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これまでカワサキが行っていた金の偵察内容は全てCIAに報告していたが、現時点までは金の暗殺を事故に装って実行できそうなチャンスは見当たらない。
カワサキとしては更に偵察を続けて僅かなチャンスがないかを探りたいのだが、何せ対象者である金は神戸のオフィス以外に外出することがなく、殆んどが保養施設に籠りっきりなので手の施しようがない。
その点については、CIAも24時間体制で監視をしているのでカワサキの言い分は充分に理解してくれているが、本来の目的である金暗殺を実現することを念頭にCIAが極秘開発した経皮毒を使用することを提案してきた。
CIAが開発した経皮毒は、見た目が名刺サイズくらいで肩凝り等に使う湿布の様になっており、使用にあたっては通常の湿布薬であれば透明なフィルムを剥がして白い部分を患部に貼るのだが、開発した経皮毒は剥がした透明のフィルムを対象者の皮膚に直接貼り付ける事で皮膚からジギタリス成分が吸収されて不整脈を誘発し対象者を心臓疾患に見せ掛けて暗殺する事ができる。また、この開発された毒薬は皮膚に対して刺激性が少ないためにフィルムが貼り付けられた箇所に跡が残り難いことから殺害が行われたという証拠を残さないというメリットがある反面、使用にあたっては対象者に接近して貼り付ける事が必要になるのと貼り付けた状態で30秒以上は経過しないと対象者の皮膚表面に毒の成分が付着しないというデメリットがある。
カワサキもCIAからの提案について考慮する必要があると考えて、経皮毒を送ってもらうように依頼すると同時に、新たな銃器としてFNハースタル社製のP90という短機関銃と専用消音器、それとM&P5.7拳銃にも使用した5.7×28ミリメートル亜音速弾を100発分も送ってもらうよう依頼した。
FNハースタル社製のP90は、1980年代末に個人防衛火器という分類で開発された短機関銃で特徴は、銃器の機関部が引き金より後部に位置するブルパップ方式という造りであることから銃身長を比較的長くしているものの銃器の全長を短くでき、屋内等では圧倒的に取り回しが容易となる。更に、使用する弾薬は5.7×28ミリメートル弾であることから弾丸が軽量で高い初速が得られることから弾丸の運動エネルギーを狭いエリアへ集中させるため有効射程距離である200メートルからでも防弾チョッキを貫通する威力を有するほか、弾薬のサイズが比較的細いことからP90の弾倉には50発の弾薬を装填できファイヤーパワーの面でも充分に優れている。
CIAへ装備品の依頼のメールを送った後は、引き続き金の監視を継続した。これまでの偵察では銃器による襲撃ポイントを念頭に検討していたが、CIAからの提案である経皮毒を使用した暗殺となれば、金のボディーガードから邪魔されることなく金に近づくチャンスを探す観点で偵察する必要が出てきた。
そのため、これまでは金が帰宅した際はベンツが保養施設の正面ゲートを潜るのを少し離れた距離から見届けていたのだが、これからはベンツが正面ゲートを潜る際にはホンダフォルサァ300で正面ゲート前を素通りする事でギリギリまで近くから偵察する事にした。
そのように行動を変えてから3日目、いつもであればベンツが正面ゲートを潜ると直ぐに閉じられるはずのゲートが開いたままになっていた。それを見たカワサキは、正面ゲートから30メートルくらい過ぎた辺りで一旦ホンダフォルサァ300を停車させてバックミラーで様子を伺っていると、敷地の中から大きな排気音を轟かせて赤いスポーツカーが出てきた。スポーツカーはカワサキがいる方へ向けてスピードを上げて爆走して来る。車はポルシェ718ケイマンであったが、擦れ違う瞬間にカワサキには脳裏に閃くものを感じて。ジャケットの内ポケットに入れていたスマートフォンを取り出して然り気無く走り去るポルシェの後部を撮影した。
