七章 思い出すあの日、あの言葉
二人の姿がかすみ、鋭い打突音と共に、けたたましい金属のかち合う音が部屋中を駆け巡る。
一合、二合、三合と剣をあわせては一歩下がり飛び掛かり、また、それを繰り返す。
そんな激しい戦闘の音を奏でながらも、二人の周りにはどこか空々しい雰囲気が漂っていた。
「なぜ、争わねばならないのだろうな。俺たちは」
そう剣で語り合っているようでもあった。
グイードの片手が閃く。
足元になにかを投げつけたようだった。
それを見逃すサナンでもなく飛び退って、同じように腰からなにかを引き抜いて投げつける。
「毒針か。えげつねぇまねするな」
靴のつま先に刺さっている針を見てサナンが皮肉気に唇をゆがめる。視線の先にはグイード。彼もまた投げつけられた短剣を紙一重でよけて、頬が浅く切れていた。
「勝たねばならないんだ」
静かな声にサナンが、長剣を構えなおす。グイードも片手で頬に伝う血をぬぐって目を細める。
「それは俺とて同じこと」
サナンの言葉と同時に二人は互いに飛び掛っていた。
そして、また同じように剣を交わし、飽きることなく続けていた。激しい金属音が部屋一杯に響き渡り、リノを避け、互いの胸、首、その他急所を狙い、幾度となく、剣を突きあい、避ける、その時だった。
一突きが、サナンの右肩に入った。
「く」
右肩を後ろに逃がしながらサナンが左腕を伸ばしてグイードの左肩を狙う。
だが、体をひねったグイードにかすることなく刃は空を滑る。体勢を崩したサナンがよろめいて、グイードと正対する。
「残念だったな」
そういいながら、彼は右肩に入ったままの剣を横に薙ぐ。
深く入った切っ先がそのまま肩の肉をえぐって外に抜け、ぱっと赤い血がしぶく。
「……っ」
悲鳴を押し殺してサナンは踏み込み、刃をグイードに向ける。
「痛いか?」
「当たり前だ。治りかけの傷えぐりやがって」
そう毒づいてサナンはちらりと傷の具合を見て、そっとため息をつく。
そこまでひどくはないようだ。
グイードはすぐそこにまっすぐ立っている。
刃を構えるほどでもないと思っているのだろうか。無表情でサナンを見つめていた。
「……最後になるかな」
傷の痛みと、失血による体の反応にくらりとよろめきながらサナンがにやりと笑う。
グイードが無表情にうなずいて刃を構える。サナンも習う。
「……終わりだな」
飛び掛りながらもれた、ちいさなつぶやきが互いの耳に届くより前に――。
「サナン!」
入り口に控えていたフィルが声を上げる。




