表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲームで伝説の鍛冶師だった、元アラフォーおっさんの異世界転移奮闘記  作者: Maya
第一幕 第一章:そして始まる異世界生活
13/317

初めての冒険

お待たせいたしました。

戦闘描写や多人数の会話の読ませ方、心の葛藤等迷いましたが書き終えました。

ヘファイストスの冒険をお楽しみください。


俺は街の西門から出て南西に向かう。


目指すは、鋼の産地と言うオーカム鉱山。

南西の鉱山町に「鋼の鉱石」を探しに向かっている所だ。

城門は身分証となる物を所持していると自由に出入り出来る。

南西の鉱山町に行けるのは、西門からだけ。

南門からだと湾があるので徒歩で行けるのは西門だけとなるのだ。


情報だとこちらには『エティン』や『オーガ』等の危険なモンスターがいるらしいので、念の為に自作の鋼のロングソードを腰に着けている。

もちろんハイクオリティーだ。

ルイス達にはキリの良い数でポーション等を売ってもらっているので、余った各ランクのポーションをバックパックに入れて持って来ている。


こちらも念の為だ。


鉱山に行くには、一応街道と呼ばれている道があるのでそれを歩いて行く。

のだが・・・。

さすがに真っすぐには整備されていないし舗装もされていない。

街道沿いに行くと大回りで時間を食ってしまう。

それなので雑貨屋で買ったコンパスを頼りに街道を無視して森の中を南西に向かう。


うーん、素人が藪や森の中を歩くのも時間がかかるのではないだろうか?


そう言えば地図が欲しかったんだよね。

忙しくて忘れていたよ。

たしか冒険者ギルドで売っているんだったかな?

落ち着いたら買いに行ってみよう。


しばらく森の中を進んでいると丁度お昼ぐらいだろうか?

森の中でも分かる様に太陽が頭上に見えてきた。


【ルイス達も今頃御飯かな?】


と、呟きつつ肉屋で買った干し肉を齧りながら移動する。

胡椒が効いて無いのでやはり味が違う。

()()()()()だけなのだ。

胡椒を探すのが良いかもね。


等と思いつつ、景色を楽しみ歩く。


ただの森と思う事なかれ!

こんなに美味しい空気なんか久しぶりだぞ。

なんでも目新しく感じてしまう。

このままのペースで行ければ今日中には鉱山に辿り着くだろうが・・・それに今日中に鉱石を掘っておきたいところだね。


うーん、時間を短縮したいので少し走るか。

と、思っていると微かだが金属等の打ち合う音が聞こえて来た。


カキンッ!


ドグオォッ!


これって・・・戦闘音?

戦闘と言えば勇ましい曲が鳴ってさー。

そう、あの曲が蘇る。

我が青春の〖ウルトラ・オンライン〗!


チャッチャラチャッチャラチャ~♪


いやいや、現実はこっちだぞ?

戻ってこーい!

ゲフン、ゲフン。


誰かが戦っているのだろうか?

気になったので音の方向へ走る。


【この辺りかな?】


そう思っていると森が少し開けた場所にちょっとした広場が見えて来た。

加勢が必要になった時に、大げさにされたくは無いので布からフード付きのマントを作る。

さすがのチートスキル、一分も経たずに出来上がった。


マントを着こみフードを目深に被ると『隠蔽スキル』を使い木陰から覗く。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「グオオオォォォッ!!!」


巨人が大声を上げて威嚇している。

あれが、エティンか?


そのモンスターを見るとあまりの()()()さに体が震える。


え!?

数分前の自信満々な俺に馬鹿と言ってやりたい。

あんな化け物と戦う!?

いやいや、俺にそんな事が出来るのか!?

転移したと言っても中身は喧嘩もした事の無いタダのおっさんだぞ!?


自惚れていた。


チート!?

ステータス!?

そんな物は関係ない。

何でこんな所へ来た!?


膝がガクガク震えて立ち上がる事が出来ない。


冒険者達に・・・加勢?

加勢が必要になる!?

馬鹿か?

お前ごときに、そんな事出来る訳が無いだろう!

此処から逃げ出したい!

冒険!?


そんな事は知らねえ!


大丈夫だ。

大丈夫さ。

きっとあの人達は自分達で何とかするさ!

ベテランなんだ!

そうさ!

き、きっと何とか・・・。

そうだよ、ベテランなんだから・・・。


考えがループして来た。

膝を抱え込み震える。

出て行く?

あの巨大な拳で殴られてお終いだ。

せっかく生き返ったのに?

もうお終いなのか?

あんな拳に潰される?

こ、こええよ・・・。

怖い、怖いよ・・・。


ふと昨日の事が頭に浮かんで来た。


『おまじないよ!』


ルイス!?


キスをされた頬を触りあの温もりを思い出す。

家族の事を考える。


リズ!


『お兄さんはアタシが付いてて上げないと駄目ね!』


ベス!


『ヘファさん・・・信じています・・・無事に・・・。』


マオ!


『ヘファさん!尻尾がブルブルってなったら逃げるんです!』


アリス!


『ヘファさん、美味しい物がお腹いっぱい食べたいのです!』



皆の顔が脳裏をよぎる。

そうだ!

俺は家族の元へ帰るんだ!


