鍛冶師オルン・オルディナー2
オルンの家に入ると作業部屋らしき所へと案内された。
その部屋は火炉があり鑽や金床などの鍛冶に必要そうな道具が一通り揃っていた。
また部屋の片隅には様々な武具が無造作にも山積みにされていた。
「それで裕太の前に使ってた剣を見してくれない?」
「嗚呼……」
裕太はオルンに折れた剣を渡す。
「ふーん、なんか力が漲ってくる感じがするな、力の付与魔法がかかってるのか、にしてもとんでも無い力のかかり方して折れてるし……いったいどうしたらこうなるんだよ?」
「ドラゴンの鉤爪を防いだ」
フェミルは無機質な声でさも当然のかのようにそう答える。
「ドラゴンの攻撃をねぇ……まぁよっぽど強い冒険者ならできるだろうけど裕太ってそんなに強いの?」
「多分私が見てきた人の中で一番強い、炎王や氷聖よりも強いと思う」
「おいおい炎王や氷聖より強いって……」
炎王は炎人族の特権階級にあたる者で現炎王はオスル=アル・シャイナールで、彼は炎人族最強と謳われ300からなるグロッグの群れを単機で殲滅したという実績を持つ。
氷聖は氷人族最強の者に与えられる称号で現称号保持者はアシル・ガフルでドラゴンの討伐隊の中核を一人で担っている。
正直この二人は人間の領域を逸脱してるとも言えるだろう、オルンには正直目の前の平凡そうな顔をした少年が上記の二人より強いとは到底思えなかった。
「まぁいいけどさ、それは置いといてどんな剣がいいんだ? ないなら前と同じような感じにするけど」
裕太は部屋の端に雑に置かれた武具の数々を見る。
その中に裕太の見覚えのあるものを見つける。
細長い刀身で尚且つ湾曲したフォルム、それは裕太のよく知る日本刀に酷似している物だった。
「もしかしてあれって刀か?」
「そうだが……何故、アレ《カタナ》を知っている?」
「まぁ色々目にする機会があってだな、ここにも刀があるのか?」
「ここにもあるのかって……刀の製法を知るのはオレ達炎人族だけなんだけど」
「そ、そうなのか、なんか悪いな、俺ってそう言うのに疎いんだよ」
「刀は実は元々オレ達炎人族の技術って訳でも無いんだ」
「と言うと?」
「二百年前にこの地に降臨した転移者によって伝えられたらしい、実際製法もオレらが生来作ってたのもと全く違うしそうなんだろうけど。
まぁなんたってその転移者の名前がアマクサ=モンザエモンなんて変わった名前だったらしいぜ」
オルンはがさつに置かれていた日本刀を手に取りブウゥンと一振りする。
オルンの腕は女性の割には多少筋肉質でオルンが鍛冶職である事を裕太に感じさせる。
(まさかその転移者って日本人だったって事ないよな……でも名前が名前だしそうかも知れない……)
「それでその転移者は今はどうなってるんだ?」
「さぁ、龍神とか言う他の転移者に殺されたらしい……明確な事はわかってないけどな、それでどうする? 刀にするか?」
「そうだな、折角だ、新しいのは刀にしてみるか」
「なら決まりだ、でもどの道材料が無いから兄ちゃんのとこに貰いに行かないといけないんだけども、向こうのほうがいい道具揃ってるし向こうで打とうかと思ってる、というわけで付いてきてくれるか?」
「勿論俺は大丈夫だが……ミリス達は平気か?」
裕太はミリスとフェミルを一瞥する。
ミリスは特に問題は無いと言った感じであったがフェミルが明らかに嫌そうな顔をしていた。
「確かベルジュ工族の里に行くためには溶岩地帯を通るはずだったはず……通りたく無い」
「んな、氷人族がいくら熱さに弱いからってそんくらいで死にはしないだろ⁈」
オルンは後退りしようとするフェミルの首根っこを掴む。
「だから、氷人族は繊細‼︎ 踏み外して溶岩落ちたら死ぬ‼︎」
フェミルはじたばたと暴れオルンの拘束を解こうとするが力の相違か、それがうまく行かない。
「んなぁ……溶岩の中に落ちたら死ぬのはこっちも一緒だっての」
「む、無理だからぁ……」
オルンは泣き言を言うフェミルの首根っこを無理やり引っ張りながら目的の場所へと向かう事になった。




