第十三話
「おい、さっきからお主は何を見ているじゃ?」
「夜景です。ここから中華街の大通りが見えるんだなって思いましてね。」
普通アジトというのは曇りガラスが基本なのだが、この窓は普通の窓だった事が珍しかったので、自分でもよく通りかかる中華街の大通りを見ながら案内されていた。
メイという少女は窓から自分が何を見ていたのかよほど気になったらしく。
同じようにして見ようとする。
「ぅ。」
…が、背が足りないので自分の胸くらいの窓から見ようとしたのだろう。精一杯背伸びをしてつま先で立っていた。
「こっ、この町の夜景など何度見ても変わりなかろうっ!!」
「ぷっ。」
「なっ、何がおかしいっ!?」
実際失礼だと思った。
だが、その仕草がとても可愛らしかったので少し笑っている自分に対して顔を赤らめながらムキになりだしたので、落ち着かせる為に一つ気になる事を聞いて見た。
「ああ、ごめん。ですけど普段どの辺に住んでいるのですか?」
「まるで近場に私が住んでいるような言い方じゃのう、どうしてそう聞くのじゃ?」
「気のせいかもしれないですけどね。
普通は『こんな町』って、言葉を使わないでしょう?
まるでこの周辺の夜景を何度も見るような言い方でしたので。
少し気になったのですよ。」
「なるほど、お爺様の言う通りなかなか賢いようじゃな。お主は。
この町には兄上様3人と一緒に最近越して来たのじゃ。
お主もよく出没するという事は、この辺に住んでおるのか?」
「まあ、そんな感じです…。」
「……。」
「なっ、何故、何も言わんのじゃ?」
「えっ?」
「『えっ』ではない、どうして住んでいる場所を言わないのじゃと聞いておるのじゃ。
お主さすがに失礼じゃぞ?」
「そんな事言われても、私は組織の人間相手に自分の居場所を教えるほど無用心じゃありませんよ。」
「ワシはそんな事で脅すような輩にお主は見えるか?」
「貴女はそんな事はしないかもしれませんが、周りは…って事もありますのでね。
ですから、その辺は勘弁してもらえないでしょうかね?」
「…まあよい、別にお主の住処を知った所で、ワシが遊びに行ってやろうと思っただけじゃからな。
組織の話になると兄上や、お爺様に迷惑が掛ける事になるやもしれんから。許してやる。
じゃが、年齢くらいは聞いて良いじゃろう?」
「すいませんけど、それも結構マズいんですよ。」
さすがにどんな質問もこの種の回答が出てきそうだったので、
『大体、レフィーユの年齢のプラスマイナス1ぐらいです』と答えて上げた。
「おお、それならワシと一緒ぐらいではないか。」
「へえ、そうなんですか。
って、この名前をこういう組織の中で口に出していいのですかね?」
「別に構わんじゃろう、お主も追われていると聞くからのう。
敵対している人間の名前が挙がっても何の不思議はあるまい。
それにレフィーユはワシも憧れさせてもらっておるからな。」
どうも彼女を目標としている女性は多いらしく、メイもその一人らしいので、日々頑張っているらしいのだ。
だが、その事より気になったのは…。
「レフィーユと一緒の年齢、なんですか…。」
自分の身長が170くらい(やや本人の見栄あり)だとすると、レフィーユの身長は180だった(自分より高いのだ、悪いか?)。
そして当然、メイを見る視線は…。
「やはりお主は失礼なヤツなのだな。
まだ18なのだ。発育などこれからだ。」
「何も言ってないでしょう。ただ…。」
「ただ…なんじゃ?」
『履歴書や、プロフィールに身長を書く時は、18歳の身長を記されている事が多いのは何故か?』
ふとそんな問題文が浮かんだので、答えを思い浮かべてみた。
『A.成長が止まる事が多いから』
その答えを口にできるほど…自分は強くなかったので…。
「まあ頑張ってください」と励ましてあげた。