そう思うと、自然と震えが止まっていた。


いつの間にか流れていた涙を拭うと立ち上がる。

大丈夫だ、俺はやれるはずだ。

皆が付いている!

『アリステリア様』だって加護を下さったんだ!

心に冷静さが戻って来る。


【ありがとう、皆。『アリステリア様』、俺に立ち向かう勇気を。】


そう呟き戦いを見ると、もう迷いや恐れは無かった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


エティンは人間型モンスターで頭が二つある。


通常のエティンは二m五十cmぐらいなのだが、このエティンは体長が四m以上あるだろうか?

その怪物と冒険者らしき男女の四人が戦っていた。

棍棒?

いや、あの大きさはもう木材と言っても良いだろう。

それを握っていてリーチがすごく長い。


結構ダメージを与えていそうだが致命的な物は無い様だった。

リーチの長さに冒険者達は攻めあぐねている。

じりじりと冒険者達の方が不利な状況で戦いが進んで行く。

すると、前衛の盾を持ったタンク戦士がエティンの木材に跳ね飛ばされた。


「「「ジャスティン!」」」


他の三名から悲鳴が上がる。

タンクが耐えられなくなって戦線が崩れたのだろう。

ノックバックか?

ジャスティンと呼ばれたタンク戦士がこちらに転がって来る。

見ると被っていたヘルムが取れていて口の端から血を流している様だった。

代わりをする様に片手剣の戦士アタッカーが前に出る。


「後ろから何か来るんさ~!」


弓を構えている獣人の女性が声を上げると、後方から獣の呻く声が聞こえて来た。

呻き声のする方から『ティンバー・ウルフ』が六体出てきた。

血の匂いを感じ取って集まって来たのだろうか?


冒険者達は囲まれた形だ。

これは不味いと思い、隠蔽スキルを解き広場へ躍り出る。

タンク戦士に駆け寄り、上半身を抱え上げ無理やり高品質の中級回復ポーションを飲ませる。

意識はあるようなので声をかける。


【狼は任せて下さい。】


そう言ってティンバー・ウルフ達に挑発スキルを発動させる。


「「「狼共、こっちだ!」」」


「「「誰!?」」」


フードで顔を隠している俺は見るからに怪しいだろう。

俺は冒険者ではないし鉱山に鉱石を掘りに行くだけだからね。

それに今のところは正体を隠したい。

他のメンバーが怪しんでいると『ジャスティン』と呼ばれたタンク戦士が何事もなく起き上がって返事をして来る。


「分かりました、お任せ致します。」


そう言って「ポン。」と俺の肩を叩き、ジャスティンがエティンの方に向かった事で、他の冒険者達もエティンの方に向きなおる。


さてと・・・。


シュラン!


と、心地良い音を立ててロングソードを抜く・・・頼んだぜ相棒!


初の戦闘だ!


「「「こちらだ!かかってこい!」」」


さらに挑発スキルを使い、ティンバー・ウルフ達の注意を引く。


驚いた事に恐怖はまったく感じない。

むしろ初の実戦で高揚感が湧いて来る程だ。

先程までの震えが嘘の様だった。


そのままティンバー・ウルフに向かって走って行く。


数が多いが問題は無い。

一匹ずつ、確実に仕留める!

体が軽い!

思い通りに動く!


【まず一匹。】


首を斬り飛ばす。

返す剣で二匹目を葬り去る。

あっという間に、二頭を失った事で怯えたのだろうか?

動きの硬くなっているティンバー・ウルフ達に追い打ちをかける。


【三匹・・・四匹!次っ!】


次々と首を撥ねて行く。


一回り大きなティンバー・ウルフがいた。

コイツがリーダーだろうか?

だが問題はない。

振り返りざまに【五!】と言って斬り捨てる。


最後の一匹は逃げ出そうとしていたが難なく斬り伏せた。

六匹共、全て首を飛ばして倒した。

さすがの相棒ハイクオリティー

良い切れ味だ。

そしてスキルの強さを自覚する。


【必ず無事に帰るからね、皆!】


そう呟くと冒険者達の方を振り返る。

アタッカーの戦士がエティンの木材を持った右腕を斬り飛ばしている所だった。


【加勢はいりますか?】


声をかけるとジャスティンと呼ばれたタンク戦士から返事が来た。


「大丈夫です、貴方は座って休憩でもしてて下さい!」


そう言われたので広場に近づいて来る危険な生物がいないか『探知』のスキルを使って調べた。

どうやら近くに敵対生物はいないようだ。

冒険者達が奮戦していると、五分もしないうちにエティンが地面に倒れていた。


戦いが終わると獣人の女性が「探知」と言ってスキルを使っている。

全員が肩で息をしている。


「もう大丈夫なんさ~。」


そう言われて冒険者達はその場に座り込む。

落ち着いた所でジャスティンと呼ばれた冒険者が近づいて来た。


「貴方も冒険者ですか?おかげで助かりました。」


剣を鞘に収めてから握手を求めてきた。

握手に応えるとメンバーを紹介してくれるようだ。


「僕はリーダーの戦士、ジャスティンです。ポーションをありがとう。貴方のおかげで危機に陥らずに済みました。」


青髪で短髪の青目、180cmぐらいのイケメンだ。

年齢は17~8ぐらいだろう。


「俺は戦士の『ダン』だ!ティンバー・ウルフとはいえ六匹を鮮やかに葬るとは、さぞ名のある剣士に違いない。名前を聞いても?」


赤茶の髪を逆毛にした黒目のいかにも戦士っていう風体ふうていの男性だ。

190cm上だろうか?

