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「服田さん。明日も、富田幸助が社長だった建設会社に向かうのですか?」と相沢が服田に聞いた。服田は、大きく首を縦に動かしてそれを認める。その時、相沢の綺麗に整えられた眉毛が上に動いたのを良明は確認する。
「実は、あの建設会社について分かったことがあるんです」
「どういうこと?」と相沢の言葉に対して、章子が反応した。
相沢は、章子の顔と服田の顔を交互に見ながらこう話した。
「6年前の都市開発計画にも、あの建設会社は研究施設に設計等で絡んでましたが、今持ち上がっている開発計画においても同様に絡んでいます」
だから当時、建設会社社長であった富田幸助は殺されたのであろうかと良明は考えた。それは西沢美夜古であるか、それとも時田和夫なのだろうか。良明の頭の中ではその二つの名前が交互に思い浮かんでいた。
「研究施設の設計か」と服田がつぶやいた。服田はさらに、「それで奴は殺されたか…?孤児院をつぶすことに反対していた時田和夫か…西沢美夜古に」
服田がそう言った瞬間、文音の顔が下を向いた。横にいた良明は、そっと文音の肩に手をまわして慰めようとする。文音は小さな声で「ありがとう」とつぶやいた。
「分かったことはそれだけではありませんよ。その研究施設は、孤児院があった場所に建てられようとしていたのです」と相沢が口にすると、服田は「なんだと?」と驚愕の声を上げた。相沢はさらに、その計画の立案者が富田幸助であったと述べた。
服田は、頭をかきながら県警のエントランスを歩き回り始めた。何か思考を凝らしているのだろうか。良明は、あそこまで難しい顔をした服田を始めて見ることになった。
さらに、相沢の供述は続く。次に相沢は、西沢美夜古と富田幸助の関係について話し始めたのだ。
「富田幸助が遺体で見つかった時、右胸のポケットには、西沢美夜古と映ったプリクラが入っていました」
「俺は、そんなこと知らないぞ!」と服田は再び驚いた声を出した。朝比奈も、「俺も初耳だ」と言う。驚きを隠せない2人とは対照的に、相沢は落ち着いた雰囲気で話を続けていた。
「そうですね。それを知っていたのは、取り調べをした古東さんと現場に最初に駆け付けた警察官のみですから」
「古東さんは…、古東さんは西沢美夜古と富田幸助の関係について、何か取り調べでつかんでいたのですか?」と良明は思わず相沢に聞いた。すると相沢は、小刻みに首を数回縦に動かした。やはり、古東は美夜古と富田幸助の関係について、美夜古本人から何か聞いていたみたいだ。
「西沢美夜古は、富田幸助と不倫関係にあったと言っていたみたい。他の4人ともそうだけど…」
その相沢の返答は、良明が大体予想していたものであった。隣にいる文音を抱く手の力が強まっていることに、良明は気づいた。再び、良明は得体のしれない無力感を感じ始めていた。
「違う…」と文音が小さな声でつぶやいた。良明は「文音ちゃん。どうしたの?」と思わず声をかける。しかし、文音の目からは涙があふれ出していた。
「お姉ちゃんが不倫なんてするわけないんだ。殺人をしていたかどうかも分からなくなったのに…。もう警察なんか信じれるか!」
そう言って文音は駆け出して、県警の出入り口から外へと出て行った。良明は慌てて文音を追いかける。良明はすぐに文音に追いつき、必死で文音を抱きしめた。
「良明くん…。お姉ちゃんは優しかったんだよ。本当に」
良明はただ黙って、文音の言葉を受け止めていた。それと同時に、良明の体を締め付ける違和感は異常なほど大きいものになっていた。
何か雰囲気がいつもと違った。その雰囲気が、事件と何の関係があるのか、良明は今すぐにでも解明しなければならないと考え始めていた。野崎文音のためだけに。




