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【現世】第17章2話 黄金 疾走

チリ……


右手の黄金が

と鳴った


構えは静か


だが――


抑え込まれた黄金が

今にも噴き上がりそうだった


相手投手の手が

目に見えて震えている


勝負できない


ボールは

ストライクゾーンを

避けるみたいに外れた


「フォアボールォォォッ!!」


誰も拍手を忘れていた


一拍遅れて


ドォォォォッ!!


歓声が

一気に押し寄せる


球場が

大きく息を吐く


ヴィオが一塁へ立つ


右足が沈む


芝が鳴る


ズ……ン……


初球


投手のモーションが

視界へ入る前に――


走るッ!!


ズパァァァン!!


その瞬間


胸の奥の黄金が


ギン……ッ

と走った


フレームが追いつかない


映像が一瞬飛ぶ


ヴィオの姿が

コマを抜けて

二塁へ跳んでいた


時が止まる


ゴゴゴゴ……


観客席のざわめきが

一拍遅れて追いつく


二球目


ヴィオは迷わず三塁へ走る


モワァァァ!!


砂煙がレンズを覆う


画面がざらつく


その奥で

ヴィオの手が

三塁を掴んでいた


審判の腕が横へ開く


「セェーフ!!」


黄金が

三塁へ刻まれた


三球目


相手バッテリーは

スクイズを警戒して外した


普通なら止まる


普通なら見る


だが――


ヴィオは止まらない


捕手が投手へ返球する


ほんの一瞬


白球が

捕手の指を離れる


その一拍だけ

世界の音が消えた


私は直感でカメラを振る


遅い


カメラが遅い


視線が追いつくより先に

黄金は――


もう跳んでいたッ!!


三塁から本塁へ


距離なんて

なかった


ただ

黄金の影が

白線の上を裂いていく


砂が遅れて跳ねる


歓声が遅れて膨らむ


捕手の目が

遅れて開く


そのすべてを置き去りにして


ヴィオの右手が

地面を叩いた


ズザァァァッ!!


白いプレートが迫る


ドンッ!!


「ホームだァァッ!!」


時間が

一拍遅れて崩れた


ゴゴゴゴゴ……


次の瞬間――


「セェェェ――――フッ!!」


北海ドームが揺れる


スタンドが波打つ


ゴオオオ……!!


私はカメラのブレを止めない


止めたら嘘になる


仲間たちが雪崩れ込む


その中心で

黄金が燃えていた


私はズームで

その中心を固定する


勝利の輪郭が

画面へ焼きついていく


REC


まだ切らない

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