『火のそばの夕べ』
五郎:山の恵みの手入れと、火の粉
森から戻り、拾ったシカの角を裏庭のタライできれいに水洗いする。
泥を落とすと、立派な三又の角が夕日にやわらかく光った。
よく乾かしてから、山刀の柄や、たまのおもちゃでも作ってやろうか。
作業を終えて家に入り、土間の鉄釜に火を入れる。
ストーブはいらない季節だが、夕飯の支度と湯を沸かすための火は欠かせない。
パチパチと爆ぜる薪の音を聞きながら、昨日残しておいたウドの皮を細かく刻む。
ごま油でさっと炒めて、醤油と砂糖、少しの唐辛子で味を調えれば、きんぴらの完成だ。
「にゃお」
いつの間にか、たまが火のそばの座布団に丸くなっていた。
火の粉が小さく舞うのを、薄暗い部屋の中でじっと見つめている。
派手さはないが、こういう素朴なおかずが一番うまい。
小さな相棒の気配を感じながら、静かに箸を進めた。
たま:山の恵みの手入れと、火の粉
五郎が、さっき拾ったでっかい角をジャブジャブ洗っていた。
きれいになった角は、お外の夕焼けの光を浴びてキラキラしている。
お家に入ると、五郎が土間でパチパチって火を起こしはじめた。
もうお部屋の中は寒くないけれど、この火の音をきくと、たまはとっても安心する。
五郎の近くのあったかい座布団の上に、まあるくなって座る。
五郎がトントントンって、昨日のお野菜の残りを小さく切るいい音が聞こえてきた。
じきに、こうばしくて、すこし甘い、いい匂いがお部屋いっぱいに広がる。
火の中から、ちっちゃな赤い光が、ふわっと飛んだ。
たまは、おめめを丸くしてそれをじっと追いかける。
五郎のご飯も、たまのカリカリも、もうすぐ準備ができる時間。
お外がだんだん真っ暗になっていくのを、五郎と一緒に静かに待っている。




