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隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第一章 憧れの初恋女性と、始まる甘い日常

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第5話 私のために、毎日味噌汁を作ってくれない?



「ど、どうもー」


「なんでそんなよそよそしいんですか」


「だ、だってぇ」


 諸々の支度を済ませた詩乃さんが、戻ってきた。


 新しいスーツに着替えて、髪もセットしている。肩まで伸ばした茶髪を後ろで結んだ、見慣れた姿だ。

 ほんのりと頬が赤いのは、シャワーを浴びてきたからだろうか。


「ちょうど、作り終えたところです。後は……」


「あ、お皿ね! 私も手伝う!」


 お言葉に甘え協力してもらい、二人分をテーブルへと用意する。

 出来立てほやほやの料理が、食卓に並んだ。


 ご飯に味噌汁に目玉焼き。詩乃さんは目を輝かせていたが、大げさではないかな。


「手作り感溢れる料理だ、いつぶりだろう! おいしそー……!」


「……」


 この人本当に料理しないんだな……と、そう思わせるには充分な反応だった。

 俺と詩乃さんは、向かい合うようにして座り、どちらともなく手を合わせる。


「「いただきます」」


 偶然にも声が揃った。

 食事の際の挨拶は必ずしろと、小さい頃から姉ちゃんに言われたことだ。

 その習慣は、一人暮らしになっても変わらない。


 さて……詩乃さんの口に、合うだろうか。


「ずずっ……」


 ふーふーと、味噌汁を冷まし……詩乃さんの唇が茶碗に触れ、口の中へと流し込む。


「……ふはぁ、あったかくて身に染みわたるぅ。

 ……甲斐くん? そんなに見られると、ちょっと恥ずかしいかな」


「え、あ、す、すみません」


「ううん、謝ることはないけど」


「それで……ど、どう、ですか? 味の方は」


 少し緊張するが、聞かずにはいられない。

 姉ちゃん以外に、料理を振る舞ったことがない。その時は「うまい」と言ってくれたが……


 果たして、他の人はどんな感想を抱くだろう。

 ほっと一息ついた詩乃さんは、茶碗をテーブルに置いて……


「うん、とってもおいしい」


「!」


 不安を払しょくする言葉を、明るい笑顔で言ってくれた。


 あぁ、やばい、どうしよう……すげー嬉しい。

 自分の作ったものをおいしいって言われるのって、こんなに嬉しいんだな。


「そ、そうですか……」


 その顔を見ていればわかる。あれは、本当においしいと思って食べてくれている。

 それに、何度もおいしいと言ってくれるのだ。しつこいとは思わない、嬉しい。


 味付けは、これでちょうどよかったみたいだ。おおまかでも今回の配分を覚えておこう。


「簡単なやつですよ? さすがにほめ過ぎですって」


「そうなの? だとしても、おいしいのは事実だからなぁ。

 はぁ、これほんと……ずずっ……毎日飲みたいくらいだよ」


 こんな簡単なもので、こんなに喜んでくれるのなら……次はもっと、凝ったものを作ってみたい。

 そんな気持ちにさせられる。


「あ、そうだ甲斐くん!」


 目玉焼きをおかずに白飯を食べ、味噌汁をすすっていた詩乃さんが……ふと、茶碗を置いた。

 いったい、どうしたのだろう……


「あのね、私のために、毎日味噌汁を作ってくれない?」


「はい。

 ……ん?」


 なん、だと……詩乃さん、意味ちゃんと理解して行ってる?

 だって、その言葉……言い回し的に、プロポーズ的なやつだよ?


 あ、動揺してお皿落とさないようにしないと……


「甲斐くん? 顔真っ赤だよ?

