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陰謀だらけの魔法合戦(私立クリスティ学園シリーズ 魔法使いの生徒会編6)  作者: 月森琴美


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12

 帝が本邸から来た車に乗り込んで自宅に戻ったのは、丁度西の空に夕日が沈もうという頃だった。

「おかえりなさいませ」

 若い執事がメイドと共に玄関に出迎えに出て、帝の学生かばんを受け取る。

「すぐ夕食になさいますか」

「ああ」

 うなずき、着替えるために自室へ入った彼の目に、机の上にある郵便物が映った。

 何の変哲も無い白い封筒が5通ほど。

 差出人の名前はない。

(またか)

 彼はそれを手に取ることもなくクローゼットの方に行き、乱暴に制服を脱ぎ捨てた。

 更に奥のシャワー室に向かい、軽く汗を流すと用意してある部屋着に着替える。

 その頃には彼の部屋の居間に夕食の準備が整っていた。

 たくさんの皿がのったテーブルに着き、ナイフとフォークを使って食べる。

 横についているメイドが皿を下げ、デザートのフルーツとコーヒーを持ってきたとき、帝は後ろに控えていた執事に言った。

「今日はもういい。俺は宿題があるから、この部屋には誰も呼ぶまで近づけるな。寝支度は自分でする」

「かしこまりました」

 執事は深く頭を下げ、メイドに指示を出す。

 ほどなく皿やカップが下げられて、部屋の中には帝一人になった。

 誰にも見られていないことを確認し、彼は机の上の封筒を広げる。

 文面は違うが、どれも内容は同じだった。

[あなたに総帥は務まりません。早くおやめください]

[あなたは総帥にふさわしくない。身を引くべきだ]

[あなたの暴力的で野蛮な所業は聞き及んでいます。これ以上一族の名誉を傷つけないでください]

[あなたを一族は認めません。総帥には別な者がふさわしい]

[あなたより財閥を継ぐべき人物がいます。いい加減あきらめなさい。あなたは彼に勝てないでしょう]

(毎回毎回、同じような事をよくもまあ飽きずに送ってくるな)

 帝は手紙を丸めて引き出しに放り込む。

 以前の自分なら、怒りにまかせて燃やしていただろう。

 だがそれでは駄目だ。これは貴重な証拠になるかもしれない。

(疲れた)

 彼は黙って目を閉じた。

 このような手紙が机の上に置かれるようになって、もう一週間は経つ。

 最初は怒りにまかせて引き裂いたり、執事に邸のセキュリティを改めさせたり、燃やしたりしていたが。

 最近はこの事態に心が大分冷静になっていた。

(これは内部犯の犯行だ)

 帝ははっきりとそう思うようになる。

 この邸にいる使用人の中で、彼の自室に無断で入れる者など限られていた。

 邸の内部には特殊な呪がほどこしてあり、特に帝の部屋は少しでも怪しい人間が足を踏み入れたら、すぐさまセキュリティのアラームが鳴るようになっている。

 それは彼が常備する小型PCに接続されており、どんな状況でも彼自身にダイレクトに侵入者の事が伝わるはずなのだ。

 しかし毎夕ごとに届けられる郵便物に対して、そのアラームは一度も鳴らなかった。

 調べさせてもよくわからないと言う。

 更に帝自身が独自に術式を机に組み込んで学校から帰宅したら、その術式ははっきりと先程まで側にいた若い執事が手紙を置く姿を映した。

(あいつはもと総帥付きで、別邸から来た男だ)