20歳ぐらいのナイスガイだ。


「アタシは狩人で斥候の『アンナ』。君すごいんさ~、ティンバー・ウルフを六匹も瞬殺なんてさ~。」


鎧で見えないが褐色の肌をしていると思われる人懐っこそうな茶髪の女性だ。

髪の毛からピョコッと見える耳は獣人の特徴だろう。

尻尾もある。

165cmぐらいだ。

マオ以外で初めて出会った成人獣人の女性だが、獣人の人は年齢の見分けが難しい。


「私は魔法使いの『ラフィア』。あの一瞬の判断力も見事でしたわ。貴方に感謝を。」


ローブの上からでも分かる熟されたお姉様の色香が漂う金髪の女性だ。

あれ?

鎧は着ていないのかな?

20歳ぐらいだろうか?

・・・是非お近づきになりたいね。

身長は160cmぐらいだろう。

神官なのだろうか?

胸の辺りにエムブレムの様な物が付いている首飾りを付けている。


四人は俺が名乗るのを待っているようだが名乗る気はない。


【四人共無事で良かった。俺はただの通りすがりの冒険者と言う事で・・・。】


すると四人は察してくれたのか、深くは聞かないでくれた。


「そうだ、ポーション代はいか程でしょうか?」


戦士のジャスティンが聞いて来たので恰好を付けてみた。


【これも何かの『縁』ですのでお代は結構ですよ。とにかく皆さんが無事で良かったです。】


「そうですか。改めて、君に感謝を。」


そう言ってジャスティンは微笑んでいた。

むう、イケメンだねえ羨ましい。


話を聞くとオーガを討伐に来ているらしく、運悪くエティンと出会ってしまったらしい。


【オーガが出るのはこの辺りなのですか?】


「アンナが探索した所、比較的大きな足跡が見つかりまして、それを追っているとあのエティンがいたのですよ。」


ほう、だがエティンで手こずるとオーガは厳しいかもしれないね。


【俺はこの先の鉱山に用があるのですよ。】


「成程・・・それではよろしければですが、しばらく御一緒して頂けませんか?」


ジャスティンがそう提案してくる。


【それはとてもありがたい申し出なのですが・・・。】


と、言ってジャスティン以外の冒険者達を見る。

皆が俺を警戒している様な顔をしている。

いきなり現れた、しかも顔も見せないし更に名乗りも上げない。

そんな他人を信用するのは危険ではないのかなと思っているとラフィアと呼ばれた女性が提案して来る。


「あの、大変申し訳ないのですが『鑑定』を掛けさせて頂いてもよろしいかしら?」


後ろめたい事は無いので【どうぞ。】と返事をする。


「ラフィア、そこまでされなくても大丈夫ですよ。」


そうジャスティンが言っていたのだがラフィアさんはパーティーを代表して言って来る。


「・・・念の為ですわ。」


と、ラフィアが微笑んでいる。

そして皆が見ている中で鑑定が始まった。


「受けて頂き、ありがとうございます。それでは、「鑑定」・・・。」


体が青く光る。

・・・

他のメンバーがラフィアを注目している。

多分、鑑定が成功して殺人履歴とかを見ているのだと思う。

ステータスは鑑定が成功しないと見れないからね。

あれ?

他の人には見えてないよね?


そう思っているとダンとアンナの手が武器に掛かっているのを確認出来た。

良いね用心している。

もしかしたら人殺しかもしれないから、対応としては一応合格だねと思っていると。

鑑定を終えたラフィアが近づいて囁いて来た。


『「ヘファイストス」様、ありがとうございました。』


安心したように耳元でそう囁いて来た。


【いえいえ、本名は内密にして頂けるとありがたいのですが・・・。】


と、囁き返しておいた。


『分かりましたわ。』


そう言ってくれた。

まあ誠実な人なのだろう。

秘密を守ってくれると良いね。


「まだ十五歳ですって!?若いですわね・・・剣術スキルはダンよりもずっと高いわね。」


「本当かよ!まあ俺はどうあがいてもティンバー・ウルフとはいえ、六匹を瞬殺は出来ないぜ?」


「それだけ、え~、何て呼んだらいいんだろう~?」


アンナが困っていたので助け船を出す。


【ああ、それでは『アーサー』とでも呼んで下さい。】


とっさに出た名前が『円卓の騎士』だとは。

前世の『ヤマダ』の方が良かっただろうか?


