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【現世】第15章2話 翠 覚悟

先月の遠征帰り


テレビ局の裏口


街灯の下で

ヒールを脱いだ背中があった


画面の中とは違う


汗と疲労の色


鈴だった


縁石に座り

足をさすっている


足元に置かれたスマホが

震えた


画面に流れる文字


《また売名?》


《選手を利用するな》


《泣き芸いらない》


光る文字は

短いのに

刺さる


鈴は

一瞬だけ目を伏せた


たったそれだけだった


泣かない


怒鳴らない


投げない


隣の女が

無言でスマホを伏せる


白い指先が

静かに画面を覆う


「……私

間違ってないよね」


鈴の声が

初めて揺れた


か細い


だが

折れてはいない


夕羅は

視線を逸らさず言う


「今――ここで離れたら

全部ただの演出になる」


断言だった


感情ではなく

編集点を決める声


鈴は

何も言わない


ただ

ヒールを履き直した


震える手で


それでも

立つ準備をやめない


「嫌われてもいい」


小さく


けれど

はっきり


「一番近くで

一番悪役をやる」


その言葉が

闇の中で

やけに重く残った


俺は

物陰で拳を握った


爪が食い込む


(悪役……?)


違う


それは

表で叩かれる役だ


光のそばに立って

自分が燃える役だ


ヴィオを守ってるのは

俺じゃない


鈴だった


胸の奥が

ズン……と重くなる


(……落ちてる場合かよ)


そんな言葉が

内側から返ってくる

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