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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第四章

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逃げ道の先

逃げ道は、必ずどこかに繋がっている。

問題は、その先が受け止められる場所かどうかだ。


南の低地から伸びる流れを追うため、ソーマたちは王都の外へ向かった。

地図上では、緩やかな線だ。

だが実地で辿ると、流れは見えない段差をいくつも越えている。


「……地形じゃない。」

セシリアは、測定具を確認しながら言った。

「高さも、霊脈も、連続していない。」


「連続してないのに、続いてる。」

ガルムが前を歩きながら応じる。

「気持ち悪いな。」


道は、やがて人の手が入っていない丘陵に出た。

木々はまばらで、風は通る。

だが、音が薄い。

鳥の声が遠く、葉擦れも控えめだ。


リュミが足を止める。

「……ここ……です……。」

「……溜まっています……。」


見た目に異常はない。

だが、空気が重なっている。

押される感覚ではなく、包まれる感覚だ。


ソーマは、地面に指を当てた。

冷たくも熱くもない。

ただ、反応が遅れる。


「南の低地で逃がされた分が、ここで滞留してる。」

ソーマは静かに言った。

「流れは、完全には消えていない。」


セシリアが周囲を測る。

「……緩衝じゃない。」

「……貯留。」

「溜めて、薄めて、時間を稼ぐ仕組み。」


ガルムが唸る。

「耐久試験場みてぇな場所だな。」


その言葉に、誰も笑わなかった。

耐久には、限界がある。


午後、さらに奥へ進む。

丘の影に、古い石積みが見えた。

人為的だが、使われていない。

記録にも残っていない。


「……昔、ここを知ってた人間がいる。」

ソーマは石に触れながら言った。

「そして、使わなくなった。」


リュミが小さく息を吐く。

「……空は……覚えています……。」

「……でも……名前は……失っています……。」


名前を失った場所。

それは、管理から外れたという意味だ。


夕方、簡易観測を終えて引き返す。

数値は、危険域の一歩手前。

急激ではない。

だが、確実に積み上がっている。


セシリアが、帰路で言った。

「……このまま放置すれば……

 いつか、溢れる。」


「溢れ方が問題だ。」

ソーマは答える。

「一気か、滲み出すか。」


ガルムが振り返る。

「どっちも、ろくでもねぇ。」


夜、天象庁。

報告は最小限にまとめられた。

新しい危険を公表すれば、人が集まる。

集まれば、条件が一気に崩れる。


ソーマは、机に地図を広げたまま動かない。

逃げ道は見つけた。

だが、それを塞げば、元の場所が壊れる。


「……次は……選ばないと……いけません……。」

リュミが、背後で言った。

「……流すか……止めるか……。」


ソーマは、ゆっくり息を吐いた。

どちらも正解になり得る。

どちらも、失敗になり得る。


逃げ道の先は見えた。

次に問われるのは、

誰が、どこで、重さを引き受けるのかだ。

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