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異世界に来たのに、俺だけ「前世の天気予報」が聞こえる  作者: キュラス
第四章

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条件が牙を剥く

条件は、守られている間は味方だ。

だが、満たされた瞬間、牙を剥く。


承認から一夜明けた王都は、奇妙な落ち着きを見せていた。

名前は与えられていない。

だが「条件付き」という言葉が、別の安心を生み始めている。


「条件があるなら、大丈夫なんだろ。」

「越えなければ、問題にならない。」


人は境界線が好きだ。

線が引かれれば、その内側で気を抜けるからだ。


天象庁の朝会。

ソーマは最初に、外縁部の地図を広げた。

印は増えている。

線は、まだ引かれていない。


「……人の立ち入りが増えた場合、性質が変わる。」

「……初期干渉は固定化を招く。」

「……危険域に達した場合は即時介入。」


セシリアが言う。

「条件を示したことで、人は条件を試す。」


ガルムが頷く。

「越えなきゃセーフ、ってやつだ。」


午前中、外縁部からの報告が立て続けに届いた。

見物人の数が、昨日の倍。

商人が臨時の露店を出し、子どもが走り回る。

危険域には入っていない。

だが、条件の一つ目に、確実に近づいている。


リュミが、足を止めて言った。

「……空が……重なっています……。」

「……一人分なら……耐えられる……。」

「……十人分で……揺れる……。」


ソーマは、地図に新しい印を打った。

線は、引かない。

だが、数は数える。


昼過ぎ。

評議会から連絡。

内容は簡潔だった。


「現地の人出は、条件違反に該当するか。」


その問いは、刃だった。

条件を守るために作った条件が、判断を迫る。


ソーマは、即答しなかった。

代わりに、現地の数値と写真を添えて返す。


「現時点では、該当しない。」

「ただし、増加傾向は確認されている。」

「本日中に対策が必要。」


返答は慎重だった。

だが、逃げてはいない。


午後、ソーマは現地に向かった。

露店の前で、立ち止まり、声をかける。


「ここは、長居する場所ではありません。」

「今日のうちに、店じまいを。」


反発は出た。

だが、怒号はなかった。

理由を説明しすぎない。

数字と時間だけを示す。


「夕刻まで。」

「それ以上は、条件に触れます。」


条件という言葉は、効いた。

人は、決められた枠に従う。


夕方。

人出は減った。

露店も畳まれた。

条件は、守られた。


だが、リュミが小さく首を振る。

「……空が……覚えました……。」

「……今日の……重さを……。」


ソーマは、その言葉の意味を理解した。

条件は守られた。

だが、世界は学習した。


夜、屋上。

風は弱い。

だが、静かではない。


セシリアが言う。

「条件は、盾になる。」

「同時に、的にもなる。」


ガルムが低く笑う。

「次は、意図的に越えに来るな。」


ソーマは、王都の灯りを見下ろした。

条件は守った。

だが、牙は確かに見えた。


条件は、満たされるために存在する。

満たされた瞬間、次の段階が始まる。


その時、同じ選択は通用しない。

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