第一話:『世界中を監視して即パージするのが楽しすぎる件。……で、なんであの3人だけ生き残ってるの?』
ヤクート天空神殿――そこは、この世界の全てを司る最上位領域。
豪華絢爛な玉座に深々と腰掛け、極上の神酒を傾けているのは、この世界の絶対的な頂点に君臨する最上位女神――私、ヘレナである!
「ふふん、今日も世界は平和ねぇ。……あ、クララ。ちょっと第13セクターの拡大映像出してみて」
「かしこまりました、ヘレナ様」
隣に控える上位女神のクララが指を鳴らすと、巨大な空中に地上の映像が映し出された。
どこかの小国の王様が、民衆に向かって「我こそが世界の支配者! 神など恐れるに足らん!」と高笑いしている。
うわぁ……香ばしい。凄まじくテンプレな調子の乗り方ね。
「ヘレナ様。あのサピエンス、調子に乗っていますね。パージ(消滅)なさいますか?」
「当然でしょ! 誰に向かって口滑らせてんのよ! エルサ、あの国のイキリ発言ログ残しておいてね。後で『神を舐めた愚かな王の末路』として回想シーンに使うから!」
「了解しました、ヘレナ様。即時記録します」
「よし、クララ! いっちゃって!」
「御意――『ヤクート・サンダー』、照射」
ドッカアアアアアン!!!!
空から落ちた一筋の白光。次の瞬間、イキっていた王様と城は、跡形もなく消滅していた。
チリ一つ残らない完璧なパージ。これよこれ、この爽快感がたまらないのよ!
「はぁ~、やっぱり調子に乗った奴を即パージするのは最高の発散になるわね! この世界、私の思い通りすぎるわ!」
私がご機嫌で神酒を飲み干した、その時だった。
「――ヘレナ様。大変申し訳ございません。観測網『ヤクート・アイ』に、またしても不具合……いえ、異常事態が発生しております」
エルサが珍しく困惑した表情で巨大な境界陣を操作している。
「異常? なによ、またどこかの邪神でも目覚めたの?」
「いえ……地上界のサピエンス、レイ、アユミ、ユナの3名です。先ほど、ヘレナ様のご指示で投下した『確定死亡フラグ(神級モンスター1万匹)』ですが……」
画面に映し出されたのは、信じられない光景だった。
「おおおおおっ! 追放されたからって、神の嫌がらせに負けてたまるかぁぁぁ!!」
サピエンスの勇者レイが、絶大なオーラを纏って大剣を振り回している。
「レイ、左からのブレスは切ったわ! 安心して突撃しなさい!」
サピエンスの剣士アユミが、神級モンスターの即死ブレスをただの長剣で真っ二つに物理切断している。意味がわからない。切断属性じゃないでしょ、あれただの火炎よ!?
「二人とも、かすり傷を負いましたね! 全快&攻撃力10倍バフ付与します!『超・聖天の慈光』!」
治癒天使ユナのあり得ない範囲の回復魔法が破格のバフを撒き散らし、1万匹いた神級モンスターがわずか3分で全滅させられていた。
「「「………………」」」
天空神殿に静寂が訪れる。
「……ねえ、エルサ。あれ、確定死亡フラグよね? なんで無傷なの?」
「はい、ヘレナ様。計算上は100%パージされるはずの数値でした。ですが、あの3人だけはどうしても言うことを聞きません。神の提示したシナリオを力任せに粉砕してきます」
「な、生意気なサピエンスめ……! ヘレナ様、今すぐ私が直接降りて、あの3人を閃光で消し去ってきます!!」
怒りで髪を逆立てるクララを、私は手で制した。
「待ちなさい、クララ」
「ヘレナ様!?」
私は玉座から立ち上がり、思わず口元を歪めた。
ニヤリ、と。
「……最高じゃない。世界中の誰もが私の機嫌を伺って、調子に乗った奴は秒でパージされるこの退屈な世界で……あの3人だけが、私の筋書きに全力で反抗してくるのよ?」
「ヘレナ様……まさか」
「ええ! 世界の監視は継続! 歯向かう奴らは今まで通り即パージ! だけどあいつら3人には、もっと理不尽で、もっと絶望的な『特大フラグ』をドシドシ叩き込んであげるわ!」
私は地上を見下ろし、最上位女神としての絶対的な笑みを浮かべた。
「覚悟しなさい、レイ、アユミ、ユナ! 私の最高に面白くてスカッとする連載シナリオからは、絶対に逃げられないんだからね!」
(第二話に続く)




