七話 「散歩」
夕夢はその日、バイトも大学もなかったので、何もする事がなかった。
アパートから離れたい気分だったので、歩きに出掛けた。
「大家、いない。......これもまたシナリオ」
家賃の期限が明日だったが出会う機会を逃れ、次見つかれば払わなければならない。
夕夢は出会わないことを暗に願いながらアパートを離れた。
暫く歩いて草木の多いところに来ると、夕夢は早歩きになった。
「ここ、やっぱり虫が多い。自然の強さはよく植物を想起させるけれど、決してそれだけにあらず......てね」
ある程度戻ってくると、打ち付けられた木に千切れた人形の手が乗っていた。
「世界は残酷って言うけれど、案外残酷なのは弱い方かもね。子どもだって、こんな事するんだもの」
人形の手を子どもがしたと勝手に決めつける夕夢であった。
アパートに戻ると、その前に大家が立っていた。
「......」
「お、帰ってきたな。お前家賃払えてなかっただろ」
「家賃?私から時間の対価を奪うの?」
「当たり前だろ。一室借りてるんだから」
「これがシナリオだと言うのね。でも良いわ。この続きの脚本は私が書くの。あなたの悲嘆で、この下らない話は幕を下ろすのよ」
「は......何分からねえ事――」
ワンワン!!
突然、大家の背後から犬が現れ、大家に襲い掛かる。
「ギャアアァア!!」
「いやあああああ!!」




