アウトポスト・バトル
金が、夕方17時過ぎに保養施設へ帰宅してから1時間もすると再び黒塗りのベンツが正面玄関口に停まった。正面玄関からはキューバシャツに黒のテイラードダブルのジャケットとセットアップのパンツに着替えた姿の金がベンツに乗り込むのをスポティングスコープで確認したカワサキは、M&P5.7拳銃をホルスターに入れてTシャツの上からホルスターを身に着け、黒のライダージャケットを羽織ってホルスターに入れた拳銃を隠すと、ライダージャケットの右サイドポケットに専用消音器を忍ばせ、左側のポケットにこの前奪っておいたマカロフ拳銃を突っ込んでマンションの部屋を出てホンダCBR400に跨がり勢い良くバイクを発進させた。
交差点でバイクを停めているとカワサキの目の前を金が乗っている黒塗りのベンツが三宮方面へ向けて通り過ぎて行くのを見付ける。カワサキはベンツから数メーターの距離を取ってバイクを走らせ尾行を開始する。ベンツを尾行し始めて間もなく後方からシルバーのアウディA400アバントがヘッドライトを照らしてカワサキとの車間距離を徐々に詰めてきた。その様子をバックミラーで確認していたカワサキは、CBR400の進路を小野浜町方面へ向けたが、シルバーのアウディは執拗にカワサキの後を付いてくる。カワサキのことを完全に尾行しているのをバックミラーを見て確信したカワサキはバイクのアクセルを更に開けて港の倉庫街を目指して疾走する。
小野浜町近くに差し掛かると、カワサキはわざと狭い路地を選んで走行する。尾行していたアウディは、カワサキを見失うことがないようにタイヤを鳴かせて大通りを疾走して行った。
カワサキが人通りのない倉庫街に辿り着くとCBR400を通り沿いの目立つところへ止めておき、少し離れた路地から様子を伺っていると、疾走していたアウディがカワサキのバイクに気付いたようで、CBR400を止めていた場所から10メートルくらい過ぎた辺りで急ブレーキを掛けて停車した。
アウディ後部の両方のドアが開くとオリーブ迷彩柄のコンバットスーツを着用した男2人が降りてCBR400に近付くとバイクの状態を確かめている。1人がバイクのエンジン付近を触ると大きな声で『未だ、野郎は遠くに行ってない』と叫ぶ、それをアウディの助手席で聞いた別の男が携帯電話で何処に連絡しているのがカワサキに見えた。
助手席の男が電話を終えると、運転席と助手席に座っていた男2人も車外に出て警戒を始めると、4人とも右手にはマカロフ拳銃が握られていた。
それを見たカワサキは潜んでいた路地の奥へ向かう際に、わざと物音を立てて歩き出した。その物音を聞き付けた4人は、カワサキが潜んでいた路地の近くに集まってくる。2人がマカロフ拳銃の銃口を前方へ向けてカワサキの跡を追うように路地の奥へ入って行く。
カワサキは、路地の奥で脇の方に置かれてたドラム缶に身を隠しながらやって来る2人の様子を伺いながら、ライダージャケットの左サイドポケットに忍ばせていたマカロフ拳銃を静かに取り出すと安全装置を外して直ぐに発砲できる状態にした。
路地に入ってきた2人の男が1メートルくらいの距離まで迫ってきた瞬間、カワサキは手前の男が握っているマカロフ拳銃の銃把底部に手を掛けて相手の顔付近に押し付けながら勢い良く体当たりをして、もう1人の男が重なるように反対側の壁に押しやる。壁側に押し付けられた男は、マカロフ拳銃の暴発に備えて銃口を下に向けていたが、壁に当たった弾みで引き金を引いてしまってマカロフ拳銃を暴発させた。撃ち出された弾丸は、カワサキに押さえ込まれている男の右脹脛に着弾すると、痛みに耐えかねた男はマカロフ拳銃が自分の顔の前にあるのも忘れて引き金を引いてしまい、弾丸は空へ向けて射出されマカロフ拳銃から排出された空薬莢は男の顔目掛けて飛び出し、顔に空薬莢が当たった男は『熱っ』と叫んだ。そのタイミングに合わせてカワサキが左手に持ったマカロフ拳銃を目の前に居る男の十二指腸辺りに向けて2発連続で発砲した。至近距離から放たれた弾丸は、手前にいる男の胃の幽門を貫いて、直ぐ後にいる男の腹部に食い込むが弾丸が変形している状態なので腸がズタズタに破壊される。
