プロローグ
〜現代日本〜
薄暗い部屋の中、醜く太った男がパソコンの前に座り光る画面を虚な目でジッと見ていた。すると部屋のドアが乱暴に叩かれ、怒鳴り声が聞こえてくる。
「出てこい、母親の葬式にも出ないクズが」
怒鳴り声に聞き覚えがあった。そうだ、兄貴の声だ。久しぶりに聞いたな。母親が死んだって言ってたな。あれ、母親っていつ死んだんだ。何歳だったけ?そんなことを漠然と考えている間もドアを乱暴に叩く音と怒鳴り声が聞こえる。うるせいなー、出ればいいんだろ。
そう思いドアを開ける。ドアを開くとそこには20年ぶりくらいに見た兄と姉がいた。その二人は俺の姿を見るとあまりに変わり果てた姿に絶句していた。「久しぶりだな」と声を出そうとするがうまく話せない。人間ずっと喋らないと話し方を忘れるって本当だったんだなとぼんやり思う。
「お前を甘やかしていた両親はもう死んだぞ。誰もお前を助けない。だからいい加減働け。いつまで学生時代のこと引きずってるんだ」
長ったらしい兄貴の説教を聞き、うるせなぁーと思い無視をして家を出る。
ーー
外は薄暗く街灯や店、車の灯りが街を照らしていた。久しぶりに見た外の景色を横目に見ながらこれからどうしようかなと漠然と思いながら街をふらふらと歩く。
それから数分して横を通る高校生のカップルがいた。ガキどもがいちゃつくなよと心の中で悪態をついていると猛スピードで大きな光が迫ってくる。約20年引き籠っていた中年のデブは必死に体を動かし、カップルを突き飛ばした。そして、大きな衝撃と共に死んだ。
ーー
俺は真面目だったと思う。あまりコミュニケーションは得意じゃなかったが、気の許せる友達もいてうまくやれてたと思う。中2の途中で引っ越すまでは。
新しい学校では、もうすでに仲の良いグループができており、人見知りな俺は周りとあまり馴染めずにいた。 ある日、いじめに遭っている同じクラスの子をたまたま見つけてしまった。俺はそれを助けようとした。そこから俺の人生は狂っていった。いじめの対象が俺へと変化し、俺が助けた子は再びいじめられたくないから気づかないふりをして、周りの奴らも見て見ぬ振りをした。
学校に行くのも辛かったがあと一年耐えて卒業してこいつらと別の高校に行けばこいつらと二度と関わらないで済む、こいつらみたいなクズのせいで俺の人生壊れてたまるかと反骨精神で耐え、無事高校に入学した。
高校ではまた普通の生活に戻れると思っていたが想像以上に傷は深かったらしい。俺はもう人を信じることができなくなっていた。最初はうまくやっていた。でもだんだん息苦しくなり仲良くなったやつも敵に思えて仕方がなかった。だから引きこもった。両親や兄姉も心配していたが俺は家族すらも恐怖の対象だった。それから当然だが徐々に俺は家族に見放されていった。
こう思うと俺ってなんのために生まれてきたのかよくわからない人生だったな。自分から死ぬ勇気も湧かなかったからこんな死に方でよかったかもな。まぁ、あのカップルが生きたか死んだかわからないがどうせだったら生きていて欲しいな。そしたら俺の人生の意味になるから。
ーーーー
眩しい光が俺の目を覚ましてくる。俺は死ななかったのか。ここは病院か?と思いながら、目を開けると俺を見ている若い男女の姿とメイド服を着た女性が目に入る。顔立ちはヨーロッパ人みたいな感じだな。それにしてもこの人たち顔整ってるな。羨ましいぜ。何か話しているようだが日本語以外わからない俺はなんと言っているのか全く理解ができなかった。
手を伸ばすととても大人の手とは思えない小さな手がそこにはあった。その手を女の人が握った。そして嬉しそうに微笑んだ。
どうやら俺は赤ちゃんになったらしい。おそらくこの人たちが俺の新しい両親だろう。
父親は、黒髪の20歳くらいの男性。母親は真っ白な髪の今まで見たことがないくらいの美人の女性だ。こちらも父親と変わらないくらいの年齢だろう。こんな美人と結婚できるなんて父親が羨ましいぜ。そばに控えるメイド服を着た女性は母には敵わないが美人と言ってもおかしくない水色髪の女性だ。年齢は母よりも少し若く見える。
そんなことを考えていると母親が母乳を与えようとしている。美人のミルクを飲めるなんて二度とこないチャンスだが流石に俺に残るわずかなプライドで必死に抵抗するが無理だった。差し出されたその温かさに俺は久しぶりに何十年ぶりに人の温かみを思い出した気がした。
前世では人と関わることを避けて逃げてしまった。この世界では、逃げずに生きていこうと思う。だがまだ、人と関わるのは怖いため慣れるところから始めていこう。
とりあえずこの世界の知識をつけるところからだな。まだ外に出るのは怖いからしばらくは家で知識を身につけ、特訓をしていこうと思う。
初めまして、これが初作品となります。誤字や日本語がおかしなところがありましたらコメントで教えてもらえると嬉しいです。




