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隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第二章 甘い生活と、揺らぐ想い

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第10話 一緒に行く? 海



 ――――――



「注文取りに来てくれた子、築野ちゃんって言ったっけ。かわいかったねぇ」


 注文した料理が運ばれてくるのを待つ間、詩乃さんはやたらと楽しそうだった。

 どうやら、先ほど会った築野さんを気に入ったらしい。……初対面でからかうくらいには。

 というかこの人、人をからかうようなことするんだな……またも俺の知らない詩乃さんを見ることができた。


 ともあれ、誤解は今度解いておかないとな。


「それにしても、築野さんもここで働いているのか」


 つまり俺がここのバイトに受かれば、一緒に働くということになるのか。

 働く先に知った人間がいるというのは、気持ちが楽だ。それに、築野さんなら話しかけやすい。


「お待たせしました、こちらミートスパゲティになります」


「わっ、来た来た!」


 店員さんの声とともに注文した品が届き、詩乃さんは目を輝かせていた。

 ちなみに、料理を持ってきてくれた店員は築野さんではない。


 続いて、俺が頼んだ品も届く。


「お待たせしました、こちら天津炒飯です」


「どうも」


 どちらも、おいしそうだ。

 ……そうだ。この味をよく噛み締めて、自分で作れないか試してみよう。


「料理持ってきてくれたの、築野ちゃんじゃなかったね。

 ……甲斐くん、今度誤解解いておいて」


「はいはい」


 もしかしてこの人、すぐに再会できるからその時に誤解を解けばいい……といったノリであんなことを言ったのか?

 そんな確証はないのに。やはりどこか抜けている。


 ……ま、それはそれとしてだ。


「それじゃ、二人とも揃ったところで食べますか」


「そうだね。いただきまー……」


「営業妨害で訴えるわよ! お客だからってナメたことしてんじゃねぇぞこらぁ!」


 手を合わせようとしたところに、店内に野太い声が響いた。

 まるで、店内が揺れたかのような錯覚さえある。


 ここからじゃ見えないけど、店の入り口付近で、なにかやってる……?


「て、店長、他のお客様もいますから……」


「あらやだぁ、皆様大変ご迷惑をおかけしましたぁ! ただいま、営業妨害しようとしてきたクソ客……いえクソ野郎をこらしめているので、少々うるさくなるのをご了承くださいっ。あらやだぁ、私ったらはしたない言葉を、おほほほ」


「ひぃいいい、ごめんなさぁい!」


 今の『店長』って呼ばれてたよな……

 俺が面接したのも、店長。ゴリゴリマッチョの、がたいのいい男だ。あの人に恫喝されたら、泣く自信がある。


 ただ、どうやら悪いのはあの客らしい。難癖つけてタダ飯を食おうとしたが、それがバレて……という顛末。

 なんとも情けない話だ。


「……食べよっか」


「はい」


 料理が冷めないうちに、食べてしまおう。


 俺たちはその後料理を味わい、完食した頃にはお腹も膨れていた。

 味も良かったし、満足だ。


「はぁー、食べた食べた。お腹いっぱいだね」


「ですね。でもすみません、俺の分まで払ってもらって」


「いいの、誘ったのは私なんだし。それに私、お姉さんだから!」


 昼食を終えた俺たちは会計を済ませ、店外へ。

 財布を出す俺を止め、「私が払うから」とグイグイ来る詩乃さんに押し切られ、奢られてしまった。


 お腹も満たされ、次は……


「せっかくだから、ショッピングモール行ってみようよ」


「はい、行きましょう!」


「き、気合い入ってるねー?」


 少しでも意識してもらいたい。なので気合いを入れ、俺から彼女の手を握る。

 こうして意識すると、繋いだ手は柔らかくて、小さくて……これだけの行為が、すごくドキドキする。


 自分からやったことなのに、手汗とか大丈夫かな……なんて考えてしまう。


「甲斐くんは、なにか欲しいものとかないの? お姉さんが買ってあげるよ?」


「い、いいですよそんなの」


 詩乃さんって、昔から俺を弟として見ていたからかお姉さんぶるよな……大きくなっても変わらない、か。

 ただ、弟のまま終わってしまうのはだめだ。それ以上に、男として見てもらえるようにならないと。


「わあ、これかわいい!」


「ん?」


 詩乃さんが足を止める。

 とある店の入口の、ショーウィンドウの中に飾られた犬のぬいぐるみを見ていた。


 そういえば、犬好きだったっけ。かわいいと言ってる詩乃さんがかわいいけどな。


「欲しいんですか?」


「え? ……いや、こういうのは子供っぽいし。大丈夫だよ。行こ」


 急かされるように、店を離れる。歩き出す直前、チラッとぬいぐるみを見たのを、俺は見逃さなかった。

 お姉さんぶりたい詩乃さんにしてみれば、子供っぽいと見られることは避けたいのだろうけど。


 ……犬のぬいぐるみか。


「あ、もう水着とか売ってるんだ……って、もう七月だもんね。

 ねえ、見に行って良いかな?」


「はい、もちろ……ん!?」


 次に足を止めた先は、まさかの水着売り場。それだけならまだしも、手を引かれるまま売り場に突入してしまう。


「今って、こんなに水着が揃ってるんだねー!」


 まさか詩乃さんと一緒に、水着コーナーに来てしまうなんて。

 俺は果たして、ここに居ていいのだろうか? いや、別に下着売り場ってわけじゃないんだし……堂々としてればいいんだ。


「……もしかして、プールか海に行く予定でもあるんですか?」


 目を輝かせている詩乃さんは、まるで子供のよう。先ほど子供っぽいと見られることを避けていたというのに、おかしな話だ。


 ここで気になるのが、わざわざ水着を見に来たってことは、水着を着る予定でもあるのかということ。つまり、海かプールに行くのか?

 もしそうなら、誰と……? まさか男と……!?


「あはは、着たのはいいけど、今のところ予定はないんだよね」


「そ、そうでしたか……」


 予定などない……それを聞いて、ほっとする。

 ただ、続けて出てくる言葉に、俺の思考は一瞬停止することになる。


「なら、一緒に行く? 海」


「……はい?」


 ……これまでの事が、走馬灯のように頭の中に流れる。


 昔、海に行った経験はある。俺が小学生の頃か。姉ちゃんや詩乃さんに連れられて。

 女子高生詩乃さんの水着……当時の俺は一丁前に恥ずかしがって、水着姿をあんまり見ていなかった。


 なんて惜しいことをしたんだろう、という思いは悔やんでも悔しみれない。


 であれば、これはチャンスだ!

 海という非日常空間で、距離をぐっと縮めることができる! はずだ!


「行きましょう、海!」


 問題は、二人きりかどうかだが……


「よかったぁ。なら、楓ちゃんも誘って三人で行こうよ」


「……」


 ……まあわかってたけどね。逆に、それでこそ詩乃さんらしいと言える。


「ふふ、今度楓ちゃんと水着買いに来よー。楽しみにしててね」


 まるで俺のために水着を選ぶというような言葉。深い意味はないのだろうが、俺の心臓は高鳴りっぱなしだった。

ここまでで読んでくれて、ありがとうございます!

ぜひ応援などくださると、とても嬉しいです!

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