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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第四章

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閉じない選択

閉じる、という選択は分かりやすい。

線を引き、入口を塞ぎ、理由を与える。

それだけで、人は安心する。


だが、閉じた瞬間に、流れは別の出口を探し始める。

それが見えない場所で起きるなら、なおさらだ。


外縁の外で起きた“遅れ”は、一度きりで収まった。

だが、収束ではない。

形を変え、位置を変え、確かに動き続けている。


「封鎖の提案が来てる。」

セシリアが、評議会からの通達を机に置いた。

「外縁の外側一帯を、暫定的に立ち入り禁止。」

「理由は……安全確保。」


ガルムが眉をひそめる。

「来たな。」


「来るのは分かっていた。」

ソーマは通達から目を離さない。

「閉じると、説明できるからな。」


説明できる対策は、通りやすい。

だが、今回それを選べば、

流れは“閉じられた”という意味を持つ。


「閉じれば、外は溜まる。」

ソーマは言った。

「溜まれば、次は押し返す。」

「押し返された先は、内側だ。」


リュミが静かに首を振る。

「……閉じると……

 空は……

 抵抗します……。」

「……今は……

 通りたい……

 だけです……。」


午後、評議会での非公式な協議。

賛成は多い。

反対は少ない。

反対理由は、どれも抽象的だ。


「被害が出ていない今こそ、

 予防的に塞ぐべきだ。」


「説明責任を果たすためには、

 目に見える措置が必要だ。」


その理屈は正しい。

正しいからこそ、危険でもある。


ソーマは、発言を求めた。

声は荒げない。

資料も出さない。


「閉じない、という選択もあります。」


場が静まる。


「封鎖は、問題を解決しません。」

「問題の位置を変えるだけです。」

「今、外で起きている遅れは、

 内側では処理しきれません。」


誰かが言う。

「では、何もしないのか。」


「何もしないのではありません。」

ソーマははっきり答えた。

「閉じないまま、付き合う。」

「流れを追い、形を変えさせ、

 溜めさせない。」


理解は、すぐには得られない。

だが、否定もしきれない。


議長が、短く言った。

「暫定的に、封鎖は見送る。」

「ただし、監視は強化する。」


それで十分だった。

閉じなかった。

それだけで、選択肢は残る。


夜。

屋上。


外縁の外は、暗い。

だが、動いている。


ガルムが言う。

「閉じないってのは、

 覚悟がいるな。」


「閉じる方が、

 楽な時も多い。」

ソーマは答える。

「だが、楽な選択は、

 後で高くつく。」


セシリアが、遠くを見る。

「流れは、どこへ行くの?」


「行きたい場所へ。」

ソーマは即答した。

「ただし、

 壊れにくい場所へ。」


リュミが、空を見上げる。

「……空は……

 感謝しています……。」

「……閉じられなかった……

 ことに……。」


閉じない選択は、勝利ではない。

ただの先送りでもない。

世界に考える時間を与えただけだ。


だが、その時間の使い方次第で、

次の災厄にも、次の救いにもなる。


外へ向かう流れは、まだ続く。

それを見失わず、

追い立てず、

閉じ込めず。


人の側ができるのは、

それだけだ。

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