「ひんやり小川と青いおさかな」
五郎:初夏の山刀と、研ぎ澄ます音
朝のうちはまだ空気がひんやりとしていて、気持ちが良い。
朝食を済ませ、縁側に腰を下ろして愛用の山刀を引き抜く。
この時期の山は草木が生い茂り、蔦や小枝を払う機会が増えるため、刃物の手入れは怠れない。
砥石に水を少し滴らせ、刃をあてて静かに前後に動かす。
シュッ、シュッ、と規則正しい音が静かな庭に響き渡る。
刃先が朝日に美しく光るのを確かめ、最後に軽く油を引いて鞘に収めた。
「にゃお」
見上げると、たまが縁側のすぐ側にある物干し竿の上から、じっとこちらを見下ろしていた。
まるで私の手元を品定めでもしているかのような、真剣な目付きだ。
「よし、たま。今日も少し奥まで歩くぞ」
声をかけると、たまは器用に竿の上で身を翻し、トンと地面に降りて私の足元に寄り添った。
たま:初夏の山刀と、研ぎ澄ます音
朝のご飯が終わると、五郎は縁側に座って、腰から大きくてピカピカする「刃物」を取り出した。
たまは、お外の細い棒(物干し竿)の上に飛び乗って、高いところから五郎をじっと見つめる。
五郎が四角い石に、お水をちょんちょんと垂らす。
それから、シュッ、シュッって、とっても静かで かっこいい音をさせながら、刃物をこすり始めた。
たまはその音が聞こえると、なんだか背中がシャキッとする。
五郎の目が、いつもより少しだけ真面目で、鋭くなっているのも知っている。
「よし、たま。今日も少し奥まで歩くぞ」
五郎がこっちを見て、低い声でお話しした。
たまは「はーい」って心の中で言いながら、高い棒の上から地面にぴょんと飛び降りる。
五郎の長靴の横にぴったりくっついて、きょうの冒険の準備はいつでもばっちり。




