【前世】プロローグ 王族色 虹へ堕ちた魂
「やめて――ッ!!
その術を……止めて……!!」
バキィッ――!!
空間が裂けた
歪みが音を置き去りにする
敵陣を割り
蒼の王妃が踏み込む
――マリア
一度も涙を見せなかった妻
その顔が崩れている
ドンッ!!
白い影が飛び込む
小さな体が一直線に――
「父上を……
どうか……奪わないで……!!」
――レイラ
白の王女
――俺の娘だ
腕が上がる
今度こそ間に合う
指先が――触れた
やわらかい
確かにそこにいる
――届く
そう思った瞬間
止まった
腕が動かない
ドクン……
胸が鳴る
遅い
ズレている
届かない
触れているはずなのに
虹色の空間が軋む
温もりが
指の間から
滑り落ちていく
――剥がれている
存在が
スゥ……
ほどけていく
――ヴィヴィ
黄金の王
腕が空を掴む
何もない
マリアが崩れる
泣いている
焼けた記憶が脳裏を塞ぐ
――守るために
戦い続けた
それでも
まだ終われない
振り抜いた拳の先で
子どもの声が途切れた
ズッ……
胸が震える
「父上……ありがとう……」
細く
ほどける
レイラの気配が指先から落ちる
まだそこにいるのに
もう掴めない
――スゥ……
輪郭が薄れる
温度が抜ける
存在そのものが消える
その瞬間
バチッ
術式の奥が歪んだ
黒い亀裂
その内側
何かがいる
――レイラを見ている
覗き込むように
一瞬
黒い亀裂の奥で
口元だけが笑った
……マリア
……レイラ……
運命だろうが
何だろうが
関係ない
ふたりを
取り戻すまで
俺は
終わらない
――スゥゥ……ッ
術式が閉じる
黄金と
蒼と
白の魂――
流れに呑まれる
渇いた声が
闇を割る
「……虹へ……
堕ちた……」
その時
遥か彼方
白金の光が揺れた
静かに
ただ静かに
見守るように
悲しむように
祈るように
「還れ――」
遥か闇の奥で――
黒金の眼が開く
誰にも届かない場所
――ズ……ン
鼻腔を刺す
鉄の匂い
喉を焼く
血の温度
その眼は
消えゆく光を見つめていた
白金は
祈り続けた
黒金は
微笑み続けた
――運命は
ここから始まる