アンナが言ってくる。


「りょ~。それだけアーサー君の剣術が卓越してるって事なんさ~?」


ダンが俺を見ながら言って来る。


「しかしアーサーよ・・・なんでそんな怪しい格好をしているんだ?」


・・・怪しいよねやっぱり。

顔も見えないからね。

まあ、隠せるのなら隠しておきたい。

俺は鍛冶師だからね。

のんびりと皆とスローライフを送るんだ。


冒険者なんてとんでもない。


「姿を偽らなければならない理由があるのではないでしょうか?」


ジャスティンが助け舟を出してくれたので乗っておく。


【察して頂きありがとうございます。】


「そうだ、アーサー。討伐対象の証明を取らなくても良いのですか?」


そうジャスティンが聞いてきたので、ここは解体アレがあるかもしれないから遠慮しておこう。


【私は手助けをしただけですので皆さんでどうぞ。】


そう言うとラフィアが心配そうにこちらを見て言って来る。


「ティンバー・ウルフはランクGの討伐モンスターなので一匹で銅貨十枚ですよ?六匹も本当によろしいのですか?」


【ええ、結構ですよ。俺は譲って貰った獲物を倒しただけですから。】


何処をとってもアレそうなのでお任せした。

ちなみにエティンはランクDで銀貨三枚だそうだ。


命懸けなのに・・・世知辛いね冒険者。


エティンの耳とティンバー・ウルフの皮を剥ぎ取っているようだ。

多分ソレが討伐した事の証明なのだろう。

やっぱりグロいじゃないか。


男性陣が解体作業を終えた様だった。


「では、移動しましょうか。」


ジャスティンが言うと「そうですね。」と皆で移動する事になった。


後ろを確認するとティンバー・ウルフとエティンの死体がまだ残っていた。


「ああ、あれは()()()()()()()から大丈夫なんさ~。」


アンナにそう言われたが気になったので見ていたら、黒い靄になりだんだんと消えて行く。


【成程。】と答えて皆でその場を後にした。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


街道沿いに出て小休止をしてから探索に戻る。


探索を始めてから三十分程経っただろうか。

うーん、困った。

どうやらジャスティン達はオーガを討伐するまでこの辺りにいそうだなと思っていると斥候のアンナが痕跡こんせきを見つけた様だった。


「ジャスティン、足跡があるんさ~。すごく大きいし新しい・・・これはエティンじゃないと思うんさ~・・・どうする~?」


ジャスティンが皆を見回すと、皆は大丈夫だとでも言うように肯いた。


「アンナ、足跡を追って下さい。」


「りょ~。」


いつ戦闘になっても良い様にフォーメーションを組みながら移動している。

手慣れたもんだねと見ながら少し後ろからついて行く。

ゲーム時代の狩りとなればソロで適当に狩りをしていたけれど、パーティーでボスを攻略する時等は『指示』は生命線だった。


指揮官の指示を聞かなければ勝てる戦も勝てないからね。


ただ、ジャスティン達とは係わってしまったので、俺の手が届く間だけでも無事に街に戻してあげたいね。

これも「縁」だしね。


・・・少し傲慢かな?


アンナは慎重に足跡をたどっている。

どうやら南の方向へ移動しているようだ。


だが、冒険者と言う職業には常に危険はつきものだ。


俺は「探知」と囁き周りの状況を確認すると大型のモンスターの反応を感じる。

探知のスキルは便利だが、欠点として感知した対象の名前までは分からない。

大小等の大きさは分かるのだがそこだけが使いにくいかな?

そんな事を考えているとその大きな危険が近づいて来た。


足音を感じてアンナが皆に警戒を促す。


「来るんさ~!」


と、言ってアンナは後ろに下がり弓に矢を番える。

俺は追加で叫ぶ!


【南から大きいのが来るぞっ!】


叫ぶとすぐに森にいた動物達が危険を察知して逃げる。


「「「ガオオオオオオォォォォォ!!!」」」


叫び声を上げ、南側の森を破壊しながらそいつは近づいて来た。

ジャスティンが叫ぶ!


「あれが討伐対象の「オーガ」です!」


俺の体が赤く光る。

オーガの叫び声には『デバフ』の効果でもあるのだろうか?

これもゲームとは違うなと思っていたら、幸運にも俺には効かなかったようだ。


同じく動けるジャスティンの指示が出たが、他の三人は固まっていて動かない。

いや、雄叫びのデバフの影響で動けないのだろう。


一番近くにいたダンがオーガの右手のアッパー気味の一撃で吹き飛ばされる。

「ぐふっ」と言って空中に突き上げられて十m程の高さから地面に叩きつけられる。


「ダン!」


ジャスティンが叫んだ。

軽装備とはいえ190cmぐらいありそうなダンを十m近く吹き飛ばした。

力だけはあるな、さすがオーガと言った所か。


「ガオオオオオオォォォォォォォ!!!」


よく見るとオーガの左目にダンの剣が刺さっている。

攻撃を受けた時にとっさに刺したのだろう。

タダではやられないと言う事か、さすがベテラン冒険者。


オーガは更に左拳でにアンナに襲い掛かる。

動けているのはジャスティンだけだ。

固まっているアンナにジャスティンが体当たりをして突き飛ばすと、盾でオーガの左ストレートの攻撃を防ごうとする。


バキッ!


盾が壊されジャスティンが「ぐぅっ」と呻く。


それだけではダメージを吸収できなかったのだろう、5mぐらい吹き飛んでいた。

アンナも一緒に吹き飛ばされていたが、ジャスティンが攻撃を受け止めていたので彼女は悪くても軽症だろう。


俺は既に行動を起こしていた。

まずダンに駆け寄ると口から血を出し嫌な呼吸音をしているダンに、高品質の高級ポーションを無理やり飲ませる。


【頑張って飲んで!ダンさん!】


ジャスティンが挑発スキルを発動したようだ。


「「「こちらです!化け物!!」」」


と、言って剣と壊れた盾を打ち鳴らして挑発している。

攻撃を受けた左手は大丈夫だろうか?