 帝は目を閉じたまま、考えをめぐらせる。

 9月に入って突然、いつも仕えてくれていた執事が休暇を願い出た。

 その横に総帥雷導の推薦状を持った、あの執事がいたのだ。

『総帥より帝様にお仕えするよう申し付かってまいりました』

 そう言って紹介状を差し出す彼を拒むことは、帝には出来ない。

 言われるままに仕事をしてもらっているのだが、彼はどうも帝の神経にさわるような事を言うのだ。

 自分が最近までずっと雷導の側に仕えていたこと、祖父に当たる雷導には深く寵愛している孫がいること。

 最初は雅人かと思ったが、どうも違うらしい。

『その方は帝様や雅人様の従兄弟に当たる方で、クリスティ一族傘下の有力貴族の出なのです』

 執事は自分の反応を見ながら、一言一言まるで釘でも打つように言葉を放った。

『雷導様のご信認も大変篤く、身の回りの世話からお手元の財産管理に至るまで、すっかりお任せされているようですよ』

 そうか、と内心の動揺を押し隠し、無機質な返事を返すことが精一杯な自分。

(わかっている。俺と総帥の間には、祖父と孫という絆はない)

 あるのはただ一族の長とその後継者という肩書きだけだ。

 幼い頃よりそう教えられて育ったので、今更こんな事に衝撃を受ける必要などない。

 ないはずなのに――。

 今まで全然見向きもしなかった孫の一人が、雷導の心を射止めたという。

 それは思ったよりも、彼の内面を傷つける結果となっていた。

 心の奥に潜む、もう一つの人格が傷ついて、ぼろぼろと泣いているのを感じる。

(僕では駄目なのか。おじいさまが僕を認めてくれる日は来ないのか)

 そんな日は永遠に来ない。

 何度も幼い頃から自分に言い聞かせてきた。

 そんな可能性は捨てろと言い続けてきたはずなのに。

(……もう疲れた)

 時々無性に体から力が抜ける。

 何もかも放り出して、どこかへ行ってしまいたくなった。

 その理由に薄々気がついており、彼は胸の奥がきしむような思いに苦しめられている。

 あの執事は総帥の指示で動いていると、帝は確信していた。

 そして最近校内で起きている噂と体育祭実行委員長の存在。

 ――藤昇。

(あいつはきっと総帥の信頼を得ている)

 理事長が推薦したことといい、この執事の行動といい、すべては総帥の意思が働いているのだと思う。

 だがそれでもかまわなかった。

 ただ一点だけ、彼を衝撃的に不安にさせている要素がある。

(雅人、直樹)

 思わず二人の名を心の中で呼んだ。

 ずっと側で一緒に育ち、いつの間にか頼り、守られるのが当たり前になっていた存在。

 いつまでもそれは変わらないものと信じて疑いもしなくなっていた自分。

(だが本当にそうなのか)

 彼らは分家の代表であり、自分に忠誠を誓うと言ってくれている。

 だがそれはあくまで本家の後継者にであって、帝自身にではない可能性があった。

(もし総帥が後継者の意思を変えたのなら)

 彼ら生徒会のメンバーは帝の元を去って、藤昇の下へ行くかもしれない。

(あいつらを失う……また一人になるのか)

 もし彼らが総帥の意思に従い、自分ではなく藤昇を選んだとしたら。

 自分の側から去ってしまったとしたら。

(俺は、きっと正気を失うだろうな)

 絶望と言う名の闇に飲み込まれてしまうだろう。

 ふと彼の心に、あの少女の面影が映った。

(茉理)

 彼の今年の彼女。

 毎朝変わらぬ笑顔を校門の前で見せてくれる存在。

 ふっと全身の力を抜くと、自分の心の奥にいるもう一つの人格が現れる。

 今は側に誰もいないし、自分は疲れた。

 彼はいつも出している表の人格をそっと休ませ、別人格に身をゆだねる。

 それはいつもは彼のネガティブな感情を持つ弱い存在であった。

 だが今はどうしたことか、いつも表に出している強気の人格より明確な意思を持って彼の体を支配する。

(このまま伊集院家から出されるようなことになったら、彼女の騎士になりたいと願う僕の想いはかなわない。それだけは絶対に嫌だ)