マンスリーマンションに帰宅したカワサキは、金の偵察よりも先程のポルシェの画像をCIAへ送り、ポルシェの所有者等の詳細を調べて欲しいと依頼した。保養施設から出てきた赤いポルシェは佐藤彩芽を轢き殺したスポーツカーに外観が似ている。残念なのは轢き逃げしたスポーツカーのナンバープレートが見れなかったので、先程のポルシェに対して確証は持てなかったのだが、カワサキの脳裏には何となく引っ掛かるものがあった。佐藤彩芽の事故について真相を探る手段に行き詰まっていたカワサキにとって僅かな光明が射してきたように感じて内心は落ち着かない状態であったが、CIAへメールを送った後は通常通りに金の偵察を続けた
帰宅した後の金は相変わらず、これと言った動きがない状態であったが午後11時過ぎにCIAからカワサキの照会に対する回答をメールで送ってきた。ポルシェの所有者は金龍雄の息子である金城光一こと金光一で、在日朝鮮人同胞連合のナンバーツーとのことであった。最もナンバーツーの立場でいられるのは父親の威光によるものらしく金光一自身の実力でないようで、せいぜい関西の半グレグループとの付き合いがあるくらいの道楽息子というのがCIAの分析であった。
そこまでの資料に目を通したカワサキは、更に佐藤彩芽が交通事故にあった日時のポルシェを調べて欲しいと半分駄目もとで問い合わせてみた。
翌日、CIAからのメールには金暗殺と直接関係がないと判断される調査に時間と人員を割くことはできないといった回答が送られてきた。その回答を見たカワサキは、大いに落胆したというのが本心であったが、本命の金龍雄の暗殺手段が見出だせていない状況ではCIAの回答を尊重せざるを得ないとも言えた。
冷静に考えたカワサキは、一刻も早く金龍雄の暗殺を完了すれば、行き詰まっていた佐藤彩芽の事故の真相追求を再開できるし、もしも息子の金光一が関係しているのであれば、在日朝鮮人同胞連合のナンバーツーである金光一も暗殺対象としてCIAに提案すれば良いだけのことである。
金龍雄の偵察を開始して3週目の週末、相変わらず動きのない金に対してイライラが募っていたカワサキの元にCIAから朗報がメールされてきた。翌月の10日に在日朝鮮人同胞連合が関与している朝鮮信用金庫という金融機関の創立50周年記念パーティが開催される予定で、そのパーティには関西の主だった経済人や著名人が招待されるほか金龍雄にも案内されているそうなので、そのパーティ開催を利用してCIAが開発した経皮毒を使用して暗殺する事を提案してきた。
そもそも、在日朝鮮人同胞連合というのは日本における北朝鮮の大使館的な存在で違法薬物やサイバーテロを民間企業に仕掛けるような犯罪行為だけではなく、実質的傘下には金融機関や輸入貿易商社、精密機械加工会社等の表向きは直接犯罪とは結び付かない民間企業を従え、北朝鮮本国が必要とする外貨や各種物資の調達を、これらの企業を利用して行うために存在している。
カワサキは今回、CIAの提案に従おうと判断して一度アジトへ戻る事を決め、提案された毒殺で金暗殺を行う旨を伝えるのと同時に必要な装備品の受け取りについての指示を受けるためにCIAへメールを送った。
CIAからの返信は思いのほか早く、今月末にはアジトの方へ装備品を送る手筈を整えるとのことであった。ただし、経皮毒については架空の医薬品メーカーの名前で試供品の提供という体裁を使って郵送するので、毒薬が手元に届いたら同封の取り扱い説明書を熟読しておくよう指示がされていた。
CIAからのメールを読んだカワサキは、早速荷物を纏め始める。ホンダフォルサァ300は購入したバイクショップに格安で引き取ってもらい、リース会社へ赴くとマンスリーマンションの退去手続きと家賃の支払いを済ませて、パジェロミニに荷物を積み込んでアジトへ戻った。
