第十四話
諸事情(遊び)で遅くなりました。
すんません。
「来たか、好きなトコロに掛けてもらっても構わんよ。」
そう言われたので、一応正面の席に座る。それを見て老人は何か差し出してきた。
「何か頼むかね?」
「いえ、ここは料亭というワケじゃありませんからいいですよ。」
「そうかの、じゃあワシは腹が減って仕方ない、だから何か頼む事にしようかのう。」
そう言って、手元の電話を手にして餃子、フカヒレスープ、チャーハンを頼み出した。
「あの、こちらとしては用件を早く済ませて帰りたいんですけど。」
「敵地だから落ち着かないのかね?
食事に何か含ませて、命をとろうなど考えてはおらぬよ。
むしろ、感謝しておるのじゃからな。」
「感謝?」
「そうじゃ、ワシの息子をお前が助けてくれたらしいのう。」
「あの取引の時の人ですか?」
「ああ、あれが今の華中会のボスなのでな。
先代のワシが代表して礼を言わしてもらおう。」
そう言って、感謝の意を込めて先代のボスである老人は頭下げた。
「ですけど結果的に、そんな事態に陥るまで見逃していたというワケですから、
感謝されても困りますよ。
それで今、その人の容態は、ええと?」
「…死んだよ。
助かったのは、ヤツの手下一人だけじゃ…。
ほほ、そう警戒しなさんな。
あれはヤツの注意不足が招いた結果なのじゃからな。」
そう明るく振舞って言う、だが老人が少し目を伏せながらため息を付くのを見て、それが嘘だとわかったので、しばらく黙っておく事にした。
「お爺様、料理を運んできたのじゃ。」
どれくらい沈黙していたのだろうか、その言葉に少し驚きながら声のした方を向くと、メイが料理を運んできた。
「おっ、おお、メイが運んで来たのか、ここに置いてくれ、後は自分で装うからのう。」
「お爺様、何だか元気がないようじゃ、お主、まさか『闇』で何かしたのではなかろうな?」
「これこれ、メイや、そうではない、お前の兄さんの話をしていて、少し湿っぽくなっただけじゃ。
メイは大人しく自分の部屋に戻ってなさい。」
メイは子供扱いされたと思ったのか、『むすっ』としてしぶしぶ出て行った。
「すまないのう、失礼な事を言って。」
「いえ、お構いなく、いつもの事ですから、
部屋を一通り見て気付いたのですけど、骨董の趣味があるのですか?」
気まずい沈黙の間、目線に困っていたので、壁にコレクションのように掛けられた拳銃の数々の方が気になったので、聞いて見る事にした。
「今は魔力による防衛本能でこんなモノを人に撃ったら、
人間だけは死に至らしめる事は出来なくなってしもうたからのう。
今じゃあ、持っているだけで物騒な粗大ゴミじゃ。
お主、一つどうかね?」
そう言ってオキナは、壁に掛けられた拳銃の一つを差し出した。
「コレ、ホンモノですか?」
「弾も入ってとるよ。撃ってみるかね?」
「遠慮しておきますよ。
そんなモノを持ってるだけで、銃刀法違反で捕まりますからね。」
「おお、まだこの国にはそんな法律があったのかの?
まあよい、これを知っておるかね?」
そう言って、一枚の紙を差し出して来た。
「これは…トカレフでしたっけ?」
当然、そんな事は書いてなかった。
『盗聴されている』
メモに書かれている内容はそんなモノだった。
「ほう、博識じゃのう。」
「『コレ』は、何ですかね。」
「ほほ、見事なモンじゃのう。」
闇が取り出して来たのは、盗聴器だったのでオキナは笑い出した。
「コレで内容は聞こえませんよ。
それで誰が、こんな事をするのか目星は付いてるのですか?」
「ワシの息子達じゃろうな。」
「じゃあ自分に頼みというのは、その二人のどちらかやったのかを調べろと言う事ですか?」
「いや、お主には、その取引相手の事を調べておいてもらおうと思ったのじゃよ。
聞けばその相手が用意した化け物にやられたらしいからのう。」
「それで落とし前を付ける為にそちらに正体を知らせろ。と?」
「まあ、そんなトコロじゃ、やってくれるかのう?」
「別に構わないのですけど、盗聴の事は良いのですか?」
「そっちは、ワシらの方の問題じゃからのう。
お主は気にしないで、取引相手の事を調べてくれるかの?」
「はい、わかりました。
ですけど、コロウとキジュツさん…でしたっけ、一つ気になってるので聞いていいですかね。」
「あの二人がどうかしたのかのう?」
「ホントに血が繋がっているのですかと思いましてね。
すいません、こんな無粋な質問して、ですけど何ていうか歳がかけ離れすぎていて…。」
「ほほ、いいのじゃよ。
察しの通り、血など繋がっておらぬよ。
4兄妹全員のう。」
「4兄妹…、あのボスの人を含めてという事ですよね。」
「そうじゃが?」
「ホントに失礼を承知で、少し矛盾している事を聞いて良いですかね?
華中会で『4人も兄妹』がいるという事は、おかしいですよね?」
「おかしいとは、なんの事じゃ?」
「『あれ』の事ですよ。」
「『あれ』とは?」
オキナは『あれ』の意味を知っているのだろう、だからあえて自分の口から言わせるつもりなのがみえみえだった。
だが、そこでひきさがるワケにはいかなかったので緊張を誤魔化しながら口にする事にした。
「『儀式』の事ですよ。
有名ですから言いますけど、華中会の4人の血筋を殺し合わせて、最も強い血筋を残したという事でボスになるというヤツでしたよね?
4兄妹がいる…まあ『いた』という事はそれをしないでボスが決まったという事ですか?」
「ワシらの古臭い伝統をよく知っておるのう、そんな事をお主は信じるのかね?」
オキナはおどけるようにいうが、緊張のないそのセリフが逆に儀式の存在を裏付けていた。
「あなたは、その儀式で生き残ったからボスになったと、お昼のワイドショーでもやってますからね。
聞かずにいられませんよ。」
「ワイドショーも馬鹿に出来んのう。」
ふぉふぉと、笑っていたが急に目が鋭くなった。
「まあ、その事じゃが、今回は行なう前にボスが決まったのじゃよ。」
「わからないですね。
まるでその人にしか、ボスが務まらないような言い方ですよ。」
「ひどい言われようじゃな。」
『じゃがな。』とオキナはこちらに目を鋭くしたままじっと見つめて確かに言った。
「あの者以上に、華中会のポスに相応しい者はおらんよ。」
まるで、そのボスのおかげで今の華中会が安定していたのだと言うように…




