表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

175/207

外側の静寂が破れる時

静寂は、破れる前に兆しを出す。

だがその兆しは、音でも光でもない。

遅れとして現れる。


外縁のさらに外。

朝霧は、昨日より薄かった。

消えたわけではない。

ただ、戻ってこなかった。


「……引き潮みたいね。」

セシリアが、前日の記録と重ねて言う。

「来る時より、去る時の方が速い。」


ソーマは首を振る。

「引いてはいない。」

「移った。」


霧が留まっていた場所には、空白が残る。

数値は平常。

風も通る。

だが、空間の“反応”が鈍い。


ガルムが石を蹴る。

石は転がる。

音は返る。

だが、地面が受け取るまでに、わずかな間がある。


「……遅ぇな。」


「遅れが、広がっている。」

ソーマは言った。

「一点じゃない。」

「面だ。」


昼前、外縁の複数地点で同様の報告が上がる。

霧ではない。

風でもない。

だが、出来事の順序が乱れる。


扉を閉めた後に、風が入る。

足を踏み出してから、音が鳴る。

小さな違和感。

だが、積み重なると危険だ。


リュミが、はっきりと告げた。

「……静寂が……

 限界に……

 触れています……。」

「……溜めなかった分……

 逃げ続けた分……

 今……

 “出力”が……

 始まります……。」


出力。

溜めなかった反動。

通過点が、通過しきれなくなった合図だ。


ソーマは即座に判断した。

止めない。

囲わない。

だが、人を近づけない。


「外縁の外、

 本日中は立ち入りを避けさせる。」

「理由は説明しない。」

「“整備中”でいい。」


セシリアが即座に動く。

ガルムは外周に回る。

強制はしない。

ただ、理由を作らせない。


午後、遅れは一度だけ強く出た。

空気が、半拍止まる。

音が追いつかない。

それだけだ。


被害はない。

倒れる者もいない。

だが、もし人が多ければ違った。


夕方、霧は別の場所に現れた。

同じ形ではない。

薄く、長く、移動し続ける。


「……静寂が……

 割れた……

 というより……

 動き始めました……。」

リュミの声は落ち着いている。


ソーマは頷いた。

「外は、静止を保てない。」

「だから、動かすしかない。」


夜。

屋上。


王都の灯りは、相変わらず境界の内側にある。

外側は暗い。

だが、完全な闇ではなくなった。


ガルムが言う。

「外は、もう無関係じゃねぇな。」


「最初から無関係じゃない。」

ソーマは答える。

「ただ、見えなかっただけだ。」


セシリアが静かに言う。

「管理できないものが、

 管理の外で成長した。」


「成長じゃない。」

ソーマは否定する。

「循環に戻ろうとしている。」


リュミが空を仰ぐ。

「……空は……

 閉じたくない……

 と言っています……。」

「……流れたまま……

 で……

 いたい……。」


外側の静寂は、破れた。

だがそれは、崩壊ではない。

次の段階への移行だ。


問題は、この動きを

内側がどう受け止めるか。

閉じるのか。

流すのか。

それとも、見送るのか。


選択は、また人の側に戻ってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