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隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第二章 甘い生活と、揺らぐ想い

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8/21

第8話 私とデートしようよ



 ――――――



 翌日、俺はバイトの面接に望んだ。

 気合い充分だが、気負い過ぎてもうまくはいかない。適度に肩の力を抜くようにと、詩乃さんからのアドバイスを思い出す。


 ……時間にして約ニ十分。緊張はしたが、わりと話せたと思う。

 結果はわからないが、やり切ったつもりだ。


「なんとか終わったな。これからどうしよ」


 現在、昼前。朝から外出して、このまま帰るのはもったいない。

 近くのスーパーにでも寄ってから帰るかな……


「おーい、甲斐くーん!」


 携帯で時間を確認していたところ、俺の名前を呼ぶ明るい声が響く。

 近くの大木を囲っている柵に腰掛けていた女性が、手を振っていたのだ。


 白のTシャツに青のラウンドネックのカーディガンを羽織り、デニムパンツを履いている詩乃さんだった。


「詩乃さん!? どうしてここに?」


「面接の時間は聞いてたから、そろそろ終わるかなーと思って待ってたんだ」


 駆け寄ってきた詩乃さんは、屈託のない笑顔を浮かべた。

 わざわざ、待っててくれたの……!? 感激……!


「甲斐くん、この後は予定なかったよね。

 だから、私とデートしようよ」


「!?」


 目を細め、口端を上げる詩乃さんからの衝撃の言葉。いきなり過ぎない!?

 その魅惑的な言葉が、頭の中で何度も繰り返される。


 デート……詩乃さんとデート……!


「行きましょう!」


「お、おう」


 詩乃さんから、デートに誘われたんだぞ!? 行かないわけがない!

 勢いよく答えすぎて、提案した本人にちょっと引かれてるけど、関係ないね!


「行きます、絶対。たとえ友達との約束が入っていたとしても、放り出して行きます」


「それはお友達を優先してあげよう? 先約ならなおさらだよ」


「大丈夫です、休日に遊ぶ友達なんてまだいないので」


「う、うん?」


 詩乃さんとのデートがあるなら、この後姉ちゃんと会う予定があろうと学校に呼び出されようと、すべて蹴って詩乃さんに捧げる。

 金も時間も全部捧げますとも。


 ……なんか、貢いでる男みたいになってる。


「ともかく、しよっか、デート。

 それじゃあまずは……」


 ……俺はこれまでにデートをしたことがない。男女複数グループで遊んだことはあっても、それはデートではないし。大前提として、異性との交際経験すらない。

 デートってなにをすればいいのか……実はよくわからない。


 これは大問題だ。男たるもの、主導権を握りたいのに……



 きゅるる……



「……」


 恥っっっず! 今、俺の腹の音が鳴った!

 なんでだよ! ちょっとは空気読んでくれよ、俺の腹!


 今の、聞こえちゃったか……!?


「ふふ、かわいい音。じゃあ、お昼にしよっか」


 聞こえてた! めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど!

 俺の腹の音、かわいいか!?


 くそう、俺は俺の腹が妬ましい。


「ファミレスの前だし、ちょうどいいね。落ち着いてお話も出来るし」


 ……話か。確かに最近、食事をするため毎日のように会うようになった。だが、落ち着いて話をしたことはあまりない。

 主に、詩乃さんがすぐに酔っ払ってしまうから。


 落ち着いた空間での食事は、デートらしい……と言えるのかな。


「それじゃ、行こう」


 ともあれ、断る理由もないのだ。


 俺たちは、店内へ足を踏み入れる。女性店員の案内に従い、席に移動。

 ファミレスと言えば、『入学祝い』を思い出すな。……姉ちゃんが先に帰っちゃったんだよな。


 俺の分を奢るつもりが、誤って詩乃さんに任せる形になってしまった。

 あの後、ちゃんと立て替えてもらったようだが。


「なに食べようかな」


「どれも美味しそうですね」


 メニュー表を開き、しばらく思案。

 注文する料理が決まったところで、店員さんを呼ぶ。


 近くにいた女性店員が「はい!」と元気よくやって来る。


「お待たせ致しました。ご注文はお決まりですか?」


 はきはきとした声が、メニュー表を眺める俺の頭上に振った。

 先に詩乃さんが、料理の写真に指を滑らせる。


「私は、ミートスパゲティをお願いします」


 続けて俺も、同様に注文する。


「俺は、天津炒飯を……あれ、築野さん?」


「え……し、白鳥!?」


 メニューを見ながら料理名を口にして、最後に顔を上げた。


 そこで、目が合ったのだ。ファミレスの制服を着ている、築野 浪(つくの なみ)さんと。

 彼女はぽかんとした表情で、口を開けている。


「道理で、聞き覚えのある声がすると思ったら……まさか、築野さんだったなんて」


「こ、ここでバイトしてて……」


 へぇ、バイトしてるとは聞いていたが、なにをしているかは知らなかった。

 まさかこのファミレスだったなんて。


 学校とは違う、新鮮な姿。似合っていると思う。

 ただ、短めにした赤茶色のポニーテールは学校と同じだ。


「甲斐くん、お知り合い?」


 横から疑問を口にするのは、蚊帳の外になっていた詩乃さんだ。

 いけない、ちゃんと紹介しないとな。


「詩乃さん。こっちはクラスで一番仲の良い女子の、築野さんです」


「! い、一番仲の良い……!

 ……っ、つ、築野 浪です。こんにちは」


「こんにちはー」


 軽くではあるが、クラスメイトだと紹介。

 築野さんはなにかに感激したように、なにかを噛み締めていた。が、すぐに自己紹介をして軽くお辞儀をした。


 やっぱり礼儀正しい人だ。

 今度は築野さんに、詩乃さんを紹介して……


「築野さん。こっちは俺の……」


「どうもー、甲斐くんのお姉さんの詩乃でーす、はじめましてー」


「!?」


 ……なぜかこの人は、自分を俺の姉だと言い張り……ニコニコしていた。手を振っていた。

 そりゃ、姉のような存在……であることは間違いない。だが、今の言い方は『本物の姉』のようではないか。


 これは、詩乃さんなりの冗談なのか? それにしてもわかりにくすぎる!


「あの、姉って言っても違くて…………」


「……あっ、え、えっと、ご、ご注文を繰り返しますね! ミートスパゲティと、天津炒飯で、お間違いありませんか!」


「大丈夫でーす」


 これは冗談だと伝えようとしたが、築野さんは先ほどの注文を確認し、ペコリと頭を下げて行ってしまった。

 て、訂正する間もない……


「あー、もっとお話ししたかったけど、お仕事中は難しいか」


「詩乃さん、なんであんなこと言ったんです?」


 非常に誤解を招くことだ。

 いや誤解されたからって、まずい案件でもないんだけどさ。


「ごめんね。でもあの子、かわいくて……無性に、からかいたくなって」


「どういう事!?」


 ……一切の悪意がない言葉だった。彼女は、とても純粋だった。


 からかいたくなった……って、初対面の高校生になにしてんだこの人は……!?

 もしかして、昼前から酔ってるなんてことないよね!?

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