 あ、心配しないで。私の分の材料費とかその他諸々は、もちろん私が払うからね」


 いや、そういう問題ではなく。


 とにかく落ち着くんだ俺。詩乃さんがどんなつもりであんなことを言ったのか、確認しなければ。

 詩乃さんのことだ。深い意味はないはず……


「俺の、味噌汁を……毎日?」


「うん。だって甲斐くんのお料理、どれも美味しいんだもの! 隣の部屋だし、毎日食べに来ていいかなぁ!」


「……」


 ……そう……思わせぶりなだけで、ただ料理の味を褒めただけだ。いや、思わせぶりだと俺が勝手に勘違いしていただけだ。

 わかっていた。だから、がっかりするな俺。早合点した自分が、悪いんだ。


 それにしても……俺の料理を美味しいと思ってくれたのはわかる。毎日食べたいほどに思ってくれたのも。結果、思うだけでなく実行したい、と。


 すげえ飛んだなぁ。


「だめ?」


 っ……困り顔からの上目遣い……だと!?


 俺を困らせてしまったと思ったのだろう。それはいいとして、詩乃さんから上目遣いなんてされることは、普段ない。

 互いに対面に座っているからこその位置関係。しかも、眉を下げて困り顔を表現することで破壊力アップ!


 そんな計算はないだろうとはいえ……すごい威力だぁ!


「いくら隣の部屋って言っても、だからって甲斐くんに料理を作りに来てもらうのも悪いじゃない?

 だから、私が通おうかなって」


 私が通おうかなって……私が通おうかなって……

 こ、これじゃあまるで、通いづ……


 ……いや、この場合詩乃さんが俺に料理を作りに通うわけじゃないから、通い妻という表現は正しくない……のか?


 ……通われ夫?


「でも、やっぱり迷惑だよねぇ……いきなりこんなこと言って。料理を作る手間だって増えるのに」


 迷う俺に、詩乃さんはしゅんとする。

 その姿に、気持ちが慌てるのを感じる。そりゃ、困ったには困ったが……食べに通ってくるのが嫌だ、という意味ではない。


「そんなことないですよ。作るのは一人分も二人分も変わらないですし……」


「そ、そうなの?」


「ただ、いきなりだったから驚いただけです。

 ……材料費も出してくれるって言うなら、俺は別に……」


 ……本当は、めちゃくちゃ嬉しい。

 だって、憧れの女性が、自分の作った料理を食べたいから、わざわざ通ってくれるというんだぞ?


 しかもしかも、だ。毎日通ってくれると言うことは、合法的に詩乃さんと会える機会が増えると言うこと。

 この部屋に越してきてから約三カ月……いくら隣の部屋とはいえ、学生と社会人では、時間もなかなか合わない。会いに行く理由も、ない。


 だけど、毎日食事となれば、毎日会えると言うことだ。

 それだけで嬉しいのに……


「ほんと!? やったぁ!」


 詩乃さんは、その表情を笑顔に変えて、両手を上げて万歳。喜びを身体で表現している。

 あ、やばい……すげー嬉しい……


 このままだと顔が緩んでしまいそうなので、顔を背けた。

 今の俺、絶対変な顔してる! 詩乃さんには見せられない!


「はぁ、明日から楽しみだなぁ……あ、明日からでいい?」


「もちろん。好きなものとか苦手なもの、教えといてくださいね。献立考えるときに参考にするんで」


「了解!

 ……あ、お買い物のときに、おつまみとかも買っておいてくれると嬉しいなぁ。お酒は、持参するからさ!」


「はいわかり……え?」


 酔っぱらった詩乃さんが突撃してきてから、まだ一日しか経っていないのに。濃厚な時間だなぁ。

 実はちょっと楽しいと思っていたのは、内緒だ。


 ただ……まさかこの日以来、一人暮らしの男子高校生の部屋の冷蔵庫に、缶ビールが収まることになるとは、思ってもいなかったが。

 それもまた……時間が経てば、慣れてくるものだ。


「えへへ、楽しみだなぁ」


 でも、この笑顔を見ていると、ついこう思ってしまう……

 まあいっか、と。

ここまでで読んでくれて、ありがとうございます!

ぜひ応援などくださると、とても嬉しいです!

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