表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰かぶりの姉  作者: 吉野
24/52

歓迎会


そして金曜の晩に始まった営業3課合同の歓迎会。


その日は昼から外回りで、社に戻る際ヘパリーゼを買う事が出来たので、あらかじめ飲んでいく。



営業本部長に各課の課長、主任含め総勢60名越えの歓迎会は、ホテルのバンケットルームを貸し切って行われた。


まるで披露宴のように円卓を囲み、供されるフルコースを頂くのだけど。

黒澤と相原と私、新人の3名の席に本部長が同席というのはなかなか緊張する。

しかも、新人の私達は新郎新婦よろしく一段高い高砂席に横並びだ。


緊張するなという方が無理だろう。


もっとも、本部長自身はおっとりとして気さくな女性で、“お母さん”という雰囲気の人なのだけど。



とりあえず本部長と同席だからか


「俺の酒が飲めないのか⁈」


なんて、前時代的な事を言いお酒を強要する人はさすがにいなかった。



「お酌なんて、そんな事しなくていいからね。

飲みたい人は好きに飲む、飲めない人は好きな物を飲む。

それで良いのよ」


その言葉に安心して、乾杯の後はウーロン茶をチビチビ飲んでいた。

その間も、各課の先輩方の自己紹介が進んでゆく。



全員の自己紹介も終わり、ある程度食事が済んだらあとは各課入り乱れての大宴会となった。


親睦を深めるのが主目的なので、グラスだけ持って各課のテーブルを回る。



「国枝さん、こっちおいで」


最後に2課のテーブルから浅野さんが呼んでくれたので、いそいそと隣に腰を下ろす。



「何飲んでるの?ウーロン茶?

まぁ無理に飲まなくていいよ」


大抵の人はそう言ってくれるけど、中には


「飲みニケーションも大事だぞ。

それに自分の限界を知っておく事も必要だ。

幸い明日は休みだしな、潰れない程度に飲んどけ」


と言う人もいる。



まだ配属されて2週間で、誰がどういう人かもわからない状況で。

無碍に断る事も出来ず、つい飲み過ぎてしまった。


顔が火照って赤くなっている自覚がある。

ついでに言うと、多少フラフラする気もする。


「国枝さん、大丈夫?

ちょっと休憩しよっか」


見かねたのか、浅野さんがお水を手渡してくれた。


「大丈夫、です」


言いながらもお水をゴクゴク飲み干す。

酔いが回っている自覚はあるけれど、気持ち悪いという程ではない。


「飲むならお水だけにしといた方がいいよ。

炭酸とかウーロン茶とかで、気分悪くなっちゃう事もあるから」


浅野さんと反対側の隣に座っている先輩からもアドバイスもらって、その後は大人しく水だけを口にした。



それにしても、無理やり飲ませようとする人はいないとはいえ、浅野さんの躱し方はなかなか参考になる。


角が立たないようやんわり断ったり、1口だけ飲んで話をそらしたり、相手に酌をする事で自分が飲まなくてもいい状況を作ったり。



今日は潰れるほどではないとはいえ、やっぱり飲み過ぎた感は否めない。

けれど、慣れれば浅野さんのように上手に捌けるようになるのかな。



そんな事をぼんやり考えていると、2課の山野主任が隣に腰を下ろした。


「国枝さん、大丈夫?

だいぶ赤いけど、無理してない?」


「あ、はい、大丈夫です」


気遣わしげな視線に、申し訳なさを感じてしまうのは、やはり新入社員(ぺーぺー)だからか。



「お酒、飲めた方がいいんでしょうね」


脈絡のない話題に主任はやや目を瞠り、そして苦笑する。


「全く飲めないわけじゃないんだろ?

そりゃ『全然飲めません!』って固辞されれば、多少場は白けるかもしれないけど。

でも飲めるって認定されるのも、それはそれでなかなか辛いぞ。

女性相手ならともかく、男同士なら『飲めるんだからどんどん飲め』って、遠慮しない人もいるし」



——そっか。

飲める人は飲める人で、辛い事もあるんだ。



「まぁでも、これから先、接待やら何やかんやで飲む機会は増えるだろうから、自分の飲むペースと限度量を知っとくといいよ」



——ですよね~。


航平も言っていたもんな。

社会人になってから、何だかんだで飲む量と回数が増えたって。



酔いが回ったせいか、ボンヤリと辺りを眺めていた。



働き始めてまだ2週間だけど、特別嫌な人も意地悪な人もいない。

これからもっと馴染んで、お互いを知っていけばまた変わるかもしれないけど…少なくとも良い職場だと、今は思う。



この頃はまだ、本気でそう思っていた。



この先、何が待ち受けているかも知らずに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