腹部を撃たれた2人は、内臓の出血に加えて酸性度の強い胃液まで漏れ出ているので、想像を絶するような痛みで卒倒寸前になっていた。その2人に対して、カワサキは容赦なく1発ずつヘッドショットを放ち絶命させる。
これまでの偵察で、金やボディーガードの連中が覚醒剤等の麻薬を使用している可能性が高く。通常、麻薬等の薬物を接種した場合には痛みの感覚が鈍るため即死となるような銃撃を与えないと反撃される恐れがある。
カワサキは、絶命した2人のマカロフ拳銃から弾倉を抜いて残弾を確認すると2つの弾倉とも8発の弾薬が装填されているのが確認できたので、自分のマカロフ拳銃から弾倉を外して奪った弾倉の1つを自分のマカロフ拳銃に装填した。もう1つの弾倉はデニムジーンズの右側の尻ポケットに差し込む。
路地の入り口で拳銃の発砲音を聞いた2人は、大声で『どうした?』等と問い掛けるが反応がないことが分かると2人揃ってマカロフ拳銃を路地に向けて乱射してきた。
カワサキは、手前に転がっている死体の首元を掴んで力任せに立たせて死体を盾代わりにすると僅かな物陰に身体を隠していると乱射された弾丸が死体に数発食い込むのが分かる。
仲間が2人同時に殺られたことで動揺した2人が見境なしにマカロフ拳銃を乱射したので、どちらも弾倉が空となってしまった。2人のマカロフ拳銃の遊底が後退したままで動かないことに焦った2人は弾倉を外そうと必死になっているが上手く外せない。数多くの射撃訓練等を行い身体に覚え込ませるようにしないと実践で的確に動けることはなく、2人とも弾倉がまったく外せないでいた。
死体を盾にしていたカワサキは、盾にしていた死体を放り出すと路地の入り口に向かって走り出し路地から出ると同時に、マカロフ拳銃から弾倉を外そうと焦っている2人の心臓と肺が重なる辺りに向けて2発ずつマカロフ拳銃を発砲した。2人の身体から肋骨が砕けるような音が聞こえ口や鼻の孔から血を噴き出して路上に倒れた。
路上に倒れている2人に近づくと、カワサキは容赦なくヘッドショットを1発ずつ撃ち込んで止めを刺す。絶命した2人のコンバットスーツを探ると予備弾倉が胸のポケットから出てきたので、2個の弾倉を自分のジーンズの尻ポケットに差し込んだ時、複数のバイクの排気音が近付いてくるのが分かった。
今は死体となったアウディの助手席で携帯電話をしていたのは仲間への応援要請だったのであろう。しかし、今の銃撃戦でボディーガードの連中は射撃訓練を経験していないばかりか、拳銃の取り扱いについても全くの素人であることがカワサキには分かった。そうなると数人規模で襲撃されてもカワサキにとって大した脅威にはならない。
射殺した4人の死体をそのままにしてカワサキはアウディの陰に隠れて、バイクでやって来る連中を待ち伏せることにする。
程無くするとバイクのヘッドライトが4灯見えてきた。応援に来た連中が道路脇に転がる2人の死体を見付けると、バイクを停めて一斉にコンバットスーツのポケットに隠していたマカロフ拳銃を取り出した。1人がバイクから降りて『おいっ』と大声で呼び掛けるが誰も返事をしないので、他の3人もバイクから降りて道路脇の死体に集まって行くのを目にしたカワサキは、アウディの物陰から音も無く立ち上がると左手に持ったマカロフ拳銃で1人に2発ずつ胸の辺りへ目掛けて発砲した。
