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隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第六章 初恋と、これから

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最終話 恋人である隣のOLに



 ――――――



 紆余曲折あって、俺と詩乃さんは晴れて恋人同士になった。

 まさか、本当にこんなことが起こるなんて。……そんな気持ちが頭の中を駆け巡り、夢ではないのかという気持ちさえ生まれてくる。


 けれど……


「夢じゃない、よな」


 一度は告白して、フラレて……せめて気持ちだけでも確かめようと思ったら、逆に詩乃さんから告白されて。

 たった一日で、濃すぎる……俺の人生、ぎゅぎゅっと凝縮されてしまったんじゃないかってレベルだ。


 詩乃さんが出ていった後の部屋を、見る。いつも通りの光景……でも、かけがえのないものだと気づけた。


「さて、俺も準備するか」



 ――――――



 学校では、これまたいつも通りの光景。教室に入れば先に登校していた空光が駆け寄ってきて、後から登校してきた築野さんと挨拶を交わす。


 彼女には、俺の知らないところでもお世話になったみたいだ。詩乃さんと話し合い、気持ちを確かめさせてくれたらしい。

 お礼を言うべきか……でも、文化祭での告白があったばかりで、いきなりそんな話題?


 そもそも、なんて話そう……そう考えていると、築野さんの方から近寄ってきて……


「おはよう、白鳥」


「お……おはよう」


 それから、なぜか俺の顔を覗き込むように見つめてきて……


「……ん、うまくいったんだね」


 そう言って、軽く笑ったのだ。


「……うん、おかげさまで」


「私はなにもしてないよ。……あぁ、いや……してないってことはないかな。

 宣戦布告、みたいな? いや、ちょっと違うかな」


「宣戦布告……なにを?」


「内緒」


 顔見ただけで、わかられてしまった。やっぱり俺ってわかりやすいのだろうか。

 最後に見た彼女の顔は、笑っていて……でも泣きそうな顔だった。今は、笑っている。


 ……俺からこれ以上なにかを言うのは、野暮かな。


「ま、一応言っておくよ。……おめでとう」


「……ありがとう」


 こうして祝ってくれる、とてもありがたいことだ。

 築野さんには、本当にいろいろお世話になった。彼女がいなければ、今の俺たちの関係はないだろう。


 今度改めて、お礼をしないとな。



 ――――――



『わざわざ律儀ねぇ、あんたも』


「……まあ、姉ちゃんにもいろいろしてもらったしな」


 学校終わり。スーパーに寄ってから帰った俺は、姉ちゃんに電話をしていた。

 詩乃さんと付き合ったことを、報告するためだ。


 本来なら、わざわざ伝える義務などないが……あの電話のおかげで俺ももう一度勇気を持てたわけだし、詩乃さんも姉ちゃんに後押ししてもらったらしい。

 お世話になったのだから、教えるのは当然だろう。


『けど、そっかぁ。これでいずれ、詩乃が親戚になるわけだ』


「! 身内って……気が早いっての」


『でも、その気がなくはないんでしょ?』


「……まあ」


 ったく、姉ちゃんはいつも直球なんだから。

 だからこそ、救われるところもあるんだけどな。


 報告し、少しの激励をもらって……電話を切る。

 さて、やることはある。とりあえず宿題終わらせて、料理を作らないとな。


「……なんか、そわそわしてるな」


 詩乃さんがご飯を食べに来るのは、いつものことなのに……どこか落ち着かない自分がいる。

 やっぱり、お互いの関係性が変わったから意識しているんだろうか。


 なんせ……これからは、隣人ではなく恋人が部屋にやって来るのだ。


「……っし」


 ……それから俺は、時間を気にしながらも爆速で宿題を終わらせ、風呂に入り、料理に取り掛かる。

 もはや慣れたもの。それに、詩乃さんを出迎えるためとなれば諸々の作業が捗る。


 それから料理に集中。今日はお肉と野菜を炒めたものに、卵焼きだ。それからインスタントの味噌汁。

 詩乃さんは俺の作った味噌汁を毎日飲みたいと言ってくれたが、さすがに毎日は厳しい。


「……これでよし、と」


 一通り出来上がったところで、図ったようにインターホンのチャイムが鳴る。

 俺は足取り軽く、玄関に向かい……扉を開けた。


「! いらっしゃい、詩乃さん」


「こんばんは、甲斐くん」


 扉の向こうには、すでに寝間着に着替えた詩乃さんの姿があった。仕事を終え、部屋で準備を済ませ、リラックスモードだ。

 にこにこと笑みを浮かべ、手を振っている。それだけで、俺の心は温かくなる。


 早速部屋に招き入れる……直前に、詩乃さんが「ぁ」と声を漏らした。


「どうしました?」


「ええとね……ただいま」


「! ……おかえりなさい」


 ただそれだけのやり取りに、胸が高鳴る。

 恥ずかしげに笑う詩乃さんは、部屋に入り……扉を閉めた。


 お風呂上がりだからだろうか、シャンプーのいいにおいが鼻をくすぐる。


「うーん、いいにおい。お腹空いてきたー」


 俺もいいにおいです……とはさすがに言えない。キモいよなそれは。


「ちょうどできたところです。準備、手伝ってくれますか?」


「もちろん!」


 俺たちは、食器や飲み物を食卓に並べていく。

 作り立ての料理も並べ……いつものように、対面して座る。


 そして、手を合わせて……


「「いただきます」」


 声を揃えて、食事に手を伸ばした。

 俺は箸を手にご飯を、詩乃さんは缶ビールを手に……


「ぷはぁ!」


 仕事終わりの一杯を、キメ込んでいた。


 ……初めは、近いようで遠かった憧れの人、詩乃さん。

 まさか彼女と隣同士の部屋になったことがきっかけで、こんなにも生活が一変するなんて……思いもしなかった。


 一緒にご飯を食べ、笑いながら話をして、お昼には弁当まで作って……今は、恋人の関係だ。

 勇気が出なかった、手を伸ばせなかった……でも、一歩を踏み出した結果、こうして気持ちを通わせることができた。


 ずっと片想いしていた相手と、付き合うことができた。きっと、この先楽しいことだらけではないだろうけど……彼女と一緒なら、乗り越えられるだろう。

 だから、まずは……


「んんーっ、おいしぃー! やっぱり甲斐くんの料理は最高だなー!」


 ……この、俺の恋人である隣のOLに……明日も、とびきりご飯を作ろう。

あとがきへ続きます。


ここまで読んでくれて、ありがとうございます!

ぜひ応援などくださると、とても嬉しいです!

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