モグラの恩返し
投稿が遅れて申し訳ありません。
また、これから先私生活の問題で投稿が不定期になります。
ご了承をお願いします。
「面妖な……。」
洞窟の前に野口、つまり俺、対戦相手の男、ギルドマスターが立っている。
俺がくじ引きで引いた依頼は「ソルディオス鉱」という希少鉱物の採掘だ。話によるとこういった洞窟の奥深くで採れるらしい。
ただ、「ソルディオス」と聞くとどうしても某変態企業が開発した自立型巨大浮遊兵器、通称「あんなもの」を連想してしまう。
いまにもあのオペレーターさんの名(迷)台詞が聞こえてきそうだ。
「面妖はないだろ、翡翠色をして綺麗だぞ。」
「それ一番危険ですよね?」
さっきから「いかん!そいつには手を出すな!!」という天の声?が聞こえるのは気のせいだろう。
そしてそうだと願いたい。
「どうした?まさかビビッてるのか?」
男が余裕の表情を見せると松明を持ってさっさと中に入っていった。
「変なものが出てきませんように……。」
俺は心の中で念じながら中へと入る。
「おいちょっと待て、明かりはどうした?」
「いえ、大丈夫です。」
ギルドマスターが呼び止めるがちゃんと対策は考えてある。
洞窟の中は確かに暗いが俺にはこの能力がある。
視力を夜目の利くフクロウ、嗅覚を犬、聴力をゾウ、腕をゴリラの腕力、足をアリに設定、さらにコウモリの超音波能力も付ける。
なぜ足をアリにしたかというと、アリは常に足から独特のフェロモンを出してどんなに巣から離れてもそのフェロモンを頼りにすればちゃんと帰ってこれる。
こんな洞窟だと中が迷路でもおかしくない。だからあえてアリにした。
「それじゃあ、行きますか。」
俺は洞窟の中へと足を踏み入れた。
フクロウの視力のおかげで視力は全く問題ないし、コウモリの超音波で周囲の警戒、把握もできる。
これで迷うことはないだろう。
俺はスタスタと昼間の道のように奥へと進む。
後ろからギルドマスターが松明片手について来る。
「しかしなんでこんな暗闇を平然として進めるんだ?」
「まあ、努力の賜物ですよ。」
ギルドマスターの質問に適当に答える。
まあ、本当のことを言って信じてくれるとは思っていない。
しかし、この洞窟は思った以上に深い。そして何より怖いのはこの真っ暗闇の中だ。今回はギルドマスターがいるからいいものの、もし俺一人だったら間違いなく孤独に負けているだろう。
そうならないように途中で鼻歌を歌ったり、ギルドマスターと他愛のない話をしていると
ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
「……なんだ?」
何かが近づいてくる。
俺は周囲に超音波を発するが、帰ってくるのは壁と床に跳ね返ってくる音だけ。
だが音は聞こえるので確実に何かいる。
「………来る!」
音が止み、地面が盛り上って何かが出てくる。
既にこっちは身構えているのでいつでも攻撃はできる。
「出てくるのは何だ?AMI〇Aとかゲイ〇ンでも出てきたか?」
「なんだそのAM〇DAとかゲ〇ヴンって?」
そして地面から何かが出て、こっちに視線を向けた。
しかし、出てきたのはキング・オブ・変態企業製の生物兵器でも「興」や「干」みたいな頭の筋骨隆々のいい漢たちではなく
「きゅ~。」
体長1mほどのメルヘンチックなモグラだった。
「ビッグ・モール。体長1mほどのモグラで性格はとても温厚、地中や洞窟の奥に集団で暮らす。個体差もあるが人間並みの知能と学習能力もち、土木や採掘技術に優れているためその技術力や鉱物資源を人間に売り、代わりに食料や日用品を購入するという共存体制をとる地域が多い。しかし声帯は未発達のため会話は不能。コミュニケーションは筆談やボディランゲージのみになる。」
