絵描きと40人の盗賊
「緊張するなぁ……。」
僕……芥川は今森の中を対戦者とギルドマスターと進んでいる。僕に課せられた最後の依頼は「オグスラ盗賊団」の壊滅。ここ最近で力を持ち始め、近隣の村々を襲撃している構成員40人ほどの中規模盗賊団とのこと。今回は今までの佐倉や山名と違って化け物退治ではなく盗賊団という人間が相手、しかも依頼達成条件には生死は問わないらしい。なので、たとえ彼らを皆殺しにしても全く問題ないが、いくら悪行を重ねた盗賊団でもそんなことはしたくない。
「おい、聞いているのか?」
「えっ?ああ、すいません。なんですか?」
ギルドマスターの声で一旦考えるのをやめる。
「そろそろやつらのアジトだ。注意しろよ。」
ギルドマスターが声を掛け、嫌でも緊張する。
視線の先には「オグスラ盗賊団」のアジトである廃鉱山の入り口の洞窟がある。
入り口にはボロボロの服と傷が目立つ鎧、素人目でもわかるくらい手入れがされていない錆かかった剣を持った男が2人。
おそらく、見張り役だろうが幸いにもまだ気づかれていない。
「暢気なやつらだぜ。ま、おまえはそこでじっとしてな。」
対戦相手の男は見張りに向かって一気に突っ込むと手前にいた一人の首をはね、いきなりのことで呆然としていたもう一人に切りかかり、二人目を倒した。
この間わずか数秒、これだけでも彼はかなりの腕前の持ち主であることがわかる。
そうして男は洞窟の中に果敢に突撃していった。
「どうした?怖気づいたのか?」
僕は「違う!」とは言い切れなかった。胃の中身が逆流するのをなんとか押さえ込み、足が震えている。
僕は怖くなった
だけど、こんなことで怖気づいてたらきっとこの先ぜったい生き残れないし佐倉たちの足手まといになる。
だから僕は、僕なりの方法でこの依頼をやり遂げる!
僕は能力を発動。画家だった祖父から譲り受けた愛用の筆を持ち、軽く念じる。
すると、筆が書道パフォーマンス用の巨大な筆のように大きくなる。それを抱きかかえるようにして持ち、地面に絵を描く。普段なら何時間も掛けないと完成しない絵もこの能力を使えば数秒で書き上げることができる。
そして絵を描き終え、筆の柄の部分の先端で「ドン!」と勢いよく地面を突くと描いた絵が盛り上り消火器のようなものが飛び出る。
僕が描いたのは昔、佐倉から聞いたことがある非殺傷武器「スタングレネード」を合計で三つ出す。
「絵が具現化!?いったいどんな魔法式を!?」
「耳と目を塞いでください。危険ですから。」
驚くギルドマスターを尻目にピンの部分に一緒に具現化した長いロープを結びつけて洞窟に投げ入れる。
投げ入れられた「スタングレネード」はゴロゴロと転がり、そして奥まで行ったと思いロープを
「えいっ!!」
と力いっぱい引っ張りピンが全部抜けた手ごたえを感じるとすぐさま地面に伏せて目と耳を塞ぐ。
これも昔佐倉から聞いた方法だ。
バァァァン!!!!
洞窟からものすごい音と強烈な光が溢れ、中からかすかに盗賊たちのうめき声が聞こえる。
「な……なんだいまのは…?」
「もう目と耳を塞がなくても大丈夫ですよ。」
未だに目と耳を塞いで地面に伏せているギルドマスターを起き上がらせて一人で洞窟の中に入る。
洞窟内はあの男が倒したと思われる死体と完全に気絶している盗賊がそこらじゅうに転がっていた。
たまにまだ意識があるやつがいたがそいつは近くに偶然落ちていた木の棒で殴って他の仲間と一緒に気絶してもらった。
僕は彼らを一箇所に集めてピンを抜いたロープで纏めて縛り上げ、全員いるかどうか人数を数える。
「……37、38、39、40、41。あれ?」
なぜか一人多い。
「おかしいな?数え間違えたかな?」
そう思ってもう一度数えようとすると
「う……うう…目がぁ~。」
「………あっ。」
対戦相手の男まで盗賊と一緒に縛り付けていた。
「まいいや、もう縛っちゃったし。」
縄を外してもう一回縛りなおすのが面倒になり、そのままにして僕らと一緒に来て外で待機していた檻のような馬車に載せてギルドマスターと共に帰路に着いた。
こうして僕らの依頼は4人とも勝利して対戦の幕を閉じた。
ちなみに、あの男はその後引き渡し担当の役人に助けられて盗賊と共に牢獄入りは免れたらしい。
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