 体内から今まで感じたことのない大きな力が沸きあがった。

(僕を追いやる者、大切な人から遠ざけようとする者、それを許すわけにはいかない。人を傷つけるのは嫌だけど、大切な人を失う痛みに比べたらずっとましだ)

 そのために出来ることはなんだってやる。

 瞳に強い意志を宿し、帝は深く決意を固めた。

(ちゃんと向き合って戦おう。僕の前にある様々な障害と)

 それは普段の自分が持っていない別な強さ。

 少しずつだが彼の中に芽生え始め、本来の人格との境目を崩し始めている感情だった。

 目を開き、彼は気を取り直した顔で現実問題である宿題からまずは取り組み始める。

 そして手早く終わらせ、明日の準備をすると寝支度をしてベッドに入った。

(明日もまた君に一番に会いにいくよ、茉理)

 おやすみ、と心の奥の彼女の幻に挨拶し、彼は静かに目を閉じた。




 同じ夜。

 直樹の自室に来客があった。

「やっほーっ、直樹君」

 能天気な声と共にベランダのとびらをカラリと開けて、彼の部屋に侵入してきた金髪の少年。

 宿題を終え、明日の持ち物を鞄に入れていた直樹は、手を止めて呼び出した親友を見た。

「早かったな」

「それはもう夜這いのお誘いがかかったなら、すみやかにお邪魔しないとね。時間が経つと君の気が変わるかもしれないし。さあ、二人で情熱的な夜を過ごそうではないか」

「誰が夜這いだ。作戦会議に決まってるだろ」

 雅人の言葉にまったく動じず、直樹は準備の終わった鞄を机から下ろす。

「相変わらずまめだねえ。僕はそんなに準備はしない。もし忘れ物をしたら、速攻家から瞬間移動で取り寄せればいいだけの話だしね」

「どうせお前の鞄には薔薇の花しか入ってないんだろう。たまには教科書の一つも入れてこい」

「ひどいなあ。教科書は全部学校のロッカーに入れてあるんだ。だから僕は教科書を忘れたことは一度もないよ。パーフェクトだ。素晴らしいだろう」

「それは胸を張って言うことではないんだがな」

 まあいい、と言って、直樹は雅人に用意しておいた椅子をすすめ、自分は勉強机の前の椅子に腰を下ろした。

「今日は少し真面目な話をしないといけない。いつものお前の軽口は叩くな。時間が惜しい」

「はいはい。僕と君の夜は短いしね。ではすぐに始めようか」

「なんだがお前が言うと、別な意味に聞こえて怖いな。薔薇を持って色っぽい流し目をするせいか」

「ひどいな、直樹君。これでも僕は真剣なんだよ」

「真剣な奴がピンクのシルク製のガウンと、シャンプーの香りをさせて部屋に入ってくるわけがないとは思うがな」

「それは大いなる誤解だよ。帰ったらすぐにベッドに入ろうと思って、歯磨きまで済ませてきたんだからね」

「わかった。じゃあ本題だ。まずはあの悪戯の件だが」

「僕達に容疑がかかっている事件だね」

「引っかかる点がいくつかあって調べてみたんだが、やはり第三者が介入している。しかも芳賀先生にわからないように記憶を探らせてもらったが、斎の証言と食い違いが生じた。火曜日の朝、芳賀先生が斎と接触した記憶はない。斎は階段で先生が教材を落として拾うときに紙を見つけたと言っていたが」

「本物の芳賀先生の記憶では、どうなってるの?」

「月曜日の夜、自宅であの名簿を作成したあと居間でテレビを視聴後、部屋に戻ったら無くなっていて、あわててもう一枚書いていた。本人は間違えてゴミ箱にでも捨てたんだろうと思っている」

