表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フィーネ・クリスタル  作者: 青空ミナト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/216

赤い悪魔


「ボオッ!」


 面をした男の右手から、大きな火の玉が飛んできた。


「くっ!」


 ルーナは両腕で頭を防御しながら、後ろに飛びのいた。


「はあっ!」


「!!」


「ここじゃ!」


 ロンは素早すばやい動きで、面をした男のふところもぐり込んだ。


「とりゃっ!」


 ロンの掌底しょうていが、男の顔に直撃ちょくげきした。男は体を後ろにそらしながら、後方へと吹き飛んだ。


「マリーの言っていたぞくか?」


 アイナは両腕を前へと伸ばし、手のひらを広げていた。


「そうじゃ!」


「……」


 男がゆっくりと立ち上がった。


「ピキ…」


 模様もようのない面には、縦向きにひびが入っていてた。大きなひびが縦に広がっていき、白い面が二つにれてしまった。


「あれは…」


 面の下から、端正たんせいな顔立ちをした、若い男の顔が現れた。大きなひとみは少したれ目になっていたが、まゆがつり上がり、するどい目つきをしていた。


「そうか、お前は……」


 男はロンの方を向いた。


「あの時のやつか…」


「皆、上にも気をつけるのじゃ!どこかにドラゴンがおるかもしれん!」


 ロンは先頭に立ち、辺りを警戒けいかいしていた。


「…面倒めんどうだな」


 赤い髪の男は、両手を胸の前で重ねた。


(何をする気じゃ…)


 男は地面にしゃがみ込み、右の手のひらを地面にあてた。


「ボウッッ!」


 男の手から炎があふれ、うずまきを描くように地面に広がっていった。


「ぬうっ!」


「うおっ、こっちにくる!」


 炎はまたたに広がり、アル達へとせまっていた。


「あぶなっ!」


 熱気をびた炎をかわすようにして、アル達は後方へと飛びのいた。


「ジジジ…」


 赤い髪の男が立ち上がり、右手を真上まうえへと上げていた。手の上には、人間と同じくらいの大きさをした、巨大な火の玉が浮かんでいた。


炎槍アドラヌ


 火の玉から、細長いやりのような形をした炎が、いくつも飛んできた。


「んなっ!」


 アルが地面に着地しようとした瞬間、炎の(やり)ほほをかすめた。


「ぐっ!」


 ルーナは、左の肩をおさえながら地面にひざをついた。長い炎の(やり)が、ルーナの肩をつらぬいていた。


「ボワアッ!ザザザザザッ!!」


 無数の炎のやりが、辺りにそそいでいた。


「ぬう!」


 ロンは縦横無尽じゅうおうむじんに飛び回り、そそぐ赤いやりを避けていた。背中には、炎でげた跡がついていた。


「……」


 赤い髪の男が左手を前に突き出し、ゆみを引くような動きをした。左手の先には、炎が集まっていた。


赤火蛇ミシュクワトル


「ボワアアッ!!」


 男の手から、細長いへびの形をした炎のかたまりがはなたれた。


「なっ…」


 炎のへびは、口を大きく開きながらアル達へと襲いかかった。


「まずい!」


 ロンは歯を食いしばり、地面にひざをついた。左足には、炎のやりが刺さっていた。


「ゴオオオッ!!」


 炎のへびがアル達を飲み込んだ。


「うわああっ!」


「ボオオオオッ!!」


 乾いた大地に、大きな炎の柱が立ちのぼっていた。


 

 




「グルル…」


 赤いドラゴンが、翼をたたんで周囲を警戒けいかいしていた。二本の足で地面に立ち、うなり声を上げながら顔を動かしていた。その隣には、赤い髪の男が立っていた。


「終わったか」


 男はするどい視線で前を見つめていた。白いけむりがいくつも立ちのぼり、ほのかに熱気が残る中、アル達が地面にうつぶせにたおれていた。


「グルオオッ!」


 ドラゴンが翼を広げた。


「行くぞ、フレイヤ!」


 男はドラゴンの背に飛び乗った。


「バサッ、バサッ!」


 赤いドラゴンはゆっくりと上昇し、そのまま遠くへと飛びっていった。


「…ボゴッ!」


 茶色い地面から大きな音がした。


「ゲホッ、ゴホッ!」


 地面の中から、土にまみれたアイナが現れた。


「ぷは~!あ~危なかった!」


 アイナは息をきながら、ゆっくりと立ち上がった。白衣はくいは土で汚れ、赤い髪には、所々にげた跡がついていた。


「なんとかごまかせたな」


 アイナは白衣はくいについた土を払いながら、後ろを向いた。すすけた地面の上には、怪我けがをしたアイナが横たわっていた。


「サアアアッ…」


 地面にたおれたアイナの体が、砂のようになりくずれていった。


「いや~なんてやつだ!まさか、これほどとは!」


 アイナは、倒れているアル達の所へとけ寄った。


「…よし!皆、まだ息はあるな!もう少しの辛抱しんぼうだ!」


 アイナは両腕を前へと伸ばし、ザラを集中させた。

 

