表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

プロローグ

――ティアーナ・リフェインはアルメニア魔術学校に通う魔術師の一人である。


 この世界における一般的な身分の家庭に生まれ、両親に手間をかけさせることもないまま素直に成長していき、特に大きな事件や、ある日突然神から特別な力を授かり、世界を平和にする旅に出たりとか、白馬に乗って颯爽と現れた一国の王子にプロポーズされて最近読んだことのある小説のような恋愛をしたりとか、実は女神の分身だったとか、道端で魔法のアイテムを拾ってお姫様になるとか、そんな夢のような出来事は一切起きないまま、つい1週間ほど前に16歳の誕生日を迎えたのだった。

 

 ティアーナはどこにでもいるような平凡魔術師である。


――とことん平凡だった。体型も。泣けるくらいに。

魔術学校での成績もまずまず、武術も人並み、できることといえば母親に仕込まれた家事、手先がちょっと器用で手芸をするのは好きだった。

耐寒の魔術を付術(エンチャント)したマフラーを編んで好きだった魔術学校の上級生に恋文を添えて渡し、あえなく撃沈するまでは。


……そんな彼女が今、ただの『魔術師』から非凡な『奇術師見習い』へと変わろうとしていた。

 普段とは違った――普段ならば学友と手作りのランチボックスの中身を白々しく褒め称えながら閑談に興じているだろう――昼の休憩時間、学生達が集まる大講堂で学校に登校、あるいは教師として来ていた魔術師全員の視線を集めていた。


「ふふっ。大丈夫だよー そんなに緊張しなくてもさー」


「こんなに人が見てるのに緊張しないほうがおかしいんです! ……はぅぅ」


「みんなをびっくりさせて見返してやるー! って言ってたじゃん」


「そんなこと言ってませんー!」


「あれ? そうだっけ? あははっ」


「『あははっ』じゃないですよ! はぁ……大丈夫かなぁ……」


「どんな失敗でもフォローしてあげるから安心しなよ」


「絶対フォローせずに笑ってそうなんですけど……」


「だ、大丈夫だよ!? そ、そ、そういうところはちゃんとしてるよ!? ……たぶん」


「やっぱり噓吐くの下手ですよね……」


「まさか君にまで言われてしまうなんて……もう辞めようかな……」


「メンタル弱すぎじゃないですか!? ……うふふっ」


「おっ、やっと笑ってくれたねー」


(え……? まさか私の緊張を解くために……?)


「頑張りたまえ、『奇術師見習い』君。……なーんてね!」


「……はいっ! がんばりますっ!」


『それでは披露していただきましょう! 異世界から召喚された魔術師! エース・カケフダと助手のティアーナ・リフェインによる魔術演舞(マジシャンズダンス)です!』


「だーかーらー魔術師じゃなくて《マジシャン》だって! 魔術師に失礼でしょ!」


「助手じゃありません! 主役は私ですよぉ……」



――このショーが勇者誕生の伝説として語り継がれることになるのはまだ知る由もなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