ダンがポーションを飲み込んだのを確認すると次に俺はジャスティンに向かって駆ける。


【ジャスティンさん!】


駆け寄り、彼に向かって高品質の中級ポーションをほおる。


左手で受け取ったのを見てから、そのまま一番遠くて一番オーガに近いラフィアに向かって走る。

ジャスティンが左手で受け取れたと言う事は、左手は少なくとも骨折はしていないだろう。


左手・・・我慢してないよね?


オーガにジャスティンの挑発が効かなかったのだろう。

オーガの視線はラフィアに向いている。


「あ・・・ああ・・・あ・・・。」


ラフィアは恐怖で動けないようだ。

問題はこっちだ。


オーガの右拳が振り上げられる。

右側からジャスティンが必死に攻撃して注意を引こうとしている。

このままだとラフィアは絶命していただろう。


けれどもそうはさせない。


振り下ろされるより早くラフィアの元へたどり着くと、担ぎ上げその場からアンナの方へ素早く移動する。


後方から「ドガーン!」という音がして土煙が上がる。


「「ラフィア!」」


ジャスティンとアンナの叫び声が聞こえる。

その土煙から飛び出すと、俺はラフィアをアンナのいる位置まで連れて行き、優しく投げるように渡す。

ちょっと乱暴だが緊急事態だ、勘弁願おう。


後ろで土煙を上げているオーガが獲物を殺したのにいないとでも思っているかのように右拳と地面を見比べている。


そしてオーガに向かって挑発スキルを発動させる。


「「「『アリステリア様』、御加護を!」」」


オーガに向かって叫ぶ。

更にジャスティンとアンナ、ラフィアに指示を出す。


【ジャスティンさん、アイツは左目が見えていないのでそのまま右から攻撃をして下さい!アンナさんは後方から弓で援護!ラフィアさんはダンさんの所へ!念の為、急いで回復を!】


叫ぶと共に俺はオーガに向かって走る。

ジャスティン達は呪縛が取れたように指示した行動を行う。

土煙が晴れ、状況が確認出来たのでオーガの正面に向かう。


【さあ、俺が相手だ!】とでも言うようにオーガの前に出る。


六、いや、七mだろうか。

巨大な体が目に入るが、ティンバー・ウルフの時と同じで恐れは無い。


ジャスティンが右から懸命に攻撃している。

挑発スキルが効いているのでオーガの視線は俺の方に向いている。

攻撃の甲斐があってオーガの左足から大量の血が流れている。

あの出血量だとジャスティンに『注意ヘイト』が向いてしまうかもしれない。


「「「さあ!こっちだ、来い!!」」」


挑発スキルを掛け直すとオーガが俺に向かって突撃してくる。

相棒を抜剣し上段に構える。


「「「グオオオオォォォォォ!」」」


オーガが叫ぶ!

威圧でも掛けているのだろうか?

だが俺には効いていない。


「アーサー!」


ジャスティンが俺の方を見て叫んで来た。

弓を構えているアンナを視界に入れると急いでその場を移動する。


シュツ!


っと音がして矢がオーガの左足の甲を貫く。

アンナが放った一撃だろう。

オーガがよろめくが勢いはそのままだ。


スローモーションで近づいてくるオーガの左拳を難なく右に避けざまその腕を斬る。

皆も、オーガも何が起こったか分かっていないのだろう。


ドオーン!!!


大きな音が響いて地面が抉られ土煙が上がり、更に血しぶきが上がる。


「「アーサー!!!」」


ジャスティンとアンナ、ラフィアが悲鳴を上げる。

左手から血しぶきを上げたオーガはやっと自分の腕が無い事に気づいたようだ。


「グオオオオオオオォォォォォ!!!」


痛みだろうか?

悲鳴らしき声を上げながら悶え暴れている。


左目と左手が無い事を勝機と見たジャスティンが、オーガの右の方向から何度も足を斬り付ける。

オーガが左足を着くと態勢が低くなり頭が射程圏内に入る。

あまり苦しませないようにと思いながら素早くオーガの正面に立つ。


【・・・ごめんね。】


そう呟いて剣を一閃する。

今度はオーガの首が飛んだ。


俺はバックステップをして側から離れると、思い出したかのようにオーガの死体から血しぶきが上がった。

その巨体が倒れ土煙が上がる。


俺は剣から血を振り払って納剣する。

むう、せっかく作ったのにフード付きマントが血まみれだ。

後で洗濯してみよう。

シミが消えなければ濃い色に染めれば長く使えるよね。

とか考えていると俺を呼んでいる声が聞こえる。


「アーサー!」


「アーサー君!」


「アーサーさん!」


ジャスティン達から呼ぶ声が聞こえる。

そう言えば、俺の事だね。

周り中土煙で見えないので声の方に向かって進んでいるとラフィアを見つけた。


「あ!皆、こっちよ!いたわ!」


そう言ってラフィアが泣きながら近づいて来る。


「もう!心配したんだから!」


と、抱きしめられた。

あのー?

