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三章:決別の言葉

「さ、あのバカ坊ちゃんを迎えに行きますかね」

 さわさわと腰のあたりを触っていた手が離れているのを感じて振り返ると、テオは、バンダナをきれいにたたんでポケットの中に突っ込んでふっと笑った。

「え?」

「墓参りしてるんです。シオンの」

「近いの?」

「ええ。隣、といっても良いぐらいです。まあ、すこし歩きますが」

 皿を片付けて、テオはそう言ってリノを引き連れて玄関から外に出て朝日に照らされる景色にそっと目を伏せた。

 霧が立ちこめたその町並みは海霧に包まれた生家のある町を思い出させる。

「さ、行きましょうか」

 そう言って優しく促すテオはいつもどおりのものだったが、どこか違和感を伴っていた。

 ――うまく笑えてなかった。

「あの丘の上、二人立ってますね……」

 そんな表情になにかを言おうとすると、すぐそれに気づいてテオは進む先にある丘の上を指差した。

 確かに指差されたすこし離れた丘の上に確かに二人立っていた。

 遠目でもわかる、銀色の髪の青年と、どこかで見た白金色の髪を肩まで伸ばした青年が肩を並べている。

「あれは、グイードか?」

 歩きながらテオが眉を寄せて二人を見ているが、ふと合点が行ったようにうなずいてため息をついた。

「グイードって、あの……」

「あの時、あなたをさらおうとした金髪のいけ好かない男です」

 苦笑交じりに言うテオにリノは目を剥いて思わず立ち止まった。

「大丈夫ですよ。あいつは命令以外に動く人間じゃない。それに、ここにきているのだってお忍びのはずです」

「え?」

「だって、シオンを殺したのは総帥の刺客でしたから」

 さらっと言われたその言葉に立ち止まったままリノはテオの顔をまじまじと見た。

 確かに戦争に便乗して殺されたとシオン自身が言っていたが、そう思いはしなかった。

 それに、グイードは総帥の差し金だと他でもないテオとシオンが話していた。

 そんな人がなぜ、敵対しているような人の彼女の墓参りに来るのだろうか。

 そう思いながらテオを見ると、テオは悲しそうに笑ってすこしだけうつむいた。

「あの出来事以来、あいつはオレたちから遠ざかっていたんですが……」

 丘の上、シオンがこちらを振り返ったようだった。金髪の男はなにかをシオンに言って、丘を、リノたちとは反対側を下っていく。

 それに気づいたテオはなにかを切り替えるように肩をすくめて、そして、ぱっと顔を上げた。

「せんぱーい」

 ぱたぱたと手を振ったテオに、シオンは歩きながらこちらに向かってあきれたように肩を落とした。

「あれ? なんかオレしましたか?」

「お前、いきなり外に連れ出してなにしてんだ」

「急いだほうが良いでしょ?」

「それは、そうだが……」

 困ったようにリノに目を向けて、ため息をついたシオンはそれ以上なにも言おうとせずに目を伏せた。

「あそこにいたのは?」

「グイードだ」

 隠そうともしない言葉にテオはふっと笑って頬を掻いた。

「なんか言ってました?」

「軍で待っている、と」

「そうですか」

 それを聞いてテオは笑ったままリノの肩に手を置いた。

 テオを見上げると彼はシオンを見て首をかしげていた。

「……」

 無言の圧力、だろうか。テオはなにも言わずにシオンを見てなにかを催促している。

「……?」

 首をかしげてテオを見ていると、根負けしたようにシオンはため息をついてリノに目を向けた。

「行くか?」

「どこに?」

「……シオンの墓に」

 すこしをそらして言うシオンに目を見開いたリノだったが、じっとシオンを見た。

「連れて行きたくないならいい」

「え?」

 面食らったようにシオンが目を見開いてしばしばと瞬きをする。

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