「ふーん、つまり誰かが芳賀先生を自宅までつけていって、隙を見て部屋に侵入。名簿を盗んで逃走か」

「そして芳賀先生に変化して、次の日の朝斎に名簿を見つけさせた。あいつらなら可能だろうな」

 直樹の言葉が終わるや否や、雅人は面白そうに笑った。

「ふふっ、本当にたちの悪いいたずらっ子たちだよね。こんなに早くから中等部に侵入して色々仕掛けてるってわけか」

「芳賀先生が例の名簿作成に至った原因は、あの悪戯だ。わざとプログラムを変更させて誰かに嫌がらせを受けていると藤昇を警戒させ、あの名簿を作らせている。よくここまで相手の心理を読みきったものだよ」

「やれやれ、僕達へのプレゼントのつもりかな。おかげで校内職員の勢力図は手に入ったけど、余計な容疑者にされてしまった」

「どうせ疑われても俺たちを追及出来る奴はいないさ。証拠だってないしな」

 そこまで考えて仕掛けたんだろう、と直樹は話を結ぶ。

「相変わらず小賢しく頭のまわる奴らだよ。この調子なら体育祭まで何をされるかわからんぞ」

「当日の一発勝負だと思い込んでいる帝たちの顔が見ものだね。他にも愉快なカラクリを用意してくれているのかな。だとしたら僕達も楽しめそうだ」

「俺は今から先が思いやられて頭が痛い。本当に人選大丈夫なんだろうな」

「彼ら以上の適任者はいないよ。その気になれば、おじいさまにだって牙を剥くように仕込んである。もちろん僕達への敵対度だって完璧さ」

「自分に刃を向けるかもしれない相手を愉快とか面白いとか評するお前の神経が俺にはよくわからん。興味深いから、一度解剖させてくれ」

「僕が君より早く永遠の世界に旅立ったなら許可してもいいよ。そのかわり君が先に逝ったなら、僕は君の眼鏡をもらうことにしよう」

「自分の遺体解剖を難なく口にするなよ、まったく。なんで俺の遺品として眼鏡を欲しがる」

「だって取り上げなかったら、君はお棺の中までもその眼鏡を装着してそうだからね。最後は素顔のままで逝って欲しいっていう親友に対する僕のささやかな気遣いさ」

「気遣いなのか嫌がらせなのかわからん」

「どっちだろうね。真実は事実と違って、人の数だけあるものさ。君が気遣いと思うか嫌がらせと思うかで、真実がまた一つ増えることになるだろう」

「まあいい。時間が惜しいから、小説や舞台で覚えた知識や台詞を応用したお前の話術を聞いてるひまはない。次行くぞ」

「はいはい」

 雅人はにこやかに笑うと、次って何かなと尋ねる。

「気付いているだろうが帝の事だ」

「王様、最近どこか変だよね。いつもの魔王っぷりが無くなってる」

「少し調べて気になる事があった。本邸の執事がいきなり交代している。それも新しい執事は、ついこないだまで別邸で総帥の側にいた男だ」

「何かおじいさまの気に障るような事をして、帝のところに飛ばされたのかな」

「だといいんだが嫌な感じだ。一連の校内の流れといい、その執事といい」

 直樹は考え込みながら言った。

「帝は特に何も言わないので、実際どうなのか全然わからん。本邸での生活に支障がないといいんだが」

「王様が無理して、僕達に何も言わないでいるかもしれないね」

 彼は意外と遠慮する性格だし繊細だし、ガラス細工のように傷つきやすいことを、幼い頃から接している雅人はよくわかっていた。

「校内の状況も藤家の動きも、すべて俺達の計画通りだ。藤家がクリスティ一族の後継者を狙っているという噂はほどよく浸透して、職員たちの不穏分子あぶり出しにも成功。だがこれらはすべて帝の精神状態が平静で安定しているという前提の元に成り立っている。もし彼が少しでもこの一件で傷つき、自分を見失って追い込もうとするのなら即座に計画は中止だ」

