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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第四章

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静かな成功

成功は、気づかれないほど良い。

拍手も、称賛もない。

あるのは、何も起きなかったという事実だけだ。


外縁部の朝は、昨日と変わらない。

草地は静かで、露店はなく、人の影もまばらだった。

掲示に書かれた十五分という数字は、誰にも強制していない。

それでも、人は自然に去っていく。


天象庁の報告書は短くなった。

人数、滞在時間、気象値。

傾向は下向き。

危険域からは、明確に遠ざかっている。


セシリアが紙を置く。

「……成功、ね。」

「誰も褒めないタイプの。」


ガルムが鼻を鳴らす。

「褒められねぇ方が、後腐れがねぇ。」


ソーマは頷いた。

「注目されないのが、一番の成果だ。」

「名前も、物語も、増えていない。」


昼前、評議会から簡潔な通知が届く。

追加の介入は不要。

現状維持。

次回報告は週単位。


それは承認ではない。

だが、追及でもなかった。

静かな棚上げ。

今は、それで十分だった。


午後、外縁部の観測点で、若い職員が言った。

「……何も起きないと……

 やってる感じが……

 しないですね……。」


ソーマは答えた。

「起きないようにする仕事は、起きてからより難しい。」

「だから、感じがしない。」


リュミが空を見上げる。

「……空は……楽です……。」

「……押されても……引かれても……いません……。」


その言葉が、何よりの評価だった。


夕方、王都に戻る。

市場は賑やかで、噂話は別の話題に移っている。

外縁部の名前は出ない。

安心を売る声も、居場所を失った。


屋上で、四人は並んで街を見下ろした。

ソーマは言う。

「この成功は、残らない。」

「だから、次に使えない。」


セシリアが肩をすくめる。

「……再現性ゼロね。」


「それでいい。」

ガルムが答える。

「毎回、別のやり方でいい。」


ソーマは、夜風を受けながら思う。

静かな成功は、世界を少しだけ軽くする。

だが、同時に次の問いを呼ぶ。


何も起きなかったことを、

どうやって続けるのか。

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