アジトへ戻ってから4日後、郵便受けに見知らぬ名前の製薬会社から試供品がダイレクトメールで送られてきた。届いたダイレクトメールの封を切って中身を確認するとビニールの小分け袋に肩凝りの患部へ貼る名刺サイズの湿布薬みたいな品物が1枚入っていた。更に四つ折りにされたA4サイズの用紙には左上に赤い大きな文字でデンジャーとリードマニュアルと書かれ、箇条書きで4項目が記載されていた。
・この薬物の使用にあたっては、透明のフィルムの方を使うこと。白い湿布薬のように見えるのが保護フィルムとなっている事に注意すること。なお、保護フィルムを破棄する場合は透明フィルムとの接着面を内側に折ってから投棄すること。
・透明フィルムを保護フィルムから剥がす場合には、フィルム先端部に赤いラインが印刷されている側から剥がすこと。赤いラインから内側1インチのエリアのみ毒薬が塗布されていないので注意すること。
・対象者へ透明フィルムを貼り付ける場合は、毒薬が塗布されている側を貼り付けること。なお、毒薬には粘着性を持たせているので対象者の皮膚に直接フィルムが触れる程度であれば張り付くためフィルムの上から押さえ付ける必要はない。
・誤って毒薬が塗布されている部分に触れた場合は、3分以内に消毒用アルコールを使い触れた箇所を5分以上洗浄すること。
同封されていた注意事項から判断すると、金との接触は一瞬で良いことになるので、ワンチャンスで金の視界からブラインドとなる箇所へ経皮毒を貼り付ければ良い。
朝鮮信用金庫の創立50周年記念パーティを暗殺決行日にするとして、カワサキがパーティ会場内に入り込む事は困難であろうから、狙うとすれば金がパーティ会場の外へ出て来た時ということになる。
その観点でカワサキが想定しているチャンスは、不確定要素が多いがパーティの最中に金が会場からトイレへ向い小用をしている最中か、パーティを途中で中座して帰宅するために単独でホテルの正面玄関口へ向かう際のエレベーター内と考えている。但し、どちらにしても訪れたチャンスで的確に対応して迷いなく実行しなければならない。
暗殺決行日とした朝鮮信用金庫の創立記念パーティ当日、カワサキはボタンダウンのデニムシャツにブラウンのカジュアルブレザー、黒のデニムパンツとダークブラウンのチャカブーツの出で立ちで、パーティ会場となるホテルへ早目に到着していた。ホテルの1階ロビーに掲示されている会合予定表で朝鮮信用金庫の創立50周年記念パーティが3階の大宴会場で行われる事を確認すると、階段を使って3階へ向かい大宴会場のエントランスの状況や男子トイレの位置やトイレの内部を確認しておいた。
事前の確認で、カワサキにとって都合が良かったのは大ホールのエントランスが4階まで吹き抜けの造りになっていたため、わざわざ3階に居なくても4階から金がパーティ会場に入るのを確認することが出来るだけではなく、受付の人間がエントランスから居なくなるのも確認しやすいことであった。そこまでの確認をしたカワサキは、1階ロビーの喫茶ルームで時折正面玄関に視線を向けながらコーヒーを飲んでいた。CIAからの資料によればパーティの受付開始時間は午後6時30分からとなっていたので、間もなく朝鮮信用金庫の行員達が受付準備等をしにホテルへ来るはずなので行員達の到着を待っていた。
冷たくなったコーヒーを飲み終えて腕時計を見ると午後6時になろうとした時に、朝鮮信用金庫の行員と思われる10名程の一行がホテルのフロントへ向かって行くのが見えた。一行の1人がフロントに声を掛けるとホテルのフロントが電話の受話器を取り上げて何事かを話すと、ホテルのコンシェルジュが現れて一行を案内して3階へ向かった。
その様子を見ていたカワサキは喫茶ルームを出て階段で4階へ向かう、4階に到着したカワサキは吹き抜けへ向かって3階の様子を眺める。若手の行員数名は、受付用の机に持参してきた受付名簿やパーティ次第等の準備物を並べ始め、年配の役員と思われる数名はコンシェルジュから会場内のセッティング状況の説明を受けているようであった。
