物件を決めよう!
いつも読んで下さり、誠にありがとうございます。
執筆が終わりましたのでUP致します。
お楽しみ頂ければ幸いです。
片付けが終わると、サーラとフェイは商業ギルドへ出かけて行った。
今日も打つんだろうな。
ちょっとうらやましかったが、こちらも大事な用事があるのだ。
【ルイス、ナナリー。家と土地を見に行くから付き合ってくれるかな?】
「分かったわ、貴方。」
「はい、楽しみですね、ルイスさんー。」
「そうですね、ナナリーさん。」
女将さんに言って三人で出かける。
この三人で出かけるのは久しぶりだな。
レヴィアさんは銀行へ仕事に向かい、アセディアは部屋でゴロゴロしているみたいだ。
さて、現、男爵様の館、どんな所なんだろうな。
「この三人で外出なんて久しぶりね、でもどんな所なんでしょうかー?」
【男爵邸は北通りの北東にあるって・・・。】
「北通りはここだけど・・・?」
「この通り沿いで男爵家だと、ネルソン男爵でしょうかー?」
「流石、ナナリーさんね。」
【とりあえずそのネルソン男爵邸に行ってみようか。】
三人で通りを歩く。
この三人だと初めてナナリーさんが来た時の事を思い出す。
まだ焼野原だったんだよな・・・。
そう、大分だが、復興はして来た。
だが、まだまだ元のようになるのは時間がかかるだろう。
王都だって他の領地だってバルロンデーモンに蹂躙されて大変なはずだ。
オーカム領だけ復興の速度が速いのは皆が頑張ったおかげだ。
それにノモスの支援があったからだろう。
俺はちょっとだけ、ほんのちょっとだけ関わっただけだ。
「ヘファ君、何か考えてますねー?」
【ああ、ナナリーと歩くのが久しぶりだったなと思ってね。】
「気を使ってくれているのは嬉しいですー。」
「あの御屋敷かしらね?」
【貴族様の屋敷と言う感じがしないね・・・。】
「そうですね、ネルソン様はコリダロス家の三代目でしたが、あの襲撃で息子様を失くされていますー。」
【爺さんにはそう聞いてるね。】
「いきなりお伺いして失礼ではないかしら?」
【爺さんが話を通してくれてるはずだから、大丈夫じゃないかな?】
そんな事を話しながら北通りを北に進んで行く。
目当ての御屋敷に着いたのだろうか?
それなりに大きい屋敷だ。
「ねえ、手土産の一つでも持って来るべきだったんじゃないかしら?」
【ああ、それなら、この間作ったプリンがあるから包んでおくよ。ナナリー手伝ってくれる?】
「それではお手伝いしますねー。」
風呂敷の上に洒落っ気のある木の板を作りその上にプリンを置く。
【六個もあれば十分かな?】
「大丈夫だと思いますよー。」
「これで遠慮なくお話が出来るわね。」
玄関らしき入り口に着くとドアノッカーを叩く。
ゴン!ゴンッ!
しばらくするとお手伝いさんだろうか、出て来てくれた。
飾りっ気のない服を着た少々御年配の方だった。
「おや、坊ちゃん達、何か御用かね?」
【突然の訪問を申し訳ございません。オーカム大公様からの件で参りました。御主人はいらっしゃいますでしょうか?】
「これは御丁寧に、旦那様は居間でお茶を楽しまれてございます。伺ってまいりますね。」
【御主人様には、突然の訪問をした事を御許し下さるようにお伝え頂きたい。】
「伝えてまいりますので、少々お待ち下さいな。」
そう言うとその女性は下がって行った。
【ナナリーさん、今の方は御婦人じゃないですよね?】
「確か正室の、ミレイ様は息子様の訃報を聞いて寝たきりにおなりだったはずですねー。」
【そうですか・・・。】
しばらく待っていると思ったよりも若い男性が対応してくれた。
「これはこれは、コリダロス家へようこそ、大公様から話は聞いております。私は当主のネルソンと申します、尊爵様。」
玄関で跪いて来るのを止める。
【ネルソン様、位は違えども俺は若輩です。御立ちになって下さい。】
そう言って立ち上がらせる。
「ありがとうございます、尊爵様。失礼ながら尊爵様の『姓』を伺いした事が無く・・・失礼を。」
「「【あ!】」」
「い、いかがなされました?」
【い、いえ。尊爵を賜ってから日が浅く、姓を決めておりませんでした。こちらこそ失礼を致しました。】
「お若いのにその心配り、なかなか出来る物ではございませんな?」
ネルソン様はそう言うと屋敷内へと案内して下さった。
居間に着くとソファーを勧められる。
座る前に二人の紹介をした方が良いだろうか?
