらず、私の腕を掠めるクリスタルの矢が放たれる。

「へぇ~。なかなかやるじゃん。」

 どうやら私の存在は捉えられたらしい。

 相手は夜目が利くどころではない目を持っているようだ。

 しかしこうなると、彼女の身が危うい。

 私たちが二手に別れていることがバレたとしたら、身を守る手段を持たない彼女が狙われた場合防ぐ手がない。

 そして必然、これから狙うのは私ではなく彼女の方だ。

 片手以外透明な人間と、投降しているふりをしていて、かつ処理すれば味方が一人フリーに出来る人間だったら選択なんて一択だ。

 つまり私はこれから、放たれる矢は全て回避をしてはいけず、かといって直撃したら元も子もない...。


 ...まぁ、それがなんだって話だけど。


「直進一択、逃げ場なし。」

 矢が放たれた方角は一度目の時と比べて少々角度が変わっていた。

 私は直ぐに方向を変え、彼女と相手を結んだ線の間を駆ける。

 そしてすぐさま魔法を発動させた。

「光(nuru)。」

 効果は単純。

 発光体を生み出す。簡単だし、魔力も全然消費しない。

 その代わり、この光に当たると何かがあるという訳でもない。

 本当にただ、光るだけ。

 私は白い光を自分の背に配置した。

 相手が暗闇の中で彼女たちを射抜けるというなら、強い光で視界の全部を上書きする。

 単純だけど効果的な手だ。

 これで相手には彼女が見えず、私しか捉えることが出来ない。

 しかしリスクとして私の片腕ははっきりと見えるはずだ。

 次の一矢は必ず当てて来る。

「....来た!!」

 私は咄嗟に矢を鞄で受ける。

 頑丈さで言えば、放たれた矢よりもこちらの方が硬い。なんせこちらはドラゴンの皮だからな。

 案の定矢は鞄にかすり傷を付けただけで砕け散ってしまった。

 相手からすれば、空中で何かにぶつかり砕けた様に見えるだろう。

 しかし咄嗟に鞄で受けることが出来て良かった。

「狙ったな~?」

 意外なことにクリスタルの矢は私の腕を狙っていなかった。

 私はきっと見えている片腕を狙ってくるものと踏んでいたが、恐らく見えている片腕から頭か首がある場所を推察し狙ったのだろう。

 実際狙いは的確で、防がなければ喉元に刺さっていた。

 見えないものを的確に射抜いてくる。とてつもない技術の持ち主だ。

 だが、これで詰み。

 既に私は相手の姿を捉えた。

 距離も縮まっている。

 再び弓を構えているが、手遅れだ。

 放たれるタイミングが分かっているなら弓を防ぐのは容易。

 今度は手で矢を受ける。膜の魔法を上手く使い、軌道をずらすようにして防いだ。

「魔女が!!」

 矢筒に手を伸ばす前に私は相手の両手を掴む。

「残念、弓兵がここまで寄られたら終わりだよ。はい、吸収(kunyonya)。」

 吸収(kunyonya)。

 範囲内の機械(アーティファクト)内の魔力を吸い取る魔法。

 範囲は狭いがここまで近ければ相手のであっても問答無用で奪い取れる。

「何して...」

「安心しなよ。全部は取らないであげるから。」

「....はっ、まさか魔力を!?」

 相手は私を振り払おうとするが、私の体が見えないからどんな姿勢で抑えているのか分かっていない。

 そのせいで力の入れどころが上手く掴めず、振り払えないでいた。

 そのままじっくりと、念入りに魔力を奪い取っていく。

「想定より量が多いような...あ、もしかして機械(アーティファクト)複数個持ってる?」

「誰が言うか!」

 言わなくても、吸収される魔力量で大体分かるんだけど、この場面で使用しないなら戦闘用じゃないんだろう。

 それなら魔力を少し残してあげてもいいか。

 

「いやー潤った潤った。正直助かったよ。これなら当分は魔力を気にする必要もない。」

 予想以上の成果に自分の体内で循環できる量を超えて、少しは手持ちの機械(アーティファクト)に供給できた。

 アマニの連中はサービス精神旺盛で助かる。

 そんな優しい相手はどうやら意気消沈している様子。

 それもそのはず。自分の持っていた機械(アーティファクト)の魔力を殆ど奪われ、抵抗する手段を無くすと共に、奪われた魔力によって宙に縛られ吊るされているんだから。

「こんな屈辱、くっ殺せ!!」

 屈辱感に耐えられなくなったのだろうか。

 今にも憤慨しそうな顔をしながら、とどめを刺して欲しいと要求している。

「殺さないよ。殺したくもないし。...それよりも君初顔だよね。アマニってまだ人材育成してるんだ。」

 最初、私の姿も見えてたはずなのに彼女を狙った時から不思議に思っていたが、相手がまさか私のことも知らない新人さんだったとは。

 途中からは私が魔女だって気付いていたらしいけど...

「可愛い新人さんにはきっちり学んで貰わないとねぇ...。私の恐ろしさってやつを...。」

 見えている手指をくねくねさせ、身動きの出来ない少女へゆっくりと近付く。

「やめろ、よせ!!な、なにをするんだ!!!」

 足をばたつかせ、身じろぎをしているが生憎私の拘束はそんなものでは解けやしない。

「やめてよ~。そんな顔されたら虐めたくなっちゃうじゃーーん!!」


「い、いやーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」





「....何したんですか。」

「それは言えないなー。その小説が官能小説になっちゃう。」

「ホントに何したんですか!??!?」

 どうやらアサは相手に対しある意味で容赦しなかったらしい。

 私が見た限りでは怪我を負っている様には見えなかったが、お相手様にはご愁傷様と言わざる負えない。

「....あれ、そういえば私と同じ戦い方したんですね。」

「同じ?」

「私もあの膜で攻撃を往なしたんですよ。治してもらった怪我もその時出来たものです。」

 私は斧に、アサは矢に対し潤滑する性質を利用していた。

 それ以外にも、振り返ってみれば今回はあの魔法がひたすら活躍している。

「あれってアサが改良した魔法なんですよね。実際はどんな魔法だったんですか?」

 単に気になったというのもあるが、私は名称に困っていた。

 小説にするなら魔法にもある程度呼び名が必要になる。

 膜の魔法では全ての性能が分かりにくいし、かといって見掛けではそれ以外に情報がない。

「ん?あーあれはねぇ....」

 外界からの衝撃を和らげ、熱の大半を遮断し、表面は潤滑する。

 多くの能力があり、汎用性に長けた魔法だ。

 基は一体どんな魔法だったのだろう。


「避妊魔法。」


「...え?」

「本番前に使って、子供が出来ない様に...あ、火の中に入った時にあれ回転したでしょ。実はあれって相手を喜ばせる為の————」

「あああああああああもういいです聞きたくないです!!官能なんですね!もう今回は官能章なんですね!!」

「呼び名で悩んでるな『全身コンド────」

「黙ってーーー!!!!!!」

 あの魔法の名称は『膜の魔法』で決定した。

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