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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第四章

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見えない位置からの異変

離れると、見えなくなるものがある。

だが同時に、近すぎた時には輪郭を失っていた歪みが、はっきり浮かび上がる。


街道から一段外れた観測点。

丘の影に設けた簡易拠点で、ソーマは風の流れを確かめていた。

数値は穏やかだ。

だが、昨日までと違い、揺れの順序が変わっている。


「……先に、外が動いてる。」

ソーマは低く言った。


セシリアが端末を覗き込む。

「中心じゃなく、周縁から?」

「それ、今までと逆よ。」


「近い位置で見てた時は、中心ばかり追っていた。」

ソーマは頷く。

「離れたから、先に波紋が見えた。」


波紋は小さい。

街道の人の流れが変わる前に、

丘陵のさらに外側、名もない草地で空気の密度が揺れている。


ガルムが周囲を見回す。

「人はいねぇな。」

「なのに、動いてる。」


「人がいないからだ。」

ソーマは答える。

「意味が、付いていない場所だから、

 流れが素直に出る。」


午後、リュミが静かに歩み寄った。

彼女は街道を見ない。

丘も見ない。

もっと外、王都から遠い方向に意識を向けている。


「……ここから……

 外へ……

 引かれています……。」

「……強くは……ありません……。」

「……でも……

 続いています……。」


続いている。

それは、偶然ではない。


ソーマは地図に、新しい印を打った。

これまでの線とは違う、細い点線だ。

街道とも、南の低地とも、丘陵とも直接は繋がらない。

だが、確実にその外側へ向かっている。


「流れが、世界の端を探してる。」

ソーマは言った。

「受け皿を増やしたことで、

 今度は“さらに外”が選ばれた。」


セシリアが眉を寄せる。

「……それ、止めるべき?」


「止めない。」

ソーマは首を振る。

「今は、まだ重くない。」

「むしろ、抜け道として機能している。」


だが、抜け道は使われ続ければ道になる。

道になれば、意味が宿る。

意味が宿れば、人が来る。


夕方、測候院からの連絡が重なる。

王都北方の外縁近く。

ごく小さな数値のズレ。

だが、向きが一致している。


「……繋がった。」

セシリアが静かに言う。


「完全ではない。」

ソーマは慎重だった。

「だが、線は引ける。」


夜。

屋上。


王都の灯りは遠い。

代わりに、暗闇の広がりが目に入る。


ガルムが言った。

「離れたことで、

 やべぇもんが見えたな。」


「やばいかどうかは、まだ分からない。」

ソーマは答える。

「だが、見えなかったものが見えた。」


リュミが、空を仰ぐ。

「……空は……

 出口を……

 探しています……。」

「……塞がれる前に……

 流れたい……と……。」


距離を置いたからこそ、

流れが次に向かう場所が見えた。


問題は、

この先に人が関わる前に、

どこまで準備できるかだ。


離れた位置からの観測は、

猶予を与える。

だが、その猶予は短い。

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