「その時はどうするの?」

「強硬手段を取る。これまでの藤家一連の動きだけでも、一族のお偉方を黙らせることは可能だろう。さっさと藤家を断罪して片付けよう」

「わかった」

 雅人はふうっと息を一つつく。

「君の手腕は完璧だからね。期待しているよ」

「帝にはよく気をつけてやろう。俺の勘だが、あいつも馬鹿じゃない。きっとこの一件に総帥の思惑が絡んでいるとすでに気付いているはずだ」

「僕達に遠慮を見せる態度はそのせいかな。なんだか上手く一歩引いて、自分だけで何かを整理しようとしてるみたいだよ」

 雅人はさっき見た帝を思い出し、感じたことを口にする。

「それか俺達を警戒してるかのどっちかだな」

「ええっ、警戒? 僕達って危険視されてるの?」

「そうであって欲しくないが、可能性はある。俺達は総帥の指示には逆らわないとあいつは思っているはずだ。総帥が決めたなら、自分を切り捨てるかもしれないと思い込んでもおかしくない」

「嘘だろう。そんなこと天地がひっくり返ってもありえないのに。僕の可愛い王様は帝だけなんだからね」

「俺達はそう思っていても、本人には伝わっていないかもしれない。その事は頭に置いて、今後帝との会話には気をつけるべきだ」

「僕の愛情表現が足りなかったかなあ。ここはもっと大いなる純愛を捧げる必要がありそうだ」

「やめておけ。へたにべたつけば、かえって嫌われるぞ。お前のは加減ってものを知らないし、世間一般の常識からあきらかにズレている」

「僕より君の方がもっとズレてると思うけどな。まあいいか。王様の心のケアは茉理姫におまかせしよう」

「後野さんか。そういえば彼女がいたな」

 直樹は存在を忘れていたことを思い出した。

「彼女の耳にも校内の噂は届いてることだろう。気にしてないといいんだが」

「そりゃ姫は優しいし、帝の事をとても好いているからね。気にしない方が無理ってものでしょ」

 雅人はくすくす笑うと、薔薇の花の香りをそっと吸い込む。

「当日のことは双子におまかせだな。まあ、あいつらなら上手くやるだろう」

「体育祭の時はまさに攻防戦になるからね。その辺もきちんと踏まえて姫を守ってもらえるように依頼しておくよ」

「頼む」

 直樹は最後に、とつぶやき、机の中から二つの小瓶を出した。

「これを渡しておく」

「これは?」

 雅人は二つの小瓶を受け取って、不思議そうに見つめる。

「一つはこないだカラス騒動で使った魔法薬だ。使い方は覚えているな」

「確かどんな魔法薬の効果でも、その魔法薬にこれをかければその場で無効化出来る薬が完成するんだったよね」

「こっちの薄緑色の液体が入った物は、お前にかけた特殊スプレーの原液だ」

「つまりこの液にこっちの透明な魔法薬を混ぜて僕に振りかければ、この蛙になる特異体質が解けるということかな」

「そういうことだ」

 直樹は真っ直ぐに雅人の方を向いた。

「お前もわかっているだろうが、今度の体育祭の旗取り合戦は英司には荷が重過ぎる。夏休みにある程度鍛えたが、最後の競技はおまえ自身がやるべきだ」

「そうだね。こんな汚れ役を弟たちにさせたくはないし。わかってるよ」

「これから蛙になられては困る事態がいくつも持ち上がるだろう。さっさと直せ」

「僕に忌まわしい呪いをかけた張本人の言う台詞じゃないと思うんだけどなあ」

 そう言いながら、雅人は大事そうに小瓶を手の中に握りしめる。

「今日の用件は以上だ。さっさと帰って休め。お互い今は体力を温存しておかないとな」

「そうだね。じゃあ、また明日」

 そう言うと、雅人はまたベランダから飛空魔法で外に出た。

 星も見えない夜の闇の中、去っていく彼を見送りながら直樹はベランダの扉を閉める。

(体育祭まで気が抜けないな)

 そんなことを思いつつ、電気を消して彼もベッドに横たわり、明日のための睡眠を取った。

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