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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第四章

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決めなかった責任

決めなかった責任は、

決断を放棄した責任とは違う。

選択肢を捨てず、

保留したまま抱え続ける重さだ。


朝の天象庁は、

静かすぎた。

昨日の異常値は、

どの報告書にも赤字で残っている。

だが、

追記はない。


「……何も、

 起きなかったですね……。」

リュミが言う。


「起きなかったことも、

 出来事だ。」

ソーマはページをめくる。

「しかも、

 説明しづらい。」


説明できない出来事は、

不安を呼ぶ。

人は、

原因が分からない状態に、

耐えられない。


午前中、

外部監査局から連絡が入った。

簡潔な文面。

昨日の判断について、

経緯の提出を求める内容だ。


「来ましたね。」

セシリアは淡々としている。

「想定内?」


「当然だ。」

ソーマはうなずく。

「動かない判断は、

 一番質問される。」


「でも、

 正解だった可能性も……。」

リュミが言いかけて、

言葉を止める。


「正解かどうかは、

 まだ分からない。」

ソーマは否定しない。

「分からないまま、

 引き受けるのが責任だ。」


午後、

監視室で小さな衝突があった。

若手の観測員が、

声を荒げる。


「何かあったら、

 どうするんですか!」

「その時に、

 動けばいい。」

落ち着いた声で、

ソーマは答える。


「でも……!」

「今動いて、

 壊す可能性もある。」


沈黙。

誰も反論できないが、

納得もしていない。


責任とは、

全員を納得させることではない。

不満を含んだまま、

判断を置くことだ。


夕刻、

再び歪みが出た。

昨日より小さい。

継続もない。


「……同じですね……。」

リュミが画面を見る。


「同じに見えるだけだ。」

ソーマは言う。

「昨日があったから、

 今日が比較できる。」


決めなかったことで、

基準が生まれる。

それは、

派手ではないが、

確実に積み上がる。


夜。

報告書を書き終え、

ソーマは署名する。

判断欄には、

短くこう記した。


――介入せず。

  観測継続。


それだけの言葉に、

今日一日の重さが、

凝縮されていた。


責任は、

未来で回収される。

良くても、

悪くても。


だが、

逃げなかったことだけは、

記録に残る。

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