そこまでを見届けたカワサキは、再び1階のロビーへ降りていった。これからはロビーでパーティ会場へ向かう金の服装等をチェックして暗殺に備えなければならない。
カワサキの腕時計が午後6時30分を過ぎた頃になると一目でパーティ出席者と分かる服装をした男女が次々とホテルの正面玄関から入って来るが金は未だ現れない。
そろそろ午後7時になりそうな頃、ホテルの正面玄関口に黒塗りのベンツが横付けしてくるとホテルのドアマンがベンツの左後部ドアに近づいてドアを開ける。金縁眼鏡を掛けた金がベンツから降りてくると、いつの間にか朝鮮信用金庫の役員連中が正面玄関口に並んで金を出迎えて、金をパーティ会場へ案内していく。
パーティ会場に現れた金は、上下揃いのチャコールグレーのスーツに白いドレスシャツ、そしてアスコットタイという装いである。
金の到着した様子をロビーのソファから見ていたカワサキは、ゆっくりと立ち上がると階段を使って4階へ向かった。4階に到着したカワサキが吹き抜け部から3階のエントランスを眺めると、朝鮮信用金庫の役員と金はホテルのロビースタッフが開けた扉からパーティ会場へ入っていった。
暫くすれば、パーティが開会するであろうから午後7時30分を過ぎた頃には受付の連中もエントランスからパーティ会場内に移動すると思われるので、受付の連中が居なくなったら階段で3階へ降りれば良い。
パーティ会場の中から微かに拍手の音が聞こえてくると受付に居た若手の行員達は受付用テーブルに並べていた名簿や式次第等を片付け始めた。それを見たカワサキが、階段の踊り場まで降りてみると片付けが終わった行員達がパーティ会場の扉を細目に開けて会場内に入って行くのが見えた。それを確認したカワサキは、3階に降り立ち階段の目立たぬ場所でパーティ会場の扉を注視していた。
パーティがスタートして1時間あまりが経過した頃、パーティ会場の扉がホールスタッフによって開かれると金が1人で出てきた。
それを見たカワサキは、瞬間的に金が小用のためにトイレへ向かうものと判断して、急いで3階のトイレへ向かった。
金より先にトイレに入ったカワサキは、個室ブースに入って扉を閉めてロックを掛けるとジャケットのポケットに入れてた経皮毒を透明フィルムのセーフティエリアに手を掛けるのと同時に、トイレの扉が開く音が聞こえ小用便器に人が立つ気配を感じた。カワサキは、個室ブースの水洗タンクの脇にあるレバーハンドルを回して水を流すと透明フィルムを剥がし保護フィルムをトイレに捨ててから、個室ブースの扉を開けて少し千鳥足を装って小用を足している金の背後に近づいた。わざと金の背中に軽くぶつかって『失礼』と言いながら金の首に経皮毒が塗布されているフィルムをそっと貼り付けた。一瞬、怪訝そうな顔を横に向けてカワサキの方を見たが酔っ払ったようなカワサキに気が付くと何事もなかったような無表情に戻って小用を足している。
カワサキは、トイレの洗面台で手を洗い、備え付けのペーパータオルで手を拭くと使用済みのペーパータオルをゴミ箱へ捨ててトイレを出た。トイレを出たカワサキは、慌てることなく階段で4階の吹き抜け部へ向かって、そこからトイレを出た金の様子を眺めるとカワサキが張り付けたフィルムは金の首の後ろに張り付いたままであった。金は真っ直ぐにパーティ会場へ戻っていったが、会場内で誰かにフィルムが張り付いていることを教えられて剥がしたとしても、確実に30秒以上は金の皮膚に直接張り付いていたので、金の皮膚表面には充分な量の毒薬が塗布されたことになる。あと数時間も経過すれば皮膚から吸収されたジギタリス成分の影響で不整脈を起こし心臓発作を発症させて確実に死を迎えることになる。
