旅路ー4
裕太達はその日の晩になる前にはクシア村へと着く。
相変わらずトロールに襲撃された爪痕は深く残っており復興の跡が見られるがそこまで進行はしていない様だ。
裕太達は村を訪れると歓迎され村長宅へと通される。
「ようそこ冒険者様、貴方様達のおかげでトロールの襲撃も無くなり平和に過ごす事が出来ております」
村長は和やかな笑みを浮かべる。
「別に私達のお陰じゃなくて聖王庁の連中のお陰でしょ? 私達じゃなくてそっちに感謝した方がいいと思うのだけど」
「いえいえ、此処まであんな低賃金で依頼を引き受けてくれただけでもありがたいのです……トロール一体に銀貨一枚など釣り合いませんのに」
「相場でもトロールは銀貨1枚だし、気にしなくてもいいのだけど……」とミリスはポツリと呟く。
「それで此度はどの様なご用件で? そう言えばそこの氷人族の娘さんはだいぶ前にいらっしゃったお方では無いですか」
「まぁ、この氷人族の付き添いの旅の道中でよったて事よ」
「そうですか、それなら恩もありますし前回泊まられた空き家をお貸しします」
「そう……それは助かるわ」
そう言い裕太達は少し前のトロール討伐でも貸し出された空き家に泊まることにした。
空き家は前回訪れた時となんな変わりは無く、いつなんどき客人が来てもいい様にと部屋の掃除だけはされていた。
「なんかこの部屋もほんの少し前に来たのに懐かしいな」
「裕太達はこんな部屋を貸し出して貰ってたの? 私は馬小屋だったのに」とフェミルは愚痴を飛ばす。
「それにしてもこれからどうするの? 街道を外れて進むつもり?」
ミリスはフェミルに問いかける。
「うん、そうなる、暫くは野宿が必要になると思われる」
「モンスターの襲撃の心配はないの? 一応あの辺も馬鹿みたいにいるじゃない」
「その心配はない、あの辺りは神聖リユニオン帝国領でモンスターは粗方一掃されてる、でも逆に領内を徘徊してる兵士に見つかると厄介、裕太はともかく私とミリスは敵対視されてる」
「あの国も厄介なんだな」裕太はポツリとそう言う。
「そうね、あの国のせいで私がどれだけ苦しんだことか……」
ミリスは深い溜息を吐く、何かあまり良くない思い出があの国にはあるのだろう。
「それと裕太、後で血を分けてくれないかしら、少し身体がだるくなってきてね……」
「嗚呼、俺のなら幾らでも大丈夫だが」
ミリスは突如倦怠感が身体を襲い、立ち眩みする、恐らくは血液の効力が切れ始めたのであろう。
「それなら私は席を外す、私がいたら気まずいだろうし」
「えぇ、そうして貰うと助かるわ」
フェミルはそう言うと部屋から出ていき、その場を後にする。
「……それじゃあ貰うわね」
ミリスはそう言うと裕太の首筋に歯を立て噛みつく。
彼女には人間よりも鋭利な八重歯が生えており、それが彼女が純粋な人種では無いことを物語っていた。




