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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第四章

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戻れた理由

戻れたのは、偶然ではない。

だが必然でもない。

幾つかの要因が、たまたま同時に噛み合っただけだ。


翌朝、天象庁の会議室。

昨日の街道の件は、簡潔に共有された。

誰も誇らない。

誰も反省会にもしない。

ただ、事実だけが並べられる。


「露店が一つだった。」

セシリアが最初に言った。

「複数出ていたら、滞留は止められなかった。」


ガルムが頷く。

「声をかけたのが、

 商売人本人だったのも大きい。」

「命令じゃなく、区切りになった。」


ソーマは、窓の外を見たまま口を開く。

「一番大きいのは、理由が分散していたことだ。」

「集まった理由が一つじゃなかった。」

「だから、一つ潰せば流れが崩れた。」


人は、理由が一本だと固まる。

だが、理由がばらばらだと、散るのも早い。


リュミが、静かに補足する。

「……空も……

 一気に……

 抱えなくて……

 済みました……。」

「……重なりが……

 浅かったです……。」


浅かった重なり。

それが、戻れた境界線だった。


昼前、街道の様子を再確認する。

人の数は平常。

露店もない。

昨日の痕跡は、ほとんど残っていない。


だが、ソーマは油断しなかった。

痕跡が消えたこと自体が、学習を示している。


「……次は、理由が洗練される。」

ソーマは低く言う。

「集まる人は減る。」

「その代わり、残る理由は強くなる。」


セシリアが眉を寄せる。

「信者化、みたいな?」


「近い。」

ソーマは頷く。

「場所に意味を見出す人間が出る。」

「意味は、数より粘る。」


午後、測候院からの追加情報。

街道周辺で、同じ時間帯に通行が増える傾向。

曜日と時刻が、少しずつ揃い始めている。


「……習慣になる。」

ガルムが言う。


「習慣は、管理より強い。」

ソーマは答えた。

「止めると反発を生む。」


屋上。

リュミが風を感じながら言う。

「……戻れた理由は……

 人と空が……

 まだ……

 互いを……

 信用していなかったから……。」


ソーマは、その言葉を噛みしめる。

信用は、距離を縮める。

だが同時に、依存も生む。


「次は、信用が芽生える。」

ソーマは静かに言った。

「それ自体は、悪くない。」

「だが、境界が曖昧になる。」


戻れた理由は、

まだ深く踏み込んでいなかったからだ。

まだ、戻る道を覚えていたからだ。


だが、同じ場所で、

同じ人間が、

同じ感覚を繰り返せば。


戻る道は、少しずつ細くなる。

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