ラフィアさんポニョポニョが気持ち良いんですが?

どうやら土煙が晴れてオーガの死体が見えて来た様だった。


それを見てからジャスティンも鞘に剣を納め俺の側に歩み寄って来た。

何も言わずに右手を差し出してくる。

ラフィアに抱き着かれたままだが握手を交わす。

あ、そうだ?


【ダンさんは大丈夫ですか?】


ジャスティンとラフィアは、「あ!?」と言ってそういえば等と言っている。

ダンの扱い酷いな!

ダンが倒れている方を見るとアンナがいた。


【ジャスティンさんは左手、大丈夫ですか?】


「ああ、アーサーがくれたポーションのおかげだね。」


そう言ってウインクしてくる。

良かった良かった。

アンナが、ダンは眠っていると言っているので大丈夫だろう。

膝枕をされているダンを見て・・・ん?

う、羨ましくなんかないよ!?


チェー。


一応、治療スキルを使って確認してみたが、大丈夫のようだ。

土煙はもう晴れていたけれど、念の為に探知スキルを使って周りを確認する。

特に反応は無かった。

とりあえず皆が無事で良かったよ。


探索していたアンナが周りにモンスターはいないよと言うと警戒していた皆が気が抜けたのか座り込んだ。

さてと、無事にオーガも討伐できたし目的は達成かな?


気が付けば冬の森の中は薄暗くなって来ていて木立から見える夕日が沈みかけていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


しばらくしてダンが目覚めた後。


暗くなった森の中、松明を持ったジャスティンとダン、アンナがオーガの死体を確認している。


「見たか?この斬り口?」


「ああ、すごいね。東国にいる『剣聖様』でも同じ事が出来るとは思えない。」


「骨と骨の隙間を綺麗に斬っているんさ~。」


ジャスティンと目を覚ましたダンがアンナも含めて確認をしながらそんな事を言っている。

へー、「剣聖」なんているんだな。

ゲームの時はそんな称号は無かったね。

そんな事を考えていたのだが・・・。


「そうです!アーサー様は剣聖より凄いんですわよ!」


少し離れた所で俺と腕を組んで隣に座っているラフィアがそんな事を言っている。

呼び方が「様」になっているので恥ずかしいからやめてと言ったのだけれどやめてくれない。

そのおかげでさっきから腕にポニョポニョした物が当たっている。

うん、成熟した女性のポニョポニョ、良いね!

我慢出来なくなりそうだ。


「アーサー、本当に良いのか?」


ダンがもう一度聞いて来る。


【功績が欲しい訳ではありませんし、依頼も受けていませんので結構ですよ。それに俺もパーティーメンバーですからね!】


「・・・そうか、アーサーのおかげで助かったぜ。ポーション、ありがとうな!」


安心したのかそう言って微笑んで確認に戻る。


しかし、よりによってオーガの牙か・・・。

三十cm以上ありそうな牙が二個、これが討伐対象の証明部位らしく持ち運びが大変そうである。

あんな物を引っこ抜くなんてゾっとしちゃうね。


そして、そろそろお暇しようかと思って先程ジャスティン達に声を掛けたのだ。

夜のうちに本気で走って鉱山に行くつもりだったのだが、一人では危険だと言われて現在に至る。


うーん、目標は近いようで遠いね。

本来の予定ならもう鉱石を掘っているはずだったのだが。


街には戻らないと言うと「ここで別れるなんて!」というラフィアの一言で野営となってしまった。

まあ、しょうがないかと思って空を見ると、どっぷりと夜だ。

野営をするならば、まずは腹ごしらえだね。


誘惑に負けないようにラフィアのポニョポニョした温もりを振り払い、バックパックから鍋と食材を取り出す。


【晩御飯は任せて下さいね!】


晩御飯の支度をしていたアンナとラフィアにそう声をかける。

解体アレから戻ってきた男性陣に手伝ってもらいたい事があったので手伝ってもらう。


【ジャスティンさん、ダンさん、竈を作りましょう!】


手軽な石を持って来てもらうと組み上げていく。

十五分程で良い竈の出来上がりだ。

川の流れている音がするのでジャスティンとダンに水を汲んできてもらうように言って桶を渡す。


今日はルイス達に食べさせる前に、実験も兼ねて料理スキルでやれる所までやってみよう。

お試しにはちょうど良い人達だしね。

ごめんね。

実験という名の餌付けに付き合ってね。


ふっふっふ。


アンナとラフィアが心配して聞いて来る。


「本当に、任せちゃって良いの~?」


「お任せしてよろしいのですか、アーサー様?」


そんな事を言って来たので任せて下さいと胸を叩く。

ジャスティンとダンが水を汲んで戻って来てくれた。

さあ、料理スタートだね。


竈に火をおこし調整をし鍋をかけ少量の水を入れお湯を沸かす。

小麦粉を沸かしておいたお湯でこねる。


アチチ!