撃たれた4人は、マカロフ拳銃を放り出して被弾した辺りを手で押さえながら路上に倒れ込むが、その間にカワサキは空になった弾倉をマカロフ拳銃から抜き去り、尻ポケットに突っ込んでいた予備弾倉の1つを右手で掴んでマカロフ拳銃に装填した。
路上に倒れ込んだ4人それぞれにマカロフ拳銃で狙いながら近付いたカワサキは、4人のヘルメットのバイザー越しにマカロフ拳銃を1発ずつ発砲するとヘルメットの中はすっかり血と脳漿で満たされているので、ヘルメットを着けたままでは顔の判別がつかないくらいの状態になっていた。
4人の絶命を確認したカワサキは、自らが持っているマカロフ拳銃から弾倉を抜き、次いで遊底を引いて薬室に装填されている弾薬も抜き取るとマカロフ拳銃を4人の死体に向けて放り投げた。薬室から抜いた弾薬を弾倉に再び装填すると尻ポケットに突っ込んでいた残りの弾倉と一纏めにしてアウディの方へ投げつける。
小走りでCBR400に戻ったカワサキは、バイクのエンジンを掛けるとそれまで両手に嵌めていた薄型の使い捨て衛生ゴム手袋を外してライダージャケットのポケットに仕舞う、自らの手汗で指先がふやけていたので夜風に当たると心地好い。
今夜は、このままマンションの駐輪場や近くの有料駐車場にバイクを停めて置けないので、マンションから多少離れて目立たぬ空き地にバイクを停めて徒歩でマンションへ帰った。最上階の部屋に戻るが室内灯を点けずに、窓際に設置したスポティングスコープで保養施設の建物を覗いてみると玄関灯が煌々と点灯している正面玄関前でオリーブ迷彩柄のコンバットスーツを着た数人が忙しなく動き回っている。
スポティングスコープで覗いているカワサキには、正面玄関に居る連中の声までは聞くことができないが、たぶんカワサキを襲撃しに行った仲間と連絡を取ろうとしているのかもしれないが、何度も携帯電話を掛けているが誰1人として応答しないので苛立っているのだろう。彼等がどんなに電話を掛けても襲撃に出た8名は全員、カワサキによって返り討ちにあって死亡しているので保養施設で待機している連中に連絡できるわけがない。
そこへ、正面のゲートが開いて黒塗りのベンツが帰ってきた。ベンツが正面玄関前に停車して、左の後部ドアが勢い良く開くと険しい表情の金が降りてきて目の前に居た待機組の1人に声高に何かを叫んでいる。金から厳しい言葉を浴びせられたボディーガードは、瞬時に驚愕の表情を浮かべると金に従って施設の中に入って行った。
2人が施設内に消えてから暫くすると再び正面のゲートが開き、黒塗りのトヨタ・アルファード・ハイブリッド2WDが4台続けざまに施設内へ入って行き正面玄関付近で停車した。
停車した4台のアルファードから、スライドドアを開けてオリーブ迷彩柄のコンバットスーツを着用し右手にマカロフ拳銃を持った状態で降りてきた男達は銃口を下に向けて周囲の警戒を始めた。
暫くして、施設の正面玄関ドアが開かれボディーガードに警護された金がベンツの左後部座席に乗り込むのが見えた。
金がベンツに乗り込むと、ボディーガード達は4台のアルファードにそれぞれ乗り込むと、ベンツを真ん中にした5台の車列が保養施設を出発して行った。
その光景を見ていたカワサキは、ただならぬ気配を感じて充電器に刺していたタブレット端末を手に取るとCIAへ今夜あった出来事の詳細を報告すると同時に、金が10名以上のボディーガードを引き連れて車両で保養施設から移動していることを伝え監視衛星で金の動きをホローするように依頼した。
暫くすると、CIAからのメールでカワサキの依頼を受けて、金を24時間の監視対象とした旨の連絡がきた。
そのメールに目を通すと、カワサキは銃撃戦の直後で多少の興奮状態で眠りにつける状態ではなかったが、これからの行動に支障がないよう体力温存のためも無理に仮眠を取ることにした。




