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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第四章

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流れと共に立つ

流れと共に立つ、というのは、

進むことでも、止まることでもない。

同じ速度を選ぶ、ということだ。


外縁の外で起きている変化は、目立たない。

音もなく、光もなく、数値も大きくは振れない。

だが、位置だけが確実に移ろっている。


ソーマは、観測点を一つ増やした。

増やしたと言っても、杭を立てたわけではない。

人の来ない高台に、ただ座る時間を設けただけだ。


「……何もしてないように見えるわね。」

セシリアが言う。


「している。」

ソーマは答える。

「同じ場所に居続ける、という行為を。」


流れは、動くものを避ける。

だが、動かないものには寄り添う。

それが障害でも、導きでもない時、

流れは“基準”として扱う。


ガルムは、少し離れた位置で周囲を見張る。

剣も斧も構えない。

必要にならない距離を保つ。


昼過ぎ、外縁の霧が、再び現れた。

昨日とは違う形。

細く、長く、引き伸ばされたような帯。


「……追い越していく。」

セシリアが確認する。

「私たちの位置を、基準にしてる。」


「それでいい。」

ソーマは立ち上がらない。

「追い越されるなら、

 同じ速度で立てている証拠だ。」


リュミが、そっと息を整える。

「……空は……

 急いでいません……。」

「……急がせない……

 存在が……

 必要でした……。」


夕方、霧は外へ流れ去った。

溜まらない。

戻らない。

だが、消えもしない。


天象庁に戻ると、報告は短く済んだ。

新たな異常なし。

位置の変化のみ。

影響なし。


「……評価しづらいわね。」

セシリアが苦笑する。


「評価しない。」

ソーマは即答した。

「評価は、意味を与える。」

「今は、意味を与えない方がいい。」


夜。

屋上。


王都の灯りは、変わらない。

外縁の外も、暗いままだ。

だが、その暗さは、昨日より重くない。


ガルムが言う。

「流れと立つってのは、

 案外、疲れるな。」


「動かないからな。」

ソーマは答えた。

「判断を、先送りにし続ける。」


リュミが、静かに微笑む。

「……でも……

 空は……

 楽そうです……。」


流れと共に立つという選択は、

成果が見えにくい。

称賛もされにくい。

だが、壊れにくい。


世界が自分で進むための、

余白を保つ行為だからだ。


次に起きる変化は、

もっと分かりやすい形を取るかもしれない。

だが、その時も、

同じ速度で立てるかどうか。


それが、次の試金石になる。

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