こね終わったら作っておいた天然酵母をバックパックから出す。

バターも混ぜ合わせ更にこねる。

パン種を丸めて木のボウルに入れて濡れタオルを掛けておく。

発酵させるのでちょっと時間が掛かるのだ。


さて次だ、木の板をまな板代わりに食材を切る。


もちろん買ってあった野菜や肉はバックパックに入れておいた物だ。

空の鍋にバターを入れ、切った野菜を入れていく。

同時に切った鶏肉に塩を振り小麦粉を付けておく。

鶏肉を鍋に投入。

火が通ってきたら牛乳等で作っておいたホワイトソースを入れ煮込む。

煮えてきたら切っておいたブロッコリーを入れて更に煮込む。

塩で味を調え、蓋をしてもう少し煮込む。


味加減は「料理」と「味覚」スキルに頼ろう。

胡椒も無いしね。


寝床を作っていたジャスティンが食事当番の女性二人がいるのを不思議に思ったのか聞いて来る。


「あれ?夕御飯は干し肉とスープではなかったのですか?」


ダンが女性陣二人に聞く。


「ものすげえ良い匂いがして来たんだけど、晩飯は何だ?」


アンナが答える。


「それがさ~、アーサー君が任せろって聞かなくってさ~。」


続いてラフィアが答える。


「私達も何を作っているのか・・・までは・・・。」


聞こえてくる声をスルーし続きを行う。


シチューを煮込んでいたらパンの素が良い感じに膨らんでいた。

さすがのチートスキル。

パン生地を伸ばしていき、手ごろな木の枝に巻き付けていく。

十二本作れた。

パン串を火にかけ表面を焼いて行く。


しばらくすると・・・「チーン!」

・・・出来た!


【今晩のメニューは、「ホワイトシチュー」と「白パン」です!】


皆が驚いている。

ダンが涎を垂らしそうな顔で夕食を見ながら言う。


「白パンなんか貴族様が食べる物だぞ・・・?」


続いてアンナが「ゴクリッ」と喉を鳴らしながら言って来る。


「このシチュー、すごく美味しそうな匂いがするんさ~?」


それを見かねて、ジャスティンが言う。


「まあまあ、折角作って下さったのですから、まずは食べてみましょう、ね?」


ラフィアが初めての料理に驚いたのだろうか?


「ホワイトシチュー・・・?聞いた事の無いシチューですわね?」


そう言っている。

さて、スキル頼みだけれどもどうだろうか?

皆に食事を配る。

そして皆が、パンやシチューを口に入れる。


沈黙が辺りを支配する。


あれ?

不味かった?

一応味見はしたんだけどな?


【あのー皆さん、どうかし】


「「美味しい!」」


「美味ーい!」


「何ですかこれは!?」


俺の声は皆の大声にかき消された。


「何これ、すごく美味しいよ~!?」


「美味え!」


「・・・パンもすごいですよ?」


「野営で温かい物なんて!さすがはアーサー様!」


ああ、良かった。

好評らしい。

俺も食べてみる。

うん美味しいね。

前世のホワイトシチューに似た味だ。


「アーサー!お代わりはあるか!?」


早々に食べ終わったダンが聞いてくる。


【慌てなくても、まだまだありますよ。】


「パンとシチュー、お代わりだ!」


【はい。】


ダンのお代わりをよそってパン串と一緒に渡す。


続いてアンナが言って来る。


「あーっしにも、パンのお代わりちょうだい!後、シチューも!」


【はい、分かりました。】


アンナにお代わりをよそってパン串と一緒に渡す。


ジャスティンとラフィアがそっと器を出して来た。

何か遠慮気味に言って来る。


「ぼ、僕にもお代わりを貰えるだろうか、出来ればパンも頂きたい。」


「私も同じく・・・。」


【遠慮しないで下さいよ・・・どうぞどうぞ。】


そう対応をしているとダンが腕をグルグル回しながら言って来る。


「力が湧いてくるような気がするぜ!」


ダンの方を見ると、力こぶを作っている。

アンナも同じように言って来る。


「うん、あーっしも、体が軽いような気がする~!」


とか言っている。

そういえば食事を食べると『バフ』が付くんだったな。

どのぐらいの効果が付くのか知りたかったが、またの機会に鑑定して確かめよう。


どうやら、シチューとパンは大好評で無くなりそうだ。

これならいつか、うちの子達にも食べさせてあげられるね。

餌付けと言う名の夕食会は大成功だったらしい。


片付けをしようとすると女性陣が懇願するように言って来た。


「「食べるだけだと申し訳ないので、せめて片付けはやらせて下さい。」」


真剣に言うのでお任せした。


さてと野営というとテントでも張るのかな?