トイレからパーティ会場に戻った金は、近くにいたホールスタッフがトレーに載せていた水割りウイスキーのグラスを受け取り招待客への挨拶を行っていたが、頃合いと判断してパーティ会場内にいた朝鮮信用金庫の役員を見付けると『儂は、そろそろ失礼するから地下駐車場に待たせている車を正面玄関に来るよう伝えてくれ』と話す、金から言われた役員は『承知しました。あれ?金理事長、首の後ろにゴミが付いてます。』と言って透明フィルムを剥がすと近くにいたホールスタッフに『ゴミを捨てておいてくれ』と言いながら透明フィルムをホールスタッフに渡すと金の要件も伝えた。
その間、金はジャケットの内ポケットに忍ばせていた錠剤を一粒取り出して口に入れると左手に持った水割りと共に飲み込んだ。金が服用したのはED治療薬のバイヤグラで、今のうちに服用しておけば帰宅した頃には充分に機能して4名の若いメイド達と今夜も痴態を楽しめると想像して幾らか顔に卑猥な笑みが溢れる。
そこへホールスタッフが近づいて耳元に車の準備が整ったことを伝えると黙って頷いた金は、左手に持った飲みかけの水割りをホールスタッフに渡すと、別のホールスタッフの案内でホテルの正面玄関口向かった。金の姿を認めたドアマンがベンツの左後部ドアを開け『行ってらっしゃいませ』と声を掛けると『うむ』だけ応えてベンツの後部ソファに乗り込む、皮張りのソファに身体を沈めた金は運転席に居るボディーガードに『屋敷に戻る』と一言伝えると目を閉じた。ベンツは保護施設へ向けて静かにホテルの正面玄関を後にした。
ベンツが保護施設の正面ゲート前でゲートが開くのを待つ間、金の下半身はバイヤグラが効き出したのか力が漲り、金の鼻息が少し荒くなってきていた。施設の正面玄関にはセクターなメイド服をした4人の娘達が出迎えているのを見付けると早くも金の顔には卑猥な表情を浮かべている。ベンツが正面玄関に到着して、ボディーガードがドアを開けるとアスコットタイを外しながら金はベンツを降りる。『おかえりなさいませ』と言って近づいてくるメイドの1人に外したアスコットタイと脱いだジャケットを手渡すと足早に玄関の中に入って行った。
玄関で革靴を脱いで高級なスリッパに履き替え、自らの寝室へ4人のメイドを従えて向かう。
寝室に入るとメイド達に着ていた服を脱がせてもらうが、金の手はメイド達の胸や尻を忙しなく撫で回し、口元が緩んで今にも涎を垂らしそうになっていた。
4人のメイド達が妖しい笑みを浮かべて金のブリーフに手を掛けてきた時、急に金は表情を歪め苦しそうに両手で胸の辺りを押さえると前のめりに崩れて激しく痙攣を始めた。
驚いたメイド達は、金の寝室から出て悲鳴を上げる。異変に気が付いた施設の管理人とボディーガード達が金の寝室を覗くと、苦悶の表情を浮かべて痙攣をしている金の姿を認めてボディーガードの1人は携帯電話を取り出して消防へ電話を掛け救急車を要請する。
ボディーガード達と管理人で金をベッドに寝かせたが、その頃には苦悶の表情を浮かべたままであったが痙攣は収まり静かになっていた。ボディーガードの1人が金に心臓マッサージを施し始め、暫くすると救急車の緊急サイレンの音が聞こえてきた。
施設の管理人が、正面玄関口で救急車の到着を待っている間に、金の妻と娘が異変に気付き金の寝室の前で不安そうにベッドで心臓マッサージを受けている金を見つめていた。
管理人に案内されてストレッチャーを運んできた救急隊員の1人が金に声を掛けて脈を取るが『心肺停止状態』と言うと、別の隊員が携帯電話で急患診療専門病院へ救急搬送の受け入れを打診する。
その間、別の隊員はボディーガード達の協力を得ながら金をストレッチャーに移して救急車へ運び込む、2件目の電話で搬送先が決まるとボディーガードの1人が救急車に同乗して救急車はサイレンを鳴らしながら病院を目指した。
病院に担ぎ込まれた金は、1時間近くの救命措置を施されたが意識を取り戻すことなく急性心不全の診断を受けて死亡が確定した。
なお、病院では事件性を認めなかったので司法解剖等が行われることはなかった。