「学者かおまえは。」
そのビッグ・モールがなにやら慌てた様子で穴から出て、俺たちにトテトテと近寄ると服の袖を引っ張って先ほどの穴を指差す。
「……?付いて来いってか?」
ビック・モールが大きく頷くと先ほどの穴に潜って行った。
これは俺の勘だが、おそらく助けを求めているんだろう。そうなら、ここで無視するのはたとえ依頼を達成しても後味が悪い。
俺は穴に近寄り中を覗く。少し狭く通る分には問題ないが、匍匐前進じゃないと進むのは厳しそうだ。
俺は案内役のビッグ・モールを先頭にして穴の中を匍匐前進で進み、ギルドマスターもそれに続く。
そして少し進んだところで
「あっ、ちょっとペースを緩めてくれないか?」
「いいですけど、何かありました?」
「いや、その、なんだ……胸が……邪魔になってだな。」
「余計な見栄張ってないでさっさといきますよ。」
「………くっ!」
さらに進むこと約10分、俺たちは広い空間に出た。途中でギルドマスターがブツブツと独り言のようなことを言っていたがすべて聞き流した。男の俺が口を挟むべきことではないだろう。
その空間の奥には巨大な岩があり、周りにはたくさんのビッグ・モールが集まっていて岩をどかそうと必死に動いている。
「………これは不味いな。」
おれは近づき、岩をよく見ると岩の中から蚊の泣くような声が聞こえてくる。おそらく、天井の一部が崩落し、仲間が半分生き埋めにされて今は救助活動の真っ最中なところに俺たちが来て急遽応援を頼んだと言うことだろう。
「よし、なら……。」
俺はビッグ・モールたちに離れるように伝えると軽く息を整えて岩を一気に持ち上げる。
「ぐっ…!!早く…中に!!」
肩に重みが食い込み、足腰が悲鳴をあげる。人間の10倍の腕力を持つと言われるゴリラの腕力でもこの重みだ。普通の人間なら重機の類を使用しないと動かすのは不可能だろう。俺の意図をすばやく理解したビッグ・モールたちは空いた穴から次々と中に入り、生き埋めになっていた仲間を担いで出てきた。
俺は最後の一匹が出たのを確認すると岩をゆっくりと降ろす。そのとたんに全身に疲労が襲ってきて思わず地面にへたり込んだ。
「すごいな……。あんな大きな岩を持ち上げるなんて。」
「いえいえ、これも努力の成果ですよ。」
ギルドマスターが手を差し伸べて、俺がしっかりと掴んで起き上がる。
すると、俺たちの案内をしてくれたビッグ・モールが俺に深々とお辞儀をすると淡い翡翠色に輝いた袋を手渡した。
俺はもしやと思って袋の中身を見る。そこには砲丸投げの球ほどもあろうかという翡翠色に輝く丸い石、「ソルディオス鉱」が入っていた。
「これ、くれるのか?」
俺が尋ねるとビック・モールは頷く。どうやら仲間を助けてくれたお礼のようだ。
「綺麗だ……。ここまで大きいのなんて数年に一度市場で見るかどうかだ。金額に換算すれば相当な額になるだろう。文句なしだ、依頼内容は達成したと認めよう。」
「よっしゃあ!」
俺はガッツポーズをして袋の中に大事に「ソルディオス鉱」を閉まって袋ごと抱きかかえ、ビッグ・モールたちの案内で無事に洞窟から外に帰ってきた。
こうして俺たちはビッグ・モールたちに別れを告げて村への帰路に着いた。
「なあ、一ついいか?」
「なんですか?」
「あいつはどうした?」
「あっ………………。」
ちなみに、対戦相手の男は俺たちが洞窟を出たおよそ1時間後、洞窟最下層でいじけている所をビッグ・モールたちに発見され、翌朝に1人で帰ってきた。
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