異世界サバイバル気になるね。

と、思っていたら・・・簡易な簀子すのこを作ってその上にシーツを敷いて何かの毛皮を敷いただけだった。

毛皮のサンドイッチ。


・・・思っていたのと違う。


冬だから天幕ぐらい張るのだと思ってた。

ショックを受けている俺を見て心配したのかジャスティンが問うて来る。


「どうしたんだい、アーサー?」


【ああ、現実とのギャップに驚いていたんですよ。】


「ぎゃっぷ?」


【ええ、野営がシーツと毛皮だけだなんてと・・・。】


すると、ジャスティンは納得したのか答えてくれる。


「ああ、明日は雨は降らないよ。それにお金がかかるから荷物持ちの「サポーター」とかは雇っていないんだよ。しかも冬だからね。」


【サポーター?】


聞くと、城門の脇などで貧民の子が荷物持ちの日雇いをしているらしい。

それを総じて『サポーター』と呼んでいるとの事だ。


【へー、そんなに子供達がいるんですか?】


「ああ、此処オーカムだけじゃないんだよ?王都や他の街にもいるしね。王都だとその子達の為に各神殿が月に一~二回、炊き出しもしているんだよ。」


良い情報を貰った。

サポーターか。

鉱石を運ぶという名目で雇えれば良いかもね。

または木材の確保とかをやってもらうのも良いかもしれない、等と考えに耽っていると女性陣が戻って来た。


「食器洗い終わったんさ~。」


「食器洗い終わりましたわ。」


そう女性陣から声がかかる。

【ありがとう。】と言って水の拭きとってある食器類を受け取りバックパックの中へ入れる。


それを見ていたラフィアが呟く。


「便利ですわよね、バックパック。」


続いてアンナが言って来る。


「そうね~、あーっし達も欲しいけれど、お金がね~。」


そんなに高級品なのだろうか?

買えるなら欲しいので金額を聞いてみると・・・。


【最低でも白金貨100枚!?】


驚いた。

大金だ。

しかも容量によって値段が変わるらしい。

と、言う事は容量の大きい物は白金貨何枚なんだろうね?

アンナがバックパックを見ながら言う。


「アーサー君は持ってるから良いじゃないんさ~。」


【そうなんですけどね。】


ルイスにも持たせたいと思っていたのだが・・・。

そうだ、ついでに気になった事を聞いてみよう。


【バックパックに名前が書いてあるんですけれど、これって何か意味があるんでしょうか?】


ジャスティンが答えてくれた。


「バックパックは専用装備だから他の人が使えないようになっているんだよ。『作った時に魂と同調させる』でしたっけ?」


続けてダンが言って来る。


「そうそう、専用装備だから中身を引き出せるのは自分だけ。だから盗んでも盗んだ罪科だけ付くだけで全く旨味がないんだぜ。」


ラフィアが同意して教えてくれる。


「左様ですね。作るにも素材が脅威判定Sのグレーター・ドラゴンの血とかベヒモスの革とかですしね、古代龍(エンシェントドラゴン)なんか災害としか・・・。」


ほう、ベヒモスか。

ゲームではいなかったな。

どんなモンスターなんだろう。

少しワクワクする。


アンナがむくれたように言って来る。


「滅多に出回らない物だしさ~、入荷してもオークション経由で貴族様優先でアタシらは買えないんさ~。まあ、あーっしらには縁の無い話なんさ~。」


その言葉にダンが続く。


「まあ、高望みしてもしょうがねえさ。俺達は、ある物で何とかするしかないんだよ。」


【そうですね。】


俺が同意するとジャスティンが提案してくれる。


「アーサー、皆で話し合ったんだけれど、夜番は今回は僕とダンでやるから君は・・・あー・・・休んでくれ。」


そう申し訳なさそうに言って来た。

何か変な「間」があったんだけど!?


【え?良いんですか?】


夜番はやるつもりMAXだったんだけれどな。


「実質オーガを倒せたのは君がいたからだしね。そのお礼と言う訳ではないんだけれど夜番は任せてくれるかな?」


うーん、やりたかったが仕方がないかな。


【それでは、お言葉に甘えさせて頂きます。】


ジャスティンが微笑んで答える。


「任されました。」


ジャスティンはイケメンだなと思っていると、ラフィアが近付いて来て耳元で囁いて来た。


『今夜は楽しみましょうね、アーサー様。』


そう言うと腕を組んできた。

え!?

いやまさか異世界初が野外プレイですか?

えへへ、楽しみだ!

いえ、何がと言う事は無いですよ!?


ダンが〆める様に言う。


「さて、そろそろ休むか?」


俺の方を見て「ニヤリッ」としながら言ったので、ジャスティンとアンナが焚火の側で寝る準備をする。

寝ずの番の先鋒はダンか。

ジャスティンがラフィアに「ほどほどにね。」と、注意していた。

ラフィアは「分かっていますわよ。」と答えて俺の手を握って森の方へ連れて来た。


前世と合わせて、人生初の素人童貞卒業か・・・燃えてきた!

ラフィアがローブを脱ぎ去る。

月明かりでもその綺麗な肢体が良く見える。

解放されたようにその長い髪が月明かりになびいてとても美しい。


そして思った通り、二つの双丘は大きい・・・。


「可愛がって下さいませ、アーサー様。」


その夜、ラフィアと激しく燃え上がった事は言うまでもない。


こうして冬だけれども、熱い夜は更けて行くのであった。

ここまで読んで下さってありがとうございます。

次話 別れと出会い(仮 でお会いしましょう。

それでは、今後ともよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「あの、大変申し訳ないのですが「鑑定」を掛けさせて頂いてもよろしいかしら?」 そこまでされて一緒にいる必要はないと思う。助けてもらっていて、とても失礼ですね。
[一言]  野外でしかも美人と…浮気をチクらねば…(血涙)
[気になる点] >鉱山に行くには、一応街道と呼ばれている道があるのでそれを歩いて行く。 とあるので、ずっと街道を進むと思いきや・・・ >さすがに真っすぐには整備されていないし舗装もされていない。 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