 

 


 


「う~ん…」


「気がついたか?」


「ここは……」


 アルは仰向あおむけの状態で目を覚ました。


「あれ?いたた…」


「もう少しで終わる。それまでは、動かないほうがいいぞ」


 アイナは、アルの体に両手をかざしていた。


「あ、魔法か…ありがとう」


「皆、無事ぶじで良かったよ」


「そっか、あいつにやられて……ロン達は大丈夫だったのか?」


「ああ。さいわいに、思ったよりも傷が浅くてな。今は私の魔法で回復している」


「そっか」


 西の空へとしずみ、辺りはすっかり暗くなっていた。小さな手提てさげランプの光が、アル達を優しく照らしていた。


「よし、これで動いても大丈夫だろう!」


「あ、すげえ。痛みがほとんどない」


 アルは勢いよく立ち上がった。


「おお。無事ぶじじゃったか、アル」


「よかったな」


 暗闇くらやみの中から、ロンとルーナが歩いてきた。


「ロン、ルーナ!」


「ルーナ、どうだった?」


「周囲に敵の気配けはいはなかった」


「あいつだけだったか」


 アイナは、ランプを手に持ちながら立ち上がった。


「あの男、とんでもない強さだったな。まるで、悪魔あくまだ」


 ルーナはまゆをしかめながら右手を見つめた。手のひらに、うっすらと火傷やけどの跡が残っていた。


「うむ。どうやら前の時は、本気ほんきではなかったようじゃ」


「ああ…」


 アルは、くやしそうな顔でうつむいていた。


「アイナ、やつはヘウルーダに行ったと思うか?」


「さすがに、一人で王都おうとに攻め込むとは考えにくいな」


 アイナはけわしい表情を浮かべながら、ルーナの方を向いた。


「ヘウルーダには手練てだれの兵士が多い。特に女王の直属兵ちょくぞくへいは、魔法も使えるからね」


「そうか」


「わしらの前に、兵士達とも戦っておる。多少はつかれているはずじゃ」


 ロンは腕を組みながら辺りを見回していた。周囲には、傷ついた兵士達がたおれていた。


「よし、私はここに残って、他の兵士達の治療をする。みんなは先にヘウルーダに帰って、この事を伝えてくれ」


「よいのか?おぬし一人で、これだけの数を…」


「こう見えて、治療は得意なほうでね。それに、どうもいやな予感がする」


 アイナは空を見上げた。分厚ぶあつい雲が空をおおい、星の光がさえぎられていた。


「さ、行ってくれ!早いほうがいい!」


「了解じゃ!」


 ロン達は小さくうなずくと、体を前にかたむけ、飛行艇の方へと走リ出した。


「一人で大丈夫なのかよ?また敵が来たら…」


「アイナの魔法の腕は、かなりのものだ。心配しんぱいはいらないだろう」


 ルーナは左手で飛行艇のドアを開け、操縦席に素早すばやく座り込んだ。


「お~い!」


 飛行艇の後方から、アイナの声が聞こえてきた。ルーナは窓からを乗り出し、後ろを振り返った。


「昨日、新しい葉が手に入ったんだ!楽しみにしててくれ!明日の紅茶こうちゃはおいしいぞ!」


「フフッ。ああ、了解だ」


 ルーナは小さな笑みを浮かべながら、操縦席のレバーを引いた。飛行艇は人間の背丈せたけくらいの高さまで上昇し、夜の荒野こうやの中をゆっくりと進み出した。







 小高いおかにある木の下に、ガラードが立っていた。黒い兵服をにまとい、腰には剣の入った大きなさやをたずさえていた。


「来たか……」


 おかの下から、マリーが髪をらしながら歩いてきた。辺りに街灯がいとうはなく、人の気配けはいはなかった。


「ガラード…」


 マリーは、ガラードの前で足を止めた。


「……」


「答えを聞かせてくれ」


「…うん」


 マリーは、ゆっくりとガラードに近づいた。










 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