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五郎とたまの、のんびり四季ごよみ  作者: 浅見つむぎ


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8/9

「雨上がりの、ひと粒の甘さ」

五郎:通り雨のあとの、甘い褒美


三十分ほどで、雨雲は嘘のように去った。


ブナの隙間から、強い光が一気に差し込んでくる。


膝の上で眠っていたたまをそっと下ろし、背負子を担ぎ直す。


「よし、帰るか」


濡れた葉が光をはじき、森全体が細かく輝いていた。


雨上がりの、湿った土の匂いが立ちのぼる。


往路をたどりながら、ふと足を止める。


行きに目を留めていたエゾイチゴの切り株だ。


白い花の脇に、いくつかだけ、早く色づいた実が見える。


雨の重みで、少しうなだれている。


しゃがみ込み、指先でそっと摘み取る。


口に含むと、鋭い酸味のあとに、濃い甘さが追ってきた。


「……いいな」


小さく息をつき、もう一粒を掌にのせる。


「たま、お前も頑張ったからな」


差し出すと、たまは鼻先を寄せて匂いを確かめる。


それから、ざらりとした舌で手のひらをなぞり、実を口に運んだ。


満足そうに噛む様子を見て、思わず笑みがこぼれる。


悪くない帰り道だ。


たま:通り雨のあとの、甘い褒美


五郎の膝の上でうとうとしているうちに、雨の音が消えていた。


目を開けると、光が森の中に広がっている。


雨宿りは終わりらしい。


地面に降りて、また五郎のあとをついていく。


葉っぱはどれも濡れていて、光を受けてきらきらしている。


さっきとは、同じ山なのに少し違う。


歩いていると、五郎が立ち止まった。


白い花が咲いていた切り株のところだ。


その横に、小さくて赤い実がいくつかついている。


五郎がそれを口に入れると、やわらかく笑った。


いいものらしい。


「たま、お前も頑張ったからな」


差し出された実に、たまは鼻を近づける。


雨上がりの匂いに混じって、甘い気配がする。


ぺろりと口に入れると、酸っぱさのあとに、じんわり甘さが広がった。


たまは目を細める。


さっきまでの雨も、悪くなかった気がした。

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