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【現世】第21章2話 五色 体感

石の匂い

香の匂い

薄紫の灯


五人の意識が

同時に沈んだ


王城の広間


ヴィヴィ

マリア

シュー

ユジャ


そして――


王城の外


赤鬼の族長

カイザー


五つの魂が

前世の層へ重なる


誰一人

声を上げない


だが

全員がわかっていた


同じ場所だ

同じ層だ


ここは幻じゃない

映像でもない


皆

ここにいる


『体感だ』


中央には


黄金の王――ヴィヴィ=ヴィオ

蒼の王妃――マリア=茉莉奈


そして


白の王女――

ウサギ姿の女性


ユジャ=夕羅の喉が

ごくり……と鳴る


(……これが)


記録じゃない

映像じゃない


体感……


切ることも

補完することもできない

生の層


シュー=翔は

無意識に一歩前へ出ていた


気づけば

守る位置へ立っている


その動きだけが

妙に自然だった


自分の意志とは

関係なく

膝をついた


盾を胸の前へ置くみたいな

迷いのない所作だった


「……三人まとめて

俺が支える」


呆れたような

深い声


「これからは――

この俺が

――三人の盾だ」


シューの気配が


ゴゴ……と

広間へ沈んでいく


守る


その感覚が

石壁へ染み込んでいった


ユジャが笑った


肩をすくめながら

張り詰めた空気を崩す


「術式は壊れる」

「理屈は崩れる」


ふわ……と

紫煙みたいに声が滑った


「でも――

愛は折れた者を

もう一度立たせる」


その瞬間――


ドン……


広間の扉が開いた


赤鬼の重圧


カイザー=オーガが

そこに立っていた


遅れて

嵌まる肉体


オーガの胸が

爆発しそうなほど熱くなる


五つの魂が

完全に揃った


カイザーが一歩進んだ


派手な礼はしない


前世の戦場へ立つ者の距離で

まっすぐ前へ出る


視線は

黄金と蒼


「……レイラのことを頼む」


その視線を

傷ごと受け止める


ヴィヴィは

拳を差し出す


「覚悟はできている」


「レイラを

もうひとりにはしない」


その一言だけで


広間の空気が

少しだけ

あたたかく戻った


白い影が

前へ出る


広間の中心を

奪うつもりはない


なのに

そこへ立つだけで

光が集まった


瞳は濡れている


だが

声は揺れない


「……お父さま」


息が少し止まる


「……お母さま」


ヴィヴィとマリアの呼吸が

重なった


そして

止まる


「おめでとうございます」


その瞬間――


白い光が

爆ぜない


割れない


ただ


ふわり……と

羽みたいに舞い


五人の足元を

静かになぞった


――パチッ


ヴィヴィとマリアの指輪へ

一瞬だけ

白い紋が灯る


承認みたいに


祝福みたいに


誓いを

次の層へ通す

刻印みたいだった


シューも


カイザーも


ユジャも――


それを

確かに見ていた

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