貴族様の習慣なんて俺は知らないんだよね。
元はただの平民だし・・・。
【失礼をして、紹介をさせて頂きますね、十八日に結婚式を挙げる妻のルイスです。】
「ルイスと申します、よろしくお願い致します。」
【こちらが、婚約者のナナリーでございます。】
「男爵様におかれては、突然の訪問におかれましての御対応、ありがとうございますー。」
「これは御丁寧に、私が現当主、『ネルソン・フォン・コリダロス』と申します。ネルソンと呼んで頂いて結構でございます。さあ、腰を掛けて下さい。」
【それでは、失礼致します。】
「「失礼致します。」」
そう申し上げてから三人でソファーに腰を掛ける。
【ネルソン男爵、挨拶代わりにこちらをお受け取り下さい。】
「これは?」
【プリンと言うデザートです。手土産になればと思いまして。】
「これは、御丁寧に。有難く頂戴させていただきます。」
手土産は良かったようだ。
思ったよりも喜んでくれた。
「雰囲気がある良いお屋敷ですね。」
「そうですね、改装しても十分に使えると思いますー。」
「ええ、お店にして使って頂けると伯爵様から聞いております。」
【はい、その通りです。ポーション、武具の販売などですね。】
「・・・尊爵様に使われるのであれば、家族も安心出来る事でしょう。」
「思い入れのある御屋敷なんですね、大事に使わせて頂きます。」
「ネルソン様からは何かございませんかー?」
「いえ、特にはございません。」
【新区画の御屋敷にはいつ引っ越しを?】
「屋敷は建っておりますので、三日程頂ければありがたく。」
「ネルソン様、急がせるような事は致しませんわ。」
「そうです、ごゆっくりして頂いて結構ですよー。」
「いえ、尊爵様ほどの方が我が家を店にして下さるのです。出来る限り速やかに屋敷をお任せ致します。」
【有難い申し入れですが、本当によろしいのですか?】
「はい、妻も家を見ていると亡き息子の事を思い出してしまうようで・・・。」
【かしこまりました、大切に使わせて頂きますね。建物を見せて頂いても?】
「大丈夫でございますよ。」
【それでは、失礼して・・・。】
「「失礼致しますね、ネルソン様。」」
ルイスとナナリーもついて来た。
建物は三階建てのようだった。
うん、良い場所だね。
そこまで古い建物ではないのだろう、建付けも悪くはない。
北通りに向かって入り口があるのもポイントが高い。
一階の中央の部屋に玄関があるので、室内の壁を抜いて広く使おう。
それで、ポーションを置いて、会計カウンターを付ける。
左右も壁を壊して武器と防具を並べよう。
広々と使える為、間取りも悪くない。
ざっと一階を見て回り、次は二階に向かう。
ここには執務室、応接室に工場を作る。
本当は一階に工場が欲しかったんだけれど、広いスペースを店の部分にしたかったので仕方がない。
問題として、工場を作るにあたって床を補強しなければならない事かな。
そして三階。
ここは職員の部屋として回したい。
更衣室、社長室、休憩室、そして医務室に仮眠室。
三階は間取りを変えなくても良さそうだ。
各部屋に鍵を付けるぐらいだろう。
一通り見て二人も満足したのだろうか。
キラキラした目で「こんな御屋敷がお店に・・・。」とか言っている。
まだまだ、最初の一歩だからね、二人共。
一部屋だけ奥様が眠っていらっしゃると言う部屋があったので見学は遠慮しておいた。
俺達は満足して一階に戻る。
【ネルソン様、大変に良い物件でございますね。】
「左様でございますか、ヘファイストス様。」
【これで大公様の言われていた値段とは・・・。】
「はい、お値段は大公様に申し上げた通りで結構でございます。」
【では、こちらの袋をお受け取り下さい。】
俺はそう言って金貨の入った革袋をネルソン様にお渡しする。
革袋の重さをおかしいと思ったネルソン様は中身を確認する。
机の上を見ると譲渡の書類が置かれている。
皆でその書類の内容を見る。
うん、家紋の押印もあるし問題はないね。
「尊爵様、これは多すぎます。」
慌てて返そうとするネルソン様に言う。
【いえ、奥方様の事を大切になさって下さい。そして、この屋敷の事はお任せ下さい。必ずや立派な店にして御覧に入れます。】
「・・・お心遣い、誠にありがとうございます、ヘファイストス様。」
【いえ、これも『アリステリア様』の御導きでありましょう。】
俺がそう言うとネルソン様は落ち着いたのか肩の力を抜いたようだ。
受け渡しが無事に出来て落ち着いたのだろう。
お子様との思い出のたくさん詰まった屋敷だしね。
・・・大切に使おう。
「では、三日後に正式な受け渡しと言う事でよろしいですな?」
【構いません、書類の御用意もありがとうごさいます。】
「いえいえ、大した手間は使っておりませんよ、お気になさらないで下さい。」
【それではネルソン様、三日後に改めて伺いますね。】
「ありがとうございます、ネルソン様。大切に使わせて頂きます。」
「ふふ、ヘファ君の夢が叶うのね。ネルソン様、ありがとうございますー。」
「いえいえ、こちらこそ。」
【では、今日の所は、これで失礼させて頂きますね。】
「「ネルソン様、失礼させて頂きます。」」
ネルソン様の見送りを受けて次の場所へと向かう。
そう、社員寮の場所である。
御店の北側が爺さんの言っていた場所だろうか。
焼野原なので土台から作るしかない。
北街はまだこのような所があるらしくあの事件の事を思い出してしまう。
【人を回して土地の確保をしましょう。それから土台を作って・・・。】
「まだ、北街にはこういう場所があるのね・・・。」
「・・・早く復興させたいですねー。」
ナナリーの肩が震えている。
多分だが襲撃の事を思い出しているのだろう。
悪魔共め、俺の女の心に消えない傷をつけやがって・・・。
その肩に手を添えて言う。
【大丈夫だよ、ナナリー。もうあんな事は起こらない、いや・・・起こさせないよ。】
「ヘファ君、ありがとうー。」
その肩に置いた手を握り返してくれる。
【ナナリーは優しいね。俺も北街の復興を頑張って手伝うよ。】
「ヘファ君、頑張って下さいねー。」
そう言ってキスをしてくれた。
うん、やる気が出て来たぞ!
近いうちに土台を作って早い所、寮を完成させよう。
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それでは、次話 婚約指輪と結婚指輪(仮 で、お会